FAQと問合せ対応は、ビジネスにおいて重要なコミュニケーションのひとつ。しかし、よくある質問や簡単な問題に対しても、人手で対応すると時間やコストがかかります。そこでいま注目を集めているのが、ChatGPTを活用してFAQと問合せ対応を効率化する方法です。
ChatGPTを使えば、人間と自然な会話ができるチャットボットを作ることが可能。FAQや問合せの内容を自動的に理解し、適切な回答を生成することができます。
この記事では、ChatGPTを活用したFAQと問合せ対応の効率化方法について解説します。
ChatGPTとは?AIの活用を考える前に知っておくべき基本情報
ChatGPTは、自然言語処理(NLP)と呼ばれるAI技術の一種で、テキストデータから意味や文脈を理解し、自動的に文章を生成したり、会話したりすることができるシステムです。ChatGPTは、大量のテキストデータから学習した知識や言語パターンをもとに、人間らしい返答や文章を生成することができます。
ChatGPTの仕組みと主な特性
ChatGPTは、Transformerというニューラルネットワークの一種を使っています。Transformerは、入力されたテキストの文脈や意味を理解し、関連性の高いテキストを生成することが可能。そのため、ChatGPTはまるで人間と話しているかのようなやり取りをすることができます。
FAQ作成・問い合わせ対応にどう役立つのか?
ChatGPTをFAQ作成・問い合わせ対応に使う場合、以下のようなメリットがあります。
・コスト削減:ChatGPTは、FAQや問い合わせの内容を自動的に理解し、適切な回答を生成することができます。そのため、人が回答を作成する手間が省け、コスト削減と時短に繋がります。
・品質向上:ChatGPTの活用でFAQや問い合わせの内容に応じて回答を調整することが可能。相手のニーズや状況に合わせ、商品やサービスの紹介や誘導などを行うことができます。
ChatGPTをFAQに活用すれば人的コストを削減することが可能になります!
ChatGPTを活用したFAQ作成と問い合わせ分析の自動化
ChatGPTを活用したFAQ作成には以下の2通りの方法が考えられます。
・ブラウザを使って問い合わせ対応履歴や関連するテキストデータを学習させ、Q&Aペアを出力させる
・APIを使って企業のFAQを作成する
ChatGPTをブラウザで使う場合
ブラウザでChatGPTを使う場合、以下のような流れでFAQを作成することになります。
【1】問い合わせ対応履歴や関連するテキストデータを収集する
【2】ChatGPTにデータを入力し、Q&Aペア(質問と回答の組み合わせ)を生成させる
【3】生成されたQ&Aペアを確認し、必要に応じて修正や追加を行う
【4】Q&AペアをFAQとして整理し、社内ポータルサイトなどで公開する
なお2023年7月現在、ChatGPT-4は有料会員「ChatGPT Plus」のみが利用可能。GPT-3.5は無料で利用できますが、GPT-4よりも性能が劣るため、望んでいる機能を得られない場合もあるので注意が必要です。
APIを使う場合
APIを使用すると、特定の文脈に応じた情報を生成するために、GPTを調整することができます。つまり、企業の特定のニーズに合わせてFAQをカスタマイズすることができます。
また、APIを利用した場合、入力したデータはAIに学習しないことが発表されるため、セキュリティ面でも不安は少ないでしょう。しかし、APIを使う場合、プログラミングの知識が必須。そのため、本記事では基本的にChatGPTをブラウザで使う場合について解説します。
社内からの問い合わせ対応にChatGPTを活用する方法
過去、社内から寄せられた問い合わせや対応の履歴をChatGPTに学習させれば、Q&Aを自動生成することができます。
まず、過去の対応履歴をChatGPTに学習させます。
プロンプトは以下の通り。
# 命令書: あなたは私の会社のヘルプデスク職として振る舞います。 過去の問い合わせ履歴(Q&A)を学習し、新たな質問に答えてください。 # 過去の問い合わせ: Q:有給休暇の申請方法は? A:有給休暇の申請は、社内システムの「休暇申請」画面から行ってください Q:給与明細の閲覧方法は? A:給与明細は社内システムの「給与明細」画面から確認できます。 Q:勤怠管理システムの使い方が分からない A:勤怠管理システムの使い方については、マニュアルを参照してください。 |
その上で、「今月の給与はどこで見ることができますか?」といった質問を投げると、ChatGPTは以下のように返してくれます。
