越境EC市場は今後も成長すると予測されており、日本企業にとっても新たなビジネスチャンスが広がっています。しかし、成功するためには、正しいステップでECサイトを立ち上げ、適切な運営戦略を実行することが不可欠です。

本記事では、越境ECサイトを始めるための7つのステップと注意点、さらに成功事例も紹介します。海外展開を成功させたいと考えている企業の担当者の方はぜひお役立てください。

越境ECサイトを立ち上げる前に

まずは越境ECの基本をおさらいしましょう。

越境EC市場の将来性

経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によると、世界の越境EC市場は2030年までに約7兆9,380億USドルに達すると予測されており、その年平均成長率は26.2%と高い水準を維持すると推測されています。

日本製品はその品質の高さから世界中で注目されています。今後、商圏を広げていきたいとお考えのEC事業者にとって、越境ECは成長の大きなチャンスとなるでしょう。

たとえば、海外向けの食品サブスクでの成功例なども増えてきています。

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越境ECを始めるには

越境ECを始める方法には、大きく分けてモール型と自社型の2つがあります。

後ほど詳しく解説しますが、モール型はAmazonやeBayといった既存の海外ECモールに出店する方法、自社型は自前で越境ECサイトを構築する方法です。

他にも、まずは小規模で販売したい場合にはSNSのショッピング機能で販売することもできますし、ビジネスが軌道に乗ったら現地法人を設立して販売する方法もあります。

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越境ECを始めるための7つのステップ

実際に越境ECを始める方法を7つのステップに分けて解説します。最初に全体像をつかんでおくことでスムーズに準備が進められます。

  1. 商品の準備
  2. 市場調査とターゲット選定
  3. 法律や規制、商習慣の確認
  4. ECプラットフォームの選定
  5. サイトのローカライゼーション
  6. 決済方法と通貨対応
  7. 物流体制の整備

ステップ1.商品の準備

すでに日本で順調に売れている商品でも、そのまま海外市場で人々に受け入れられるとは限りません。当然ながら、商品が売れるかどうかはその国や地域の人々の価値観によるため、現地のニーズに合った商品かどうかを十分に検討しましょう。

また、そもそも海外に発送できない商品もあることにも注意が必要です。特定の国には輸出が禁止されている商品もあり、輸出先の規制を事前に確認することが大切です。

例えば、国際郵便では全世界共通で送ることのできない商品にはスプレー缶、香水などがあります。国によっては酒、たばこ、食品も送れず、牛肉が禁制品の場合はカップ麺、カレー、コンソメなども送れない品に含まれることがあります。

参考:国際郵便として送れないもの

ステップ2.市場調査とターゲット選定

越境ECを成功させるためには、まずどの市場で展開するかを決定しなくてはなりません。各国の人気商品や消費トレンドをリサーチし、適切なターゲット市場を選定しましょう。

国内外の競合他社の動向や市場シェア、成功・失敗事例など、競合分析も大切です。

ステップ3.法律や規制、商習慣の確認

各国には異なる輸入規制や禁止品目があり、これらを把握することが必要です。

関税や消費税の計算方法も事前に確認し、正確な料金表示を行うことで、顧客の安心感を高め、トラブルを未然に防ぐことができます。関税を自動計算するツールを利用するのもよいでしょう。

関税率を調べるには、米国FedEx Trade Networks社が提供する世界の関税率情報データベース「WorldTariff」を利用できます(日本居住者のみ、ユーザー登録が必要)。

ステップ4.ECプラットフォームの選定

先ほど触れたとおり、越境ECのプラットフォーム選びには大きく分けてモール型と自社型があり、それぞれメリット・デメリットがあります。

越境ECプラットフォーム1.モール型

既存の海外ECモールに出店するモール型のメリットは、既存の集客力を活用でき、運営が比較的簡単に行えること。

手数料が発生するためプランの選定などは事業規模に合わせて見極めなければなりませんが、初心者でも比較的チャレンジしやすい方法です。

例:Amazon、eBay、Tmall/天猫、G-market

越境ECプラットフォーム2.自社型

自前で越境ECサイトを構築する自社型のメリットは、自由度が高く、自社ブランドを強化するのに最適であること。

しかし、サイトが多くの人の目に留まり購入に至るようにするには集客方法を考える必要があり、サイト運営には専門の要員、手間とコストがかかります。

例:Shopify、Adobe Commerce

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ステップ5.サイトのローカライゼーション

海外向けECサイトでは、多言語対応や現地文化に合わせたデザインが必須です。Google翻訳を使用することも可能ですが、より正確な翻訳にはネイティブのチェックを通した方が安心です。

