コンピューター上の地図にさまざまな情報を重ね合わせ、それらを可視化させたシステムGIS(地理情報システム)。
昨今は、カーナビやハザードマップ、自然事象を表すだけでなく、企業の営業活動やマーケティングなど、ビジネスシーンにおいても活用されています。
今回はGISを構成するGISデータについて、その種類や収集方法、使い方などをわかりやすくご紹介します。
▼GISについて詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい
GISデータとは
GISとはGeographic Information Systemの略称で、日本語では地理情報システムといいます。人口統計や店舗情報といった多様な位置情報をコンピューター上の地図に関連付け、可視化し活用するシステムのことです。そこで使用されるデータをGISデータと呼びます。
一般的には座標などの位置情報、そこに関連する属性情報、そのタイミングを示す時間情報との組み合わせから成ります。カーナビゲーションやGoogleマップ、自治体のハザードマップなどもGIS活用の一例です。
GISによって管理された多くのデータは、わかりやすく表示されるだけではありません。検索・加工・分析・解析され、民間企業の営業活動やリサーチ、マーケティングなど、さまざまなビジネスシーンで活用されています。
GISデータの種類
GISデータには、基盤図となる空間データと、そこに入る属性データがあります。順にご紹介しましょう。
ラスター
ラスターは、主に写真などに使われる格子状のピクセル(画素)から成る画像形式で、gif・jpg・png・bmp・tiffなどの拡張子が使用されます。ピクセルが大きいほど荒く、細かいほど解像度の高いなめらかな画像になるため、拡大縮小により画質が変化します。
GISにおけるラスターデータは、主に背景地図(ベースマップ)に使われる空間データのフォーマットのひとつで、衛星画像や航空写真などが代表的です。このピクセルの一つひとつに、さまざまなデータが入っています。人口統計や自然事象などをテーマに、色やグラフを用いて地図上で表現するような主題図にも利用されます。
ベクター
ベクターは、主にアイコン、オフィスソフトの線や図形といった平面的なイラストに使われる画像形式で、pdf・svg・aiなどの拡張子が使用されます。数値データから成るため、拡大縮小による画質の変化はありません。
GISにおけるベクターデータとは、ラスターデータと同じく背景地図(ベースマップ)となる空間データのフォーマットのひとつです。座標値である点(ポイント)、それを結ぶ線(ライン)、それを結んで閉じた多角形(ポリゴン)で構成されます。
土地区画や道路といった明確な境界を持つデータに適しており、距離計測や解析に使いやすいデータとなっています。
属性データ
上記のラスターデータとベクターデータは地上での位置や形状を表す空間データになりますが、それに付随する情報を属性データといいます。属性データは、空間データに直接入力、または関連付ける必要があります。
たとえば地震が起きた際の震源を表すのであれば、震源地の座標ポイントが空間データ、発生日時やマグニチュードなどが属性データとなります。不動産管理などの場合は、土地や建物を示すポリゴンが空間データ、地番や面積、所有者、空き状況などが属性データとなります。
3Dデータ
空間データを立体化したものが3Dデータです。xy座標に、z軸(高さ)が加わることで地理情報を立体的に表現できるため、優れた視覚的効果が期待できるメリットがある反面、データ構造が複雑化するデメリットもあります。
土地の標高や建物の高さ、事象などを3Dでわかりやすく表示できるため、都市開発プロジェクトのモデルや自然災害のデモなどに活用できます。
空間を表すフォーマットは2種類あります。それぞれ座標などの地理情報と、それに付随するさまざまな情報が重なり合うように載せられているんですね
GISデータの収集方法
ここからは、GISに用いるデータを収集する主な方法について解説します。
GPS(全地球測位システム)
空間データを効率的に収集する代表的な方法がGPSを使用する方法です。地理空間システムに不可欠となる位置情報を正確に収集できます。
