近年、ゲームやエンターテインメント業界に限らず、様々なビジネス分野で急速に需要が拡大しているAR/VR市場。
しかし、AR(拡張現実)とVR(仮想現実)の違いについてよく分かっていないという人も多いでしょう。
この記事では、ARとVRの技術的な違いの他、2030年までの市場動向やビジネスに活用するメリットについて解説します。
ARとVRを実際に導入した自治体や企業の活用事例も紹介しているので、「今後ARやVRの導入を検討している」「自治体や行政ではどんな活用をされているのか知りたい」場合はぜひ参考にしてください。
ARとVRの違いとは?
AR(拡張現実)とVR(仮想現実)は混同されやすいですが、技術的に大きな違いがあり、活用される場面も異なります。ここでは、ARとVRの違いを詳しく解説します。
ARとは
ARは「Agumented Reality:アギュメンティッド・リアリティ」の略で、日本語では「拡張現実」と呼ばれます。現実世界の画像や風景にデジタル情報を重ね合わせることで、現実の世界を拡張させる技術です。
VRとは
VRは「Virtual Reality:バーチャル・リアリティ」の略で、日本語では「仮想現実」と訳されます。視界が360度覆われるVRゴーグルなど専用デバイスを用いて、仮想空間と呼ばれるバーチャルの世界をリアルに疑似体験できる技術です。つまり、ARとVRは3DCGや動画などのデジタルコンテンツを見せる技術面で違いがありますが、現実世界と仮想空間を融合させるテクノロジーという点は同じなのです。
AR・VRの動向
ARとVRの市場規模は急成長しており、今後10年間でさらに拡大すると予測されています。ここではARとVRの動向について詳しく解説します。
市場は拡大傾向
2020年に発表されたAR/VR市場の調査によると、2020年における国内のAR/VRソリューションの国内市場予測は、210億円でした。2019年比で116.7%も伸びており、今後も、遠隔操作が必要な作業現場などで需要が高まる見込みです。
人員不足解消にも一役買っており、2025年以降はAR・VR技術を活用したロボットなどの需要が高まるとともに、労働力不足解消のソリューションとしても導入が進むと予想されます。2030年における国内市場規模予測は8,380億円で、2020年に比べて約40倍の成長が見込まれています。
特にAR技術は、建設現場や製造現場などのBtoBを中心に展開されています
ゲーム以外の活用が増加
ビジネスシーンにおいてAR技術は、建設現場や製造現場など遠隔作業と高度な技術が必要な場所で活用されています。物流現場ではピッキング作業にAR対応のスマートグラスが用いられ、作業の効率化や生産性アップを実現。また、AR体験を取り入れた観光PRも行われており、地域振興の手段として広く活用されています。
ある程度ツールに予算をかけることで会社のブランドを保ち、営業機会の損失を防ぎましょう。
一方、仮想現実空間でリアルな体験ができ、ゲーム機や体験型アトラクションなどエンターテインメントコンテンツの需要が拡大しているのがVRです。ビジネスシーンにおいても旅行会社のオンラインツアーや不動産会社のVR内覧などに活用され、ARと同様に地域活性化に取り入れる自治体も増えています。
ARのメリット
では、実際にARを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか?詳しく紹介します。
コンテンツが拡散しやすい
スマートフォンのGPSを使ったり、QRコードを読み込むことで3DCGなどのコンテンツを表示させるARは、小売業や観光業の販促として活用されています。ゲーム性を持たせやすい点とデジタルコンテンツを写真撮影できる点から、SNSで拡散されやすく、プロモーションに有効です。
人材不足の解消
AR技術を搭載したスマートグラスや空間にドキュメントを作る技術によって、遠隔で作業指示や補助が可能となり、業務の効率化・標準化が叶います。多言語指示もできるため、外国人労働者への教育にも有効。研修費や人件費の削減も可能です。
ARの活用事例
ARのメリットを確認したうえで、実際にどんな場所でARが活用されているのか、具体的な事例を紹介します。
姫路城
兵庫県姫路市にある世界文化遺産であり、国宝にも指定されている「姫路城」は、ARアプリ「姫路城大発見」を導入しています。
スマートフォンでARアプリ「姫路城大発見」をダウンロードし、城内に設置されている16のスポットで端末をかざすと、実際の場所にはない建物や人物がCGアニメーションとして表示される仕組みです。動画や画像で姫路城について学べるだけでなく、ARアプリを使ってマスコットキャラクター「しろまるひめ」との記念撮影もできます。
なお、姫路城ではVRも活用しており、普段は見ることのできない場所や俯瞰の視点から姫路城を見学できます。
参考:姫路城便覧「姫路城ARでお楽しみ大発見!」
大阪府
大阪府は東京海上日動火災保険株式会社と提携し、Webアプリ「災害体験AR」を活用した浸水被害の疑似体験を提供しています。QRコードを読み込むとアプリが起動し、府内の浸水リスクや土砂災害を可視化した画像が表示されます。
富士通
国内の総合エレクトロニクスメーカーである富士通は、冷却装置やボイラーといった工場設備の点検・保守作業にAR技術を導入。タブレットを点検する設備にかざすと、マニュアルや修理履歴などが表示される仕組みです。この技術によって作業効率が向上し、復旧時間を6分の1に削減するという成果をあげました。
また、AR技術を活用した生産準備業務支援システムとして「COLMINA AR保全現場支援」を提供し、他社のサポートも行っています。
KARITOKE
ブランド時計を月額制でレンタルできるサブスクリプションサービス「KARITOKE」は、ARを使ったバーチャル試着サービスを提供しています。ユーザーは専用ベルトと専用アプリを使い、自宅にいながら腕時計のサイズ確認が可能。コーディネートの参考にできます。
VRのメリット
次に、VRをビジネスに導入するメリットを解説します。
没入感のある体験ができる
ゲームやエンターテインメント業界で活用されているように、VRでは没入感のある体験が可能です。ビジネスシーンにおいては、VR研修として人材育成の場面で活用されています。
VR研修では、実際の現場に入る前にリアルに近い状態で訓練できるため、接客業や医療現場などで用いられています。この研修により現場に入るまでの期間が短縮されるので、業務効率化も叶います。
現実的には難しいシミュレーションも実施できる
VRでは、世界遺産ツアーや人体の内部に入り込んだ視点を体験できるなど、現実では実現しづらい体験のシミュレーションを行えます。さらに事故や誤操作といった、災害やリスクを想定した体験も可能。高い教育効果を促します。
疑似体験することで注意を促したり、危険を避けながらの技術習得が可能なんですね!