ちなみに、過去の問い合わせにない質問も投げかけてみました結果は以下の通りになりました。
過去の履歴にないものは一般的な答えを返してきます。
人事や総務、経理などの業務に関するQ&AをChatGPTで自動生成する
ChatGPTに社内の情報を学習させたくない場合、世間一般的によくあるFAQを自動生成し、社内からの問い合わせに対応させることができます。
例として、「従業員100人ほどの規模のEC事業を展開する会社」のよくある質問と答えをChatGPTに出力させてみましょう。プロンプトは以下の通りになります。
# 命令書: あなたは従業員100人ほどの規模のEC事業を展開する会社の総務部のヘルプデスク職です。下記の条件に従い、社内からの質問で多いものをリストアップしてください。 # 条件: ・出力は表形式にする ・質問が多いと思われる順に並べる ・回答の雛形も出力する ・出力は20個程度 ・質問に該当するカテゴリも設定する |
出力結果は以下の通り。
これでまずは押さえておくべき一般的なFAQをリストアップ可能。ChatGPTに役割を与えてあげることで、充分業種に対応するヘルプデスクとして使うことができるようになります。
プロンプトとはChatGPTの入力文のこと。プロンプトを工夫すると、ChatGPTで自分が望む結果が得られます。
Q&Aを社内ポータルサイトやチャットボットに掲載する
ChatGPTで生成したQ&Aは社内ポータルサイトなどに掲載しましょう。社員自身が必要な情報を素早く見つけ出し、自己解決できるようになります。
外部からの問い合わせ対応にChatGPTを活用する方法
ChatGPTは、外部からの問い合わせ対応にも活用することができます。
活用する手順は以下の通りです。
【1】ホームページやからのお問い合わせ内容をChatGPTに入力し、その内容に基づくQ&Aを生成させる
【2】生成されたQ&Aの中から、頻度や重要度が高いものを選択し、FAQとしてまとめる
【3】FAQの内容を確認し、必要に応じて修正や追加を行う
お問い合わせ内容のQ&AをChatGPTで自動生成する
社内ヘルプデスクを作った時と同様に、ChatGPTに「カスタマーサポート」という役割を与え、過去の問い合わせ履歴を学習させます。
プロンプトは以下の通り。
# 命令書: あなたは弊社の問い合わせに対応するカスタマーサポートして振る舞います。 弊社はEC事業を展開する会社です。 過去の問い合わせ履歴(Q&A)を学習し、新たな質問に答えてください。 # 過去の問い合わせ: Q:商品が不良だったので、交換したいです。 A:申し訳ありません。返品・交換手続きを進めますので、商品の詳細と不良の内容を教えていただけますか? Q:私の注文は何時に届きますか? A:注文番号をご確認いただけますか?配送状況を具体的に調査できます。 |
その上で、「商品が届く日にちを教えて下さい」といった質問を投げると、ChatGPTは以下のように返してくれます。
また、社内ヘルプデスクを作ったときと同じように、以下のプロンプトを入力すると、一般的なFAQを出力してくれます。
# 命令書: あなたは従業員100人ほどの規模のEC事業を展開する会社のカスタマーサポートです。 下記の条件に従い、社外からの質問で多いものをリストアップしてください。 # 条件: ・出力は表形式にする ・質問が多いと思われる順に並べる ・回答の雛形も出力する ・出力は20個程度 ・質問に該当するカテゴリも設定する |
FAQをChatGPTで自動生成し、ホームページやECサイトに掲載する
ChatGPTで自動生成したFAQは、「質問例」として、ホームページやECサイトに掲載しましょう。
これにより、ユーザーが自分で簡単に回答を見つけることができ、問い合わせ件数や対応時間が減少するというメリットがあります。
また、問い合わせ前に「よくある質問」を提示することで、ユーザー満足度や信頼度を向上させることができます。
メールでのお問い合わせにもChatGPTで返信する
ChatGPTは、メールやチャットでのお問い合わせにも自動返信することができます。これまで紹介してきた通り、過去の問い合わせ内容を学習させた上で、以下のようなプロンプトを入力しましょう。