地図のスキャン
紙の地図・図面をスキャンし、情報をデジタル変換する方法もあります。空間データだけでなく、紙に書き込んだ属性データの取り込みができるツールなどもあります。
公的機関や民間企業のデータを使用
すでに公開・販売されている公的機関や民間企業のデータを使用する方法もあります。たとえば、公的機関では国土地理院や国土数値情報ダウンロードサイト、G空間情報センターなどで空間データを入手できます。人口・企業などの統計や地域の境界といった属性データは、政府統計ポータルサイトなどから入手可能となっています。
ドローン
近年は、カメラ搭載のドローンを使って撮影し、測量データとして利用する技術が開発されています。距離や高さの測定もできるため、環境条件を確認できる3Dデータを作成することも可能です。
手動
最後に地理情報を手動で入力し、GISデータ化する方法もあります。地図や航空写真などを参考に入力しますが、手間がかかるのが難点です。
GISデータを利用するメリット
GISはわかりやすく可視化されているため、さまざまな情報を簡単に検索・分析できます。ここではビジネスシーンにGISデータを利用するメリットについてご紹介します。
運営の効率化
GISデータの高精度の数値とデータの一括管理により、全体的な企業運営が効率化すると考えられます。可視化・数値化された客観的な情報に基づいたスピーディーな意思決定を行えます。たとえば潜在客が多いエリアを抽出し、マーケティングや販促施策、新規開拓などにおいて迅速な対応が可能です。また、GISデータを使用し環境条件を確認することで、エリアマーケティングなどの現地調査や統計分析にかかる時間を短縮できるため、人員削減や生産性向上が期待できます。
深い洞察を得られる
GISでは、エリアマーケティングや商圏分析などをシミュレーションできます。事実に基づいた条件を想定して検証するため、シミュレーションがうまくいく場合、いかない場合の理由や状況の深い洞察が得られる利点があります。また、検証結果の客観的根拠を示せるため、組織内で素早い理解を得られる点もメリットです。
GISは客観的なデータに基づいて分析できるので、計画や仮説の検証なども迅速かつ信憑性の高いものになるんですね
GISデータの課題
GISデータの最大の課題は膨大なデータの処理です。GISデータと他のデータを掛け合わせた場合にデータ量が多くなり、人の手では処理できなくなるところが難点です。
具体的な対策としては、AIの活用が有効です。AIは機械学習によって多くのデータを分析し、その背景にあるパターンや相関関係を特定することを得意としています。
AIが処理できるデータは画像や音声、動画など多岐にわたります。このことから膨大なGISの地理情報、およびその他のデータの処理にAIを使用すると、人が処理するよりも遥かに高速で、高度な分析が可能となるのです。
データ処理作業の効率化、簡素化が期待できます。
GISデータの使い方4選
GISデータをビジネスシーンで活用するにあたり、具体的にどのような使い方があるのか主な例をご紹介します。
1.ルート分析
GISデータを活用したルート分析では、さまざまなルートを地図上でシミュレーションできます。出発地から目的地までの最短ルートはもちろん、効率的な訪問ルート、移動コストを最少にするルート、一定時間内に到達可能なエリアなどの抽出が可能。外回り業務の効率化が図れます。
物流や営業活動、観光の巡回ルートといった、多様な分野に活用できる機能です。
2.商圏分析
GISを活用した商圏分析では、人口や世帯構成をもとにターゲット層を絞り込み、地域の販促優先順位を割り出すことが可能です。また、エリアに合わせた販促の手法も提案されるため、費用対効果アップも期待できます。
3.適地・要地選定
条件にあった候補地を抽出する適地・要地選定も、ビジネスシーンでのGISデータ活用例としてよくみられます。たとえば気象データや土壌成分などをもとに農作地を選定する、ターゲット層の多いエリアを特定し、店舗出店場所を策定するといった活用方法があり、候補地選定のためのコストを軽減できます。
4.発生の予測