また、現地の消費者に響くデザインやコンテンツに調整することで、信頼性と売上を向上させることができます。現地で人気のECサイトを複数見て参考にしましょう。

ステップ6.決済方法と通貨対応

越境ECでは、現地でよく利用される決済手段が地域ごとで異なるため、多様な決済オプションの提供が大切です。

例えば、中国ではAlipay(アリババグループが提供するキャッシュレス決済)や銀聯カード、アメリカではクレジットカード、デビットカード、PayPalの利用率が高いのが特徴です。

顧客が普段使っている決済手段があれば、購入のハードルは下がります。さらに、価格表示を現地通貨で行い、税金も含めた透明性のある料金設定を行うことが購入の後押しとなります。

ステップ7.物流体制の整備

越境ECで欠かせないのが、物流体制の構築。海外発送する方法は、ビジネスのフェーズにより次の3つに分けられます。

  1. 自社から直接発送(自社で発送業務を全て対応する)
  2. 国内の提携業者から発送(業者に梱包や発送を任せる)
  3. 現地の提携業者から発送(現地に物流拠点を構える)

越境ECを始めて間もない時期には自社から直接発送する方法が現実的と言えますが、受注が伸びるにつれ物流負担が重くなってきます。

信頼できる配送契約先を確保し、外注を視野に入れつつコストと配送時間のバランスを考慮した体制を整えることが必要です。

アランくん

先々のことも考えて、サイト運営や物流の体制を整える必要があります!

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越境ECサイト運営で注意すべきこと

越境ECサイトの運営では国内向けとは異なる対応が多いため、二の足を踏む方も少なくないでしょう。ここでは特に注意すべきポイントをまとめました。

越境ECサイト運営で注意すべきこと
  1. 言語、文化の壁
  2. 為替リスク、市場リスクの管理
  3. クレームやトラブルの対応
  4. 法務とコンプライアンス

言語、文化の壁

海外向けECで大きな壁となるのが言語と文化の違いです。現地語に対応できるスタッフが社内にいるか、いなければ外部に委託することも考えましょう。また、現地の重要なイベントや商習慣を理解し、適切なタイミングでプロモーションを行うことが欠かせません。

例えば、中国の「独身の日」やアメリカの「ブラックフライデー」は通常の何倍にも受注が増えます。在庫の確保、スムーズな発送ができるかどうかが顧客の信頼を左右します。

為替リスク、市場リスクの管理

為替の変動は、越境ECにおいて売上に大きな影響を与えます。価格を現地通貨で設定すると、為替変動によって売上が上下します。このリスクを最小限にするため、売上金をドルやユーロなど、安定した通貨で保有することも一つの手です。

現地の情勢を常にチェックし政治的・経済的リスクを把握しておくことも大切です。

クレームやトラブルの対応

多言語対応のカスタマーサポートを用意し、柔軟な対応ができる体制を整えることが求められます。また、現地の消費者保護法に基づいた返品・交換ポリシーを整備することで、顧客の信頼を獲得しやすくなります。

法務とコンプライアンス

各国のデータ保護規制に準拠した対応も不可欠です。例えばヨーロッパの場合には、EUで定められた個人情報保護法「GDPR(EU一般データ保護規則)」に準拠した個人データの管理や、現地法に基づく利用規約の整備が必要です。

具体的には、プライバシーポリシーの作成・公表、サイトに個人情報やCookie取得に同意するかどうかのチェックボタンを設置する、取得した個人データを安全に保管して厳重に管理する、などが挙げられます。

越境ECサイトの成功事例3つ

ここでは実際に越境ECで成功している企業の事例をご紹介します。

成功事例1.メーカーズシャツ鎌倉 (アパレル)

画像引用:https://kamakurashirts.com/

1993年の創業以来、メイド・イン・ジャパンにこだわった上質かつ手頃な価格のシャツが人気のメーカーズシャツ鎌倉。現在、グローバルサイトの売上の約80%はアメリカ市場で、2024年9月にはニューヨークで完全予約制のオーダーサロンをオープンしています。

特にアメリカではビジネス用のシャツのニーズが高く、日本製の高い品質が他のブランドとの差別化要因に。国内との在庫一元化にも取り組み、オンラインでもスタイリングやコーディネートの相談に対応しています。