VRの活用事例
ここでは実際にどのようにVRが活用されているのか、自治体や企業の活用事例を紹介します。
新潟市
新潟市では、持続可能な食や農業の創出を目指す事業「将来に向けた持続可能な食と農の創出プロジェクト」の一環として、VRを活用した「バーチャル産直市場」を運営しています。
実際の青果市場を再現したVR空間では店内を360度見渡すことができ、通常の買い物のように店内を回りながら商品を確認して購入することが可能です。
ANA
国内航空会社のANAでは、2019年3月からVRを活用し、客室乗務員向けの機内訓練が行われています。ヘッドマウントディスプレイを使った「法人VRソリューション」を活用することで、現実では再現が困難な火災や急減圧など機内の緊急事態の体験が可能です。安全確認作業を含む機内訓練に用いられ、くり返し実習することで業務の手順をさらに定着させる効果があります。
他にも、整備士の安全体感教育や訓練にVR技術が導入されています
参考:全日本空輸株式会社「ANA客室乗務員向け機内訓練にNEC開発のVRを活用」
中京テレビ
愛知県名古屋市に本社がある中京テレビは、2022年10月にVR空間を使った新卒採用向けの「メタバース会社説明会」を実施。全国各地から参加できることが好評で、定員数(200名)の約2倍応募が集まり、抽選で参加者を決定するほどの人気でした。
リラックスして参加できる点や、匿名性が保たれた状態で社員へ質問できる点から、実施後の就活生の満足度は95%でした。
VR空間での説明会には、主催者側にも様々な部署の質疑応答をひとつの空間で同時に行えるメリットがあります。
参考: SWING PROJECT「【メタバース会社説明会】 中京テレビが新卒採用向けに『メタバース会社説明会』を実施!」
日産自動車
国内自動車メーカーの日産は、電気自動車「日産サクラ」のお披露目会を現実世界の発表と同時にVRメタバース上で実施しました。VR対応機器を持っている人なら誰でも試乗できるバーチャル試乗ワールド「NISSAN SAKURA Driving Island」をメタバース空間で一般公開するなど、販促の一環として活用しています。
バーチャル試乗では車の走行や充電、車との撮影が可能。まるで現実世界で試乗しているかのような感覚を味わえます。
AR・VRビジネスのサポートはオーダー!におまかせ
オーダー!は、日々の業務やクライアントのビジネスをサポートするビジネスコンシェルジュ。スマートフォンや様々なXRデバイスに対応したコンテンツの作成が可能です。
※XR(クロスリアリティ)とは、AR(拡張現実)やVR(仮想空間)など現実世界と仮想空間を融合させた技術の総称です。
スマートフォンやARグラスを使って現実世界を拡張させるコンテンツや、VRを使った没入感のあるコンテンツを作ることができます。
以下で、実際にオーダー!がAR・VRコンテンツをサポートした事例を紹介します。
オーダー!のサポート事例
オーダー!は、沖縄県名護市が企業誘致促進イベントとして企画した「TSUNAGU CITY 2023 in NAGO」内の各種ARのコンテンツを作成いたしました。
例えば、市民参加型ゲーム「名護VRクエスト」として、名護中心市街地の歴史をAR技術を使って探訪でき、ゲームをクリアするとVRで作成した未来の名護の映像を確認できます。
また展示会場では、「名護VR水族館」としてバーチャルな水族館を楽しめます。
その他「企業集積施設の視察」を体験型XR(クロスリアリティ)として、コンテンツの多くをARコンテンツで作成しています。
▼詳しくはこちらをご覧下さい。
TSUNAGU CITY 2023 in NAGO
ARとVRの違い・まとめ
ARとVRには、3DCGや動画、疑似体験などのデジタルコンテンツを見せる技術面での違いはありますが、現実世界と仮想空間を融合させるテクノロジーという点では同じです。
AR/VRの国内市場は、2020年と比較し2030年には約40倍に拡大すると予測されており、これからのビジネス成長には欠かせない技術となっています。
AR/VRコンテンツの作成やサポート実績があるオーダー!では、企業の要望に合わせたカスタマイズでコンテンツ作成が可能です。
「今後ARやVRの導入を考えている」「他の自治体や行政の取り組みを参考に、うちでも導入したい」とお考えの場合は、ぜひオーダー!にご相談下さい。