GISとは、Geographic Infomation Systemの略で「地理情報システム」のこと。地図情報に位置に関する様々なデータを重ね合わせることで、分析や解析、管理ができるシステムです。
近年は自治体や企業での導入が進んでいますが、どのように活用されているのでしょうか?
この記事では、地図情報を活用したマーケティングやデータの利用を考えている企業・自治体に向けて、13の活用事例を紹介します。
弊社がサポートした事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
▼GISの基本的な知識を知りたい方はこちら
GISの使い方【自治体編】
自治体では、地域住民へのサービスの向上や業務効率化のためにGISが用いられています。使用されるGISは2タイプあり、「自治体統合型GIS」と「自治体公開型GIS」です。ここでは、それぞれのメリットや活用法について詳しく解説します。
自治体統合型GIS
自治体統合型GISは、地方自治体の原課(げんか)※1が利用している地図データを共用できるように統合したシステムです。
庁内を横断して地図データを共用できるようになるため、複数の原課間での情報共有スピードが上がり、食い違いを防げます。
さらに原課ごとに必要だったデータ整備も減るため、重複コストを削減できるメリットもあります。
令和4年3月に総務省自治行政局地域情報化企画室が発表した「自治体DX・情報化推進概要」によると、51.1%の都道府県が統合型GISを導入しており、市区町村においては63.1%が導入済みです。
すでに半数以上の自治体が、統合型GISを導入している状況です
※1.原課…特定の事業を担っている課のこと
自治体公開型GIS
自治体公開型GISとは、原課が保有している地図データをインターネット上で公開し、利用できるようにしたシステムのことです。
ホームページにアクセスすれば誰でも地図データを確認できる防災マップや、バリアフリーマップなどが自治体公開型GISにあたります。オープンデータとして二次利用できるものが多いため、PRツールとしても利用可能です。また住民サービスの向上にもつながるでしょう。
「自治体DX・情報化推進概要」によると、GISを導入している都道府県のうち91.7%が住民向けにGISをホームページで公開しています。
参考:総務省自治行政局地域情報化企画室「自治体DX・情報化推進概要」
GISの使い方事例【自治体編】
では実際の自治体では、どのようにしてGISを活用しているのでしょうか。事例を紹介していきます。
防災:宮城県石巻市
宮城県石巻市では、石巻の津波被災を伝承するARアプリを開発し、「防災まちあるき」として住民に提供した事例があります。
GIS技術も用いられており、現在地の情報と被災直後の画像を重ね合わせて表示するなど、来訪者向けにわかりやすく表示する工夫がされました。
参考:総務省ICT地域活性化ポータル「石巻市におけるGIS,AR技術を利用した『防災まちあるき』」
▼ARについて詳しく知りたい方はこちら
都市経営:新潟県新潟市
新潟県新潟市では人口と施設のサービス量をGISで結び付け、長期的視点から行政サービスの策定を行っています。
具体的には地域と公共施設の移動距離を分析し、サービス量の偏在性を明確化。今後50年間の施設の需要と供給をシミュレーションしました。GISは結果を可視化できるため、感覚や経験ではないデータに基づいた分析が可能です。
行政サービスの策定以外にも、立地適正化計画や潜在的待機児童の発見にGISの機能を活用しています。
参考:総務省統計局「公的統計とGISを用いた人口減少を前提とする都市経営」
業務効率化:東京都豊島区 都市整備部
東京都豊島区の都市整備部は、まちづくり情報の資料提供に関する来庁者と職員の負担を軽減するため、GISデータをWeb公開しました。
来庁者のニーズの高い情報をGISのクラウドサービスから配信されるアプリに公開。誰でもデータを閲覧できるようにし、職員の業務を簡略化しました。
結果、来庁者数や資料の取得数、電話の問い合わせ数が減少。特に道路台帳の取得数は48%も減りました。
また、街路灯の点検にもGISの機能を活用し、工期短縮や経費削減といった効果が出ています。
資源管理:長野県
長野県はGISプラットフォームを活用し、国の特別天然記念物かつ「県鳥」であるライチョウの保護に取り組んでいます。具体的には、ライチョウの目撃情報を投稿できるスマートフォンアプリ「ライポス」を開発し、GISと連携。目撃情報をもとに、正確な位置情報や天気、数などをまとめたライチョウマップを作成しています。
登山者らの協力を得やすい、手軽なアプリにしたことで目撃情報が増加。精度の高いデータの蓄積により、効果的な保護対策の策定に役立てています。
エネルギー政策:福岡県北九州市
福岡県北九州市はエネルギー政策の一環として、GISプラットフォームを活用し、脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギー100%の電力導入状況や効果が一目でわかるような地図情報を発信しています。
目に見えない情報を可視化し、導入企業を増やすこと、北九州市が再エネ100%電力導入に適した立地だとPRすることが目的です。GIS導入の結果、エネルギー政策について市内外の民間企業や全国の自治体から問い合わせが増加しました。
参考:北九州市「北九州都市圏域の再エネ100%電力化の取組」
GISの使い方【企業編】
企業では、エリアマーケティングや物流・ルート分析など、さまざまな分野で使われています。
活用目的は大きく分けて2通りあり、社員がデータ分析に活用する「社内分析用途」と顧客向けに可視化する「サービス提供目的のための用途」です。
ここからは企業で使われているGISの事例を紹介していきます。
▼エリアマーケティングの詳細については以下の記事も参考にしてください。
店舗開発(社内分析用途):コンビニ
