昨今の物流コスト上昇や差し迫る2024年問題によって、より難しくなってしまった物流コストの削減。
この状況下でコスト削減を図るには、物流全般にかかる費用の内訳や詳細をしっかりと把握しておかなければなりません。今回は、
- 物流コストの詳細を把握したい
- 物流コストが上昇している原因を知りたい
- 物流コストを削減する具体的な改善案を知って取り入れた
という企業に向けて、物流コスト比率と内訳の詳細、物流コストが高騰している理由について解説します。
物流コスト削減のポイントについても具体的な改善案を紹介していますので、ぜひ事業改善の参考にしてください。
物流コストとは
物流コストとは、保管〜輸送まで物流業務にかかわる全てのコストの総称です。輸送や運送費だけではなく、人件費や倉庫費なども含みます。
物流コストの分類
物流コストは、機能別に以下の5つに分類できます。
・輸送費、運送費
・荷役(にやく/にえき)費
・保管費
・管理費
・人件費
上記の分類以外に、支払形態や物流プロセスによってコストを分類する場合もあります。しかし、EC事業においては支払形態や物流プロセスによるコストは影響が少ないため、機能別にかかるコストについて意識することが大切です。
物流コスト比率とは
物流コストを管理するうえで知っておきたいのが「物流コスト比率」です。物流コスト比率とは、全体の売上に対して物流コストが占める割合のことを指します。
特に、外注先や委託する業務の内容によって物流コスト比率は大きく変動するため注意が必要です。
例えば、「〇円以上送料無料」というサービスを実施している場合、本来なら負担する送料を「広告宣伝費」や「販売促進費」と計上すべきですが、中には物流費として計上するケースがあります。
この場合、会計上「物流費」として計上しているため、売上高の割に物流コストが上昇したように見えてしまいます。
なお、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会が2021年度の実績をもとに行ったアンケートによると、有効回答を得られた195社の全業種平均の売上高物流コスト比率は5.31%。
さらに、2021年度の値上げ要請の有無についてのアンケート調査では、回答した164社のうち76.2%が「値上げ要請を受けた」と回答。
106社が値上げ要請のあったコストの種類は「輸送費」と回答しました。
コロナ禍の影響でばらつきはあるものの、全体的な物流コスト比率は上昇傾向にあります。
物流コストの削減においては輸送費・運送費の見直しが重要です。
物流コストの内訳
ここでは、物流コストの具体的な内訳について説明します。何にどのくらいのコストがかかっているかをしっかりと把握することが大切です。
輸送費、運送費
商品を目的の場所まで運ぶためにかかる費用のことです。
自社で所有しているトラックなどの車両費用やガソリン代、減価償却費などが当てはまります。また高速道路料金のほか、船や飛行機のチャーター代や配送業者に支払う配送料も含まれます。
物流コストを最も大きく占めているのが輸送費、運送費です。
荷役費
荷役とは、トラックや船、飛行機、貨車などへの搬入や搬出にかかわる作業全般のことです。荷役費には、輸送用車両への積み込み・積み下ろしに必要なクレーンやリフトの費用以外に、入庫費やピッキング、仕分けなどの費用や、梱包費、流通加工費などが含まれます。
作業量で費用が大きく変動するため、業務効率化を図ればコスト削減が可能です。
保管費
完成した商品や出荷前の商品は、一旦、倉庫や物流センターで保管しておく必要があります。倉庫の賃貸料だけでなく、保管や入出庫にかかわるコスト全般が保管費です。賞味期限や温度管理が必要な商品であれば、商品の品質を保つための費用も発生します。
自社で倉庫を保有している場合は倉庫の減価償却費、外部委託している場合はレンタル費用や賃貸費用がかかります。火災保険や機器の修繕費も保管費に含まれます。
自社倉庫と外部倉庫ではコスト差が大きい点に注意が必要です。外部委託の場合、物の重量と保管日数でコストが変動する場合と、契約坪数や坪単価によって月額費用が決まっている場合があるため、確認しておきましょう。
管理費
管理費とは、在庫管理や受注システムなどの導入や運用にかかる費用のことです。初期投資や維持費などがかかってくるため、費用対効果をよく検証したうえで導入する必要があります。
人件費
ここでの人件費は、物流の担当者や作業員に対するコストです。ドライバーの費用などは、会社により輸送費に含まれるケースもあります。