疾病発生情報や気象情報などのGISデータを活用して、感染症患者数の分布図やポテンシャルマップを作成することも可能です。
疾病発生状況などの分布や傾向を調査・分析し、それらの発生リスクに特定の地域的要素や時間が関与しているかを研究する「空間疫学」においてもGISデータが活用されています。
またGISデータは、国のカーボンニュートラル実現に向けた再生可能エネルギー導入促進のための取り組みにも利用されています。環境省のWebサイトでは「再生可能エネルギー導入ポテンシャルマップ」も公開しており、事業検討にも活用可能です。
自治体はもちろん、一般的な企業においてもGISデータ活用の機会はたくさんありそうです
GISデータの活用ならオーダー!におまかせ
オーダー!では、企業や自治体など幅広い分野において、地理空間情報を可視化・解析するためのプラットフォーム構築や仕組みづくりを支援しています。
オーダー!の地理空間情報ソリューション「Pデータマップ」は、地図情報とBIのレポーティングを両方兼ね備えている点が画期的な特徴です。一般的なBIツールとの連携、使い分けにより、ノンプログラミングで素早いデータの可視化と分析ができるサービスとなっています。
- 人流・過密状況分析
- ヒト、モノの行動分析
- 都市インフラ・設備管理
- 測量・災害・土木・天候情報
- 感染症状況監視
- マーケティング
- 街づくり情報分析
- 顧客情報、販売情報、全国の支社支店の売上情報管理
GISのBIGデータを活用したマーケティングや販促施策、新規開拓やエリア見直しなどをご検討の際は、ぜひオーダー!にご相談下さい!
以下より、オーダー!のサポート事例をご紹介します。
オーダー!のGISデータ活用サポート例1
一つ目は、GISデータを活用した観光施策推進成功事例です。
沖縄県の北部広域市町村圏事務組合様より、観光周遊システム構築についてご相談いただきました。ユネスコ世界自然遺産にも登録された「やんばる」地域を含む本島北部12市町村の観光施策推進が目的です。
オーダー!では企画段階から携わり、滞在型観光へ向けた以下の観光周遊促進をおこないました。
- Webページ構築
- スマホアプリ「やんばるGOGO」の開発
- 各拠点におけるデジタルサイネージの設置
- 無料Wi-Fi・GISを連携した観光情報提供
- 電子スタンプラリーなど
また、スマホアプリや無料Wi-Fi利用時に収集した、観光客の属性データ、スポット訪問のログデータを活用し、地理空間情報ソリューション・Pデータマップで「いつ」「どこに」「どのような属性の人が」「何人」来ていたかを可視化できるように。
観光客の動きや訪問・滞在時間などもデータ化し集計・分析することで、引き続き沖縄本島北部地域周遊促進を図っています。
オーダー!のGISデータ活用サポート例2
二つ目は、GISを活用したECサイト運営サポート事例です。
B2B向けECサイト運営企業において、地理空間情報ソリューション・Pデータマップを活用し、エリア別商品販売分析を支援しました。
サイトの商品売上情報をGISと連携させることで、地域や支店ごとの売上傾向、時間軸での売上推移を可視化。この他、商圏データを重ね合わせたターゲットエリア分析や商品カテゴリでの分析、売上上位客の表示、売上推移を時系列で表示することなどが可能となります。
これにより、どのエリアでどのようなものが売れているのか、また各事業でどのようなものが売れているかを把握し、どの地域で何が売れそうなのかを月次で予測する仕組みづくりを実現しました。効率的なECサイト運営と商品管理にご活用いただいています。
GISデータのまとめ
ビジネスシーンにおけるGISデータの活用は、幅広い業務の効率化やコスト削減が期待できます。
オーダー!の地理空間情報ソリューション「Pデータマップ」は、自治体や物流企業、ECサイトなど多種多様な分野で活用されています。複数のデータを可視化・分析するプラットフォームを迅速に構築できるため、お客様側での開発や保守は不要です。
GISデータ活用を検討されているご担当者さまは、ぜひお気軽にオーダー!へご相談下さい。
GISの使い方については以下の記事にも詳しくまとめていますので、参考にしてください。