例えば大手コンビ二チェーンはGISを導入し、店舗開発に利用しています。位置情報ビッグデータをもとに周辺施設や渋滞情報、店舗の位置を分析し、コンビニの新規開店場所の策定や既存店の再配置の決定に活用。
また時間帯別の人流データにもとづき、店内調理品を調理するタイミングや仕入れの調整なども行い、GIS活用の幅を広げています。
顧客分析:百貨店
全国に店舗を展開している大手百貨店では、ビッグデータの人流分析GISを導入し、どのエリアに・どの時間帯・どれだけの顧客がいるかといった顧客分析を行っています。来訪者数や属性の把握も可能で、ターゲットを明確にし、取引先の開拓や固定客の増加を図る目的で使用されています。
BCP対策(社内分析用途):建設会社
建設施工をはじめとしたまちづくりを行っている大手建設会社では、GIS機能を用いて顧客に提案する土地の自然災害ハザード情報を見える化しました。土地情報シートとして提供したり、BCP(事業継続計画)対策に活用しています。
また、GISを用いた自然環境管理システムを使い、建設工事現場に生息する動植物の保全活動なども行っています。
保守業務(社内分析用途):電力会社
電力会社では、遠隔で電気使用量データの確認や管理ができるスマートメーターが普及しており、スマートメーターの導入による保守業務の負担を減らすためにGISが活用されています。スマートメーターの位置情報や通信経路をGISで見える化できるため、保守管理業務の効率アップにつなげることが可能です。
営業サポート(社内分析用途):商社
住宅機器を取り扱っている総合商社では、GISを営業サポート活動に利用しています。基幹システムとマッピングした顧客情報を地図上に表示し、新規開拓や営業業務の効率化を実現させています。
具体的には「営業の移動ルートを最適化」「営業担当の訪問情報をシステムに登録し、全拠点で情報共有」などし、営業担当エリアの見直しや営業戦略の立案を実施しました。
コミュニティアプリ(サービス提供目的のための用途):Webサービス
GISはコミュニティアプリなどのWebサービスにも使われています。
例えば、ランニングのコースや距離などのアクティビティを記録するコミュニティアプリ「Strava」では、GISの機能を用いて運動記録データをマップと連携しています。
これにより、ユーザーは保存したデータの自己分析を行ったり、Web上で共有して仲間と交流したりすることが可能です。
GISの活用サポートはオーダー!におまかせ
オーダー!はITと物流の専門性を活かし、企業のビジネスを幅広くサポートするビジネスコンシェルジュです。
「GISをビジネスに活かしたい」「GISを活用して新たな課題を発見したい」という要望に合わせたサービスを展開しています。
地理的空間情報ソリューションの「Pデータマップ」では、GISを使用し、企業や自治体向けに地図情報を可視化・解析するためのプラットフォーム構築や仕組みづくりのサポートが可能です。
また、一般的なBIツールと連携し、使い分けながらデータの可視化と分析も可能。地図情報とBIのレポーティングを両方兼ね備えている点が画期的な特徴です。
その他、3DデータやCADデータ(図面のデジタル化データ)、点群データなどを順に重ね合わせた表示や可視化による分析を提供。また、各種IoTセンサーなどからのデータ収集・連携によって、BIGデータを活用します。
- 人流・過密状況分析
- ヒト、モノの行動分析
- 都市インフラ・設備管理
- 測量・災害・土木・天候情報
- 感染症状況監視
- マーケティング
- 街づくり情報分析
- 顧客情報、販売情報、全国の支社支店の売上情報管理
オーダー!のGIS活用サポート事例(自治体)
オーダー!ではGISによって、観光周遊促進を目的とした観光客の人流データを分析することが可能です。オーダー!がサポートした沖縄 北部広域市町村圏事務組合様の事例を紹介します。
観光周遊システムとして「やんばる観光周遊システム」を構築し、観光客にWebアプリを提供しました。アプリの地図を見ると、現在ユーザーのいる地点に近いお勧めの観光スポットが表示される仕組みや観光スポットの訪問者にオリジナルの電子スタンプを提供する仕組みを導入。観光スポットを連続して訪れたくなる仕掛けを施しました。
また、アプリや無料Wi-Fiを使用してもらう際に属性データを収集し、いつ・どこに・どのような属性の人が・どのくらいの人数で来ていたかを可視化して、分析できるようにもしています。
スポット訪問のログや訪問前後の動き、訪問時間なども集積できるため最適なマーケティング施策を行い、結果的に滞在型観光へ向けた観光周遊を促進することに成功しています。
なお、GISだけでなくWebページやデジタルサイネージなどとも連携して情報を収集。オーダー!ではコンテンツ開発などを含め、これらを全て一気通貫でサポート可能です。
オーダー!のGIS活用サポート事例(企業)
大手物流企業様の物流オペレーションをサポートした実績もあります。
輸送先住所や輸送リスト、車種、金額、取扱拠点など、物流会社様が保有されているデータに地図データを重ねられるシステムを導入。個別輸送リストや車種情報、目的別の分析データを可視化し、非効率的なオペレーションを洗い出して効率化を測りました。
オーダー!では、データ分析だけでなく商品管理や倉庫管理などの物流業務代行も受注可能です。
GISの使い方・まとめ
すでに多くの自治体や企業がビジネスにGISを導入しはじめており、さまざまな業務効率化や分析・解析に一役買っています。
オーダー!では、自治体や企業のお客様向けにGISを活用した地図情報を可視化・解析するためのプラットフォーム構築や仕組みづくりのサポートを行っています。
お客様のご要望に合わせた提案をさせていただきますので、GISデータの活用をご検討されている場合は、ぜひお気軽にオーダー!へご相談下さい。
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