コスト削減においては、繁忙期と閑散期で作業にあたる人的リソースを変えることが大切ですが、調整が難しい場合は、あえて外注し、「固定費」だった人件費を「変動費」に変更するなどの工夫が必要となります。
物流コストが高騰する理由
物流コストが高騰する理由にはいくつかありますが、主に以下の3つがあげられます。
ガソリン価格の上昇
前述した通り、物流コストの中で最も大きな割合を占めるのが輸送費・運送費です。多くの企業で、物流コストの5〜6割を輸送費・運送費が占めています。そのため、近年のガソリン価格の高騰が物流コストをさらに押し上げています。
人員不足
近年、少子高齢化により労働力不足が問題になっていますが、物流業界においてもその傾向は顕著です。自動化や機械化が進んできているとはいえ、人手が欠かせない作業も多く、特に過酷な労働環境や高齢化などでドライバーの減少が深刻化しています。
さらに、2024年4月1日からは「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」により自動車運転業務に「時間外労働の上限規制」が適用されます。これによりドライバーの労働時間が減るため、よりドライバーの人員不足が懸念されています。
また、ドライバーにとっては労働時間が減ることによる賃金低下の問題も見過ごせません。転職するドライバーが増えるリスクを抱えているため、雇う側は賃金の値上げを検討したり、物流会社は運賃を上げたりするなどの対策が必要です。
その結果、全体的な物流コストが上昇することになります。
このように「2024年問題」によって物流業界は、労働条件や職場環境整備などの課題解決を迫られている状況です。
作業効率、輸送効率の悪さ
倉庫内での作業にムダやムラがあると、ミスにつながり対応に時間と人手が取られて余計なコストが発生することがあります。
さらに、ECサイトの利用者増加や消費者ニーズの多様化によって、小口の商品を頻繁に配送する「多頻度小口配送」が増えています。
この場合、在庫を抱えるリスクは減りますが、集積効率が悪くなり輸送頻度が増加するため、人件費や輸送費がかさむのがデメリットです。
消費者のニーズを満たしたうえで、いかに輸送効率を上げられるかがコスト削減のカギになります。
物流コスト削減のポイント
物流コストを削減する場合、一般的には物流コスト比率の高い、輸送費・運送費の改善から見直すことが多いでしょう。具体的には、運送業者との価格交渉や条件変更、委託先の変更などがあげられます。
しかし、すでに限界まで価格を下げていることも多く、これ以上削減することが難しいケースもあります。今後も物流コストの上昇が続くとみられている状況で、物流コストを削減するにはどのような方法があるでしょうか?
物流コスト削減のポイントとして、改善すべき点を詳しく解説します。
物流拠点を集約する
複数の物流拠点を持っている場合、拠点を集約することで倉庫費用や人件費を削減できます。ただし、拠点の立地は利便性の良い場所であることが重要です。倉庫や物流拠点の立地によっては輸送費が増大する可能性もあるため、物流コスト全体を考えたうえで検討しましょう。
遠距離配送が多い場合は、主な配送先エリアへ倉庫自体を移転する方法もあります。
例えば北海道や九州から東京への配送が多いなら、東京近郊に倉庫を持つなどです。配送先エリアに拠点を持てば1配送あたりの配送コストを下げられます。これにより、物流全体のコストを削減できる可能性があります。
物流倉庫選びについてはこちらもご覧ください
作業効率を上げる
一つ一つの作業効率を上げることもコスト削減につながります。以下の点を中心に改善ポイントがないか確認してみましょう。
・作業全体を見直し、ルール化する
・導線やレイアウト、作業工程に無駄がないか確認する
・作業ロボットやツールで自動化できる作業はないか確認し導入を検討する
自動化によってミスを減らしたり、システムを整えて作業効率を継続的に改善したりすることでコストカットにつながります。
また、「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「しつけ(Shituke)」の頭文字をとった5S活動もコスト削減に有効です。
一つ一つは小さなことでも整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(ルールの習慣化)を徹底することで、無駄な時間や作業を減らして業務改善ができます。
導入していない場合は取り組んでみるのもいいでしょう。