成功事例2.ヤーマン(美容)

画像引用:https://global.ya-man.com/

美容機器のメーカー「ヤーマン」は、越境ECを活用して中国市場に進出。

現地のニーズに合わせた商品ラインナップと、ライブコマースの活用、さらに「独身の日」のTmallでの販売戦略に成功したことで中国国内での知名度を高め、中国の消費者から高い評価を得ています。

2021年には中国で子会社を設立し、さらなる成長を目指しています。

成功事例3.アジアン・ポータル・フィッシング(釣り具)

画像引用:https://asianportal-fishing.com/

釣り具専門の「アジアン・ポータル・フィッシング」は、日本の釣り具メーカー300社を集めた圧倒的な品揃えが特徴。独自の越境ECサイトで24時間体制で受注から発送までを自動化、世界中の釣り愛好家に商品を提供しています。

日本メーカーの釣具は高品質なことから海外でも認知度が高く、特に北米やヨーロッパで人気が高まり、売上が拡大しています。

アランくん

他にも自社の業界に近い越境ECサイトを探して、参考にしてみてください!

越境ECサイトで成功するためのポイント

越境ECサイトで成功するための主なポイントを3つにまとめました。

越境ECサイトで成功するためのポイント
  1. 現地に適したマーケティング戦略
  2. 顧客のショッピング体験向上
  3. 信頼できる物流と配送体制

現地に適したマーケティング戦略

越境ECを成功させるためには、現地の消費者に合ったマーケティング戦略が重要です。SNSを活用したインフルエンサーマーケティングや、現地のプロモーション企業との提携が有効です。

SNSはユーザー数の多いプラットフォームに注力しましょう。例えば、中国では「WeChat」や「Weibo」、韓国では「カカオトーク」などのSNSを利用するのが効果的です。

集客にはSEO対策(検索エンジン最適化)も必要です。日本では一般的にGoogleを対象にしたSEO対策が有効ですが、国によっては別の検索エンジンが強いこともあります。検索エンジンからの集客を増やし、売上を伸ばすためにもサイトの質を高めていきましょう。

顧客のショッピング体験向上

越境ECサイトの成功には、現地の言語に対応するのはもちろん、直感的に操作できるユーザーフレンドリーなデザインが不可欠です。

また、現地で人気のあるAmazonやeBay、AliExpressなどのマーケットプレイスを活用することで、集客力を強化することも重要です。

今後はAIとビッグデータの活用も重要な要素となるでしょう。顧客行動を予測し、パーソナライズされたマーケティングを行うことで、市場の変化に柔軟に対応していくことができます。

信頼できる物流と配送体制

越境ECでは物流の質を高めることも重要です。国際配送の知見とノウハウのある、信頼できる物流パートナーを選ぶことが越境ECの成功には欠かせません。

海外向け発送は時間がかかりコストが利益を圧迫しがちです。近年の配送コストの上昇を考えても、配送コストと時間を最適化する戦略を立てることが、今後ますます重要になると考えられます。

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越境ECのサイト立ち上げや運営はオーダー!におまかせ

オーダー!では、ECサイトの立ち上げや運営から、物流やその他事務作業まで、越境ECに関する幅広いサポートを行っています。アパレルや化粧品など取り扱いが難しい商品、複雑な物流加工もおまかせください。

越境ECでおすすめな定額運用メニューをご紹介します。

【まるっとお任せ!定額運用メニュー(一例)】
●基本プラン12万円(税抜)/月
●契約期間:3か月
●実働時間:30時間/月
●業務の例
・商品管理(マスター管理、在庫管理、仕入管理)
・サイト管理(在庫登録、在数更新、商品登録、更新)
・特集ページやランディングページ作成
・ニュースリリースなどの追加・修正・変更
・レポート作成など

※ECサイト構築・物流のアウトソーシングについては個別相談にて対応いたします
※ご依頼内容に合わせてプランをカスタマイズできます

物流やITに精通したスペシャリストがサポートいたしますので、これから海外展開を考えている方、社内のリソース不足でお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

越境ECは、日本企業にとって新たな成長の機会です。市場調査から商品準備、物流体制の整備まで、正しいステップを踏んでサイトを構築することが、海外展開の成功につながります。

各ステップでのポイントを押さえつつ、信頼できるパートナーと共に越境ECサイトを成功させましょう。