# 命令書: あなたは弊社のカスタマーサポートとして振る舞います。 弊社はEC事業を展開する会社です。 学習内容を元に、条件に従ってお客様に返信するメールの文面を書いてください。 # 条件: ・文字数は300文字ほど。 ・文章はですます調 ・丁寧に対応する ・分からない質問には、電話を掛けるよう誘導する |
この上で、「商品が不良だったので、交換したいです」といった問い合わせ文を投げると、ChatGPTは以下のように返してくれます。
【ChatGPT Plus限定】プラグインを活用する方法
これまでご紹介してきた方法はGPT-3.5でも可能ですが、ChatGPT Plusユーザー限定で利用できるプラグイン「Noteable」を活用し、よりChatGPTを便利にヘルプデスクとして使うことができます。
「Noteable」は簡単に説明すると、さまざまな形式のファイルをチャット上にアップロードし、分析できる機能。実はChatGPTは会話が長くなりすぎると、その前に入力した情報を忘れてしまうという限界がありました。しかし、「Noteable」を応用することで、その弱点をカバーできます。
活用方法は以下の通り。まず、以下のようにプロンプトを入力します。
「総務部 ヘルプデスク」というファイルを作ってください。 |
なお、ファイル名は適当なもので構いません。このファイルはIPYNB形式で作成されます。
次に、チャットボットで引き出してもらいたいFAQを全て書き出し、以下のようにプロンプトを入力します。
以下の情報を全てそのファイルに保存してください。 また、これ以降、私とのやり取りはこのファイルを参照し、行ってください。 (チャットボットで引き出してもらいたいFAQ) |
このように、入力した情報(チャットボットで引き出してもらいたいFAQ)がすべてファイルに追記されました。
この上で、以下のプロンプトを入力して質問すると、学習済みの「チャットボットで引き出してもらいたいFAQ」から確実に答えを引き出してくれます。
# 命令書: あなたは私の会社のヘルプデスク職として振る舞います。 社員である私の質問に答えてください。 #質問: パソコンにエラーが出ました。どのように対応すればいいですか? |
入力した情報を参照して、確実な答えを返してくれました。
なお、このファイルはローカルにダウンロードすることも可能。「この情報を追記してください」と指定すれば、ファイルを随時更新することもできます。
FAQチャットボットの開発で注意するべきリスク
ChatGPTには、情報の正確性、固有の知識の欠如、セキュリティとプライバシーの問題といったデメリットがあります。
FAQチャットボットとしてChatGPTを利用した場合に特に懸念されるのが、プライバシーの問題。ブラウザのChatGPTを使ってFAQを開発する場合、自社情報をAIに入力しなければなりません。たとえばChatGPTがサイバー攻撃を受けたときなど、自社情報が流出する恐れもあります。
こうした問題を解決するため、ChatGPT APIを利用した独自のFAQチャットボットの開発もおすすめします。
ChatGPTを活用したFAQ作りならオーダー!
先述した通り、ChatGPT APIを使った独自のFAQチャットボットの開発には、プログラミングの専門知識が必要です。自社にエンジニアがいない場合や手が回らない場合、外注業者に委託するのがおすすめです。
オーダー!では、ChatGPT APIのサービス開発を承っています。もちろん、ChatGPTと連動チャットボット開発も可能。
セキュリティ面での心配のないChatGPTのFAQチャットボットの開発はぜひオーダー!にご相談ください。
まとめ
ChatGPTでFAQを作る方法について、実際のプロンプトを交えながらご紹介してきました。
しかし、先述した通り、セキュリティ面でのリスクを考えると、APIを利用したチャットボットの開発がよりおすすめ。
実はOpenAIは7月6日(現地時間)に「GPT-4 API」の提供を開始。これにより、より高度なAIによるFAQチャットボットを作れるようになりました。
ホームページやECサイトからのお問い合わせへの返信、または社内ヘルプデスクなどにChatGPTを活用したい場合、ぜひオーダー!にご相談ください。