コストだけでなく、品質や納期の改善にもなり、結果的に顧客満足度を高めることにつながります。
また、できる限り工場や倉庫、物流センターなど拠点間の物流を少なくすることもコスト削減に有効です。
一つの倉庫で撮影、ピッキング、組み立て作業、加工などができると理想的でしょう。
EC物流の業務工程についてはこちらもご覧ください
輸送効率を上げる
輸送費を見直す場合は、配送ルートや配送頻度の見直しが大切です。
荷物の仕分けや集約で積載率を高めたり、複数の輸送手段を組み合わせたりして輸送効率を上げていきます。物流拠点を集約、または移転させる場合は、配送先の絞り込みなども同時に行うとコストや時間の削減が可能になります。
物流管理システムの導入
物流管理システムとは、入荷~発送まで一連の情報を一元管理できるシステムのことです。大きく分けてWMS(倉庫管理システム、在庫管理システム)とTMS(輸配送管理システム)の2種類があります。
・WMS(倉庫管理システム、在庫管理システム)
Warehouse Management Systemの略で、日本語では「倉庫管理システム(在庫管理システム)」と呼ばれているWMSは、倉庫や物流センター内での作業をサポートするシステムです。
導入することで、商品の入出庫作業のスピードアップや誤出荷の防止、リアルタイムでの在庫状況把握が可能になり、作業効率が上がります。
・TMS(輸配送管理システム)
Transport Management Systemの略で、日本語では「輸配送管理システム」と呼ばれているTMSは、出荷から配送までをトータル管理するシステムです。
導入により、運行スケジュールやドライバーの割り振りなどの配車計画や稼働状況をリアルタイムで把握する運行管理ができるようになります。
物流システムの導入や運用にはコストがかかるため、まずは自社の課題を洗い出し、費用対効果があるかを確認したうえで検討しましょう。
物流コストの削減においては輸送費・運送費の見直しが重要です。
WMSの選び方については以下の記事で詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。
アウトソーシングを活用する
近年の物流業界の流れとしては3PL、4PLも注目されています。
・3PL(サードパーティ・ロジティクス)
倉庫での在庫管理や配送などの物流業務を、ノウハウをもつ専門の業者へ外部へアウトソースすることです。これにより、業務効率化だけでなく経営効率化も図ることができます。
・4PL(フォースパーティ・ロジスティクス)
3PLのノウハウを持つ業者が、別の物流企業の業務をプロデュース(コンサルティング)する物流サービスです。これにより、物流業務の改善だけでなく、新しい課題の発見や改善が可能となります。
いずれにしても、ノウハウを持つ専門業者に物流業務の一部または全てを委託することにより、物流サービスの質を高めることができます。委託することで人材や時間に余裕ができるためコア業務に集中でき、経営効率を上げられるというメリットもあります。
3PLは、国土交通省も推進している事業です。
3PLについては以下の記事で詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。
物流コストの削減はオーダー!にお任せ
ビジネス・コンシェルジュ「オーダー!」は、お客様が抱える様々な課題解決のサポートを行っています。
物流業務なら、物流ノウハウを持っているオーダー!にお任せください。
物流システム導入サービスは、物流現場に寄り添った視点でシステムを開発・構築しており、使い勝手の良さと柔軟な操作性も備えています。ECシステムや既存のシステムとも連携可能です。
また、入出庫管理や在庫管理、加工・梱包など、商品の入荷から発送まで、要望に応じた業務代行を行っています。業務プロセスを見直すためのコンサルティングも行っており、物流に関する業務をトータルでサポートできるのがオーダー!の強みです。
まとめ
物流全体のコストを削減するには、各業務の作業効率化を図ったり、物流拠点の見直しやアウトソーシングの導入などによるコスト削減の積み重ねが重要です。
特に自社で物流業務を担っている場合は、アウトソーシングで業務効率化を図ることによってトータルでコスト削減できる可能性があります。
オーダー!では、お客様の要望に合わせたカスタマイズやコンサルティングが可能です。コスト削減でお困りのことがあれば、ぜひオーダー!にご相談ください。
物流代行全般について理解したい方は、以下の記事に詳しくまとめていますので参考にしてみてください。