デジタルやスマートデバイスの浸透により、顧客との接点は急速に拡大しています。こうした多様な接点での「価値ある体験」の提供が、新たなビジネスチャンスにつながります。
顧客の満足度を上げるためには、プロセスごとに最適な体験を提供する必要がありますが、そこで活用できるのがカスタマージャーニーマップです。カスタマージャーニーマップを作成すれば、優先すべき課題が明確になり、的確なマーケティング施策を行うことができます。
今回は、カスタマージャーニーマップを作成するメリットや作成する際のポイント、注意点について詳しく解説します。実際の企業における活用事例も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップとは、顧客がサービスを知り、購入検討から購入後の利用・活用までのプロセスを見える化したマップのことです。
カスタマージャーニー(顧客が購入後にたどるプロセス)をマップにすることで、見込み顧客の心理状態を全体的に俯瞰できるようになります。これにより、顧客の体験価値を最大化するための設計も可能となります。
▼旅行代理店担当者が作成する場合のマップ例
カスタマージャーニーマップを作成するメリット
カスタマージャーニーマップを作成するメリットとして、以下の3つがあげられます。それぞれについて、具体的に解説します。
課題の優先順位がわかる
カスタマージャーニーマップは、顧客の行動段階や思考を時系列順に洗い出し、課題を見つける手法です。これにより、優先すべき課題が明確になります。
また全体像を俯瞰できるため、これまで気付かなかった課題や改善すべきポイントも見つけられます。顧客の体験を全体的に把握することで隠れていた問題を見つけ出し、効果的な解決策を立案することが可能です。
顧客への適切なアプローチができる
カスタマージャーニーマップでは、購入検討から購入後の顧客の思考や心理状態を洗い出すため、顧客の悩みやニーズが分かります。顧客目線に立って各段階ごとに適切なアプローチができるようになるので顧客体験が向上し、CV(コンバージョン)率の向上が見込めるようになります。
社員で共通認識を持てる
カスタマージャーニーマップを見れば顧客の行動や心理状態がわかるので、共通認識として社内共有できます。誰が見ても「顧客がどの段階で悩んでいるのか」「何に悩んでいるのか」を理解できるようになるため、施策のブレがなくなり一貫したアプローチが可能となります。
カスタマージャーニーマップ作成の手順
カスタマージャーニーマップは、以下の4つの手順に沿って作成していきます。
1.ゴール設定:課題や目的に合わせてマップ作成のゴールを設定する
2.ペルソナ設定:リアルな顧客心理を把握するためのペルソナを設定する
3.フレーム作成:ペルソナが商品やサービスを知り、購買にいたるまでのプロセスをフレーム化する
4.項目を埋める:作成したフレームの項目を埋めていく
それぞれの手順について、より詳しく解説します。
1.ゴール設定
まずは「カスタマージャーニーマップを使ってどのようなことを達成したいのか」というゴールを設定します。目指すべきゴールによって、これから作成するマップの枠組みや達成までの道のり(ジャーニー)の期間が変化するためです。
例えば、「キャンペーン施策から会員登録を促す」といったゴールを設定した場合、作成するカスタマージャーニーの想定期間は短くて済むでしょう。対して、「商品認知からリピート顧客を増やす」というゴールを設定した場合は、数年単位のカスタマージャーニーマップを作成する必要があります。
このように、ゴールを明確に設定することでマップの方向性や期間が定まるため、最初に設定しておくことが大切です。
2.ペルソナ設定
ペルソナとは、年齢や性別、職業や居住地などを具体的に設定した仮想の顧客情報のことです。実在する人物のように詳細なペルソナを設定することで、よりリアルな顧客の特性やニーズ、行動パターンを把握できます。
さらにBtoBビジネスにおいては、ターゲットとなる企業の「担当者」と企業全体である「組織」の2つのペルソナを作成する必要があります。担当者のペルソナ設定は、関係構築や効果的なコミュニケーションをとるうえで重要です。
またBtoBの場合、意思決定は一人の担当者ではなく「組織」となるため、企業全体の特性や目標、課題を理解し、顧客との関係を深めるうえで組織のペルソナ設定が必要になります。
なお、カスタマージャーニーマップはペルソナごとに作成します
ペルソナについては以下の記事も参考にしてください。
3.フレーム作成
次に、ペルソナを設定した顧客が商品を認知して購入、または購入後にとった行動のプロセスをもとにフレームを作成していきます。以下で、縦軸と横軸の項目について説明しますが、必ずしも同じ項目が必要というわけではありません。企業の状況やゴールに合わせた項目を設定しましょう。
縦軸設定
縦軸には、顧客の行動や心理に関する要素を配置します。各項目の詳しい解説は以下の通りです。
・行動
顧客が実際に行うアクションや行動です。「商品を検索する」「Webサイトを訪問する」「商品を購入する」などの行動が含まれます。
・タッチポイント
タッチポイントとは顧客が企業と接触する場所やツールのことで、WebサイトやWeb広告、SNS、店舗、展示会などが当てはまります。
・思考
顧客の心理状態のことです。購買の動機や商品に対する期待、疑念などが当てはまります。
・感情
顧客の喜び、不安、満足、不満といった感情を整理します。
・悩み・要望
顧客が抱えている悩みや願望、ニーズのことであり、何に困っているのか、何を求めているかを理解するうえで重要な項目です。
・施策
企業側が実施する施策やそれに対するアクションのことです。
横軸設定
横軸には、顧客の購買プロセスや行動の進捗状況を配置します。各項目の詳しい解説は以下の通りです。
・認知
顧客が、企業や商品・サービスに初めて出会う段階です。
・情報収集
顧客が商品・サービスの詳細な情報を収集する段階です。
・比較検討
顧客が商品・サービスを競合他社と比較し、最適な選択を行う段階です。
・体験・購入
顧客が商品やサービスを体験し、実際に購入する段階です。購買決定が行われる段階でもあります。
・リピート
顧客が継続的に商品やサービスを利用する段階です。顧客満足度の向上やリピート購入が重要となります。
企業の状況や目的に合わせて縦軸と横軸の項目を柔軟に設定し、リアルなカスタマージャーニーを反映させることが重要です!
4.項目を埋める
縦軸と横軸を決めてフレームが完成したら、各項目に具体的な情報を埋め込んでいきます。
項目を埋める際は、単に経験則やイメージに頼るのではなく、ペルソナに近い属性を持つ人に聞いたり、営業担当やカスタマーサポートチームに相談したりすることをおすすめします。
なぜなら、実際の顧客と接点を持つ人たちから情報を得ることで、よりリアルな顧客行動や心理状態を把握できるからです。顧客から寄せられた実際の声やフィードバックをマップに反映させれば、カスタマージャーニーマップの精度を高めることができます。
カスタマージャーニーマップ作成時のポイント
ここからは、カスタマージャーニーマップを作成するときのポイントについて解説します。
複数人で作成する
複数人で作成することにより、異なる視点や経験から情報を集約できるため、より顧客の行動や感情を掘り下げ、顧客の実際の行動やニーズに近いマップを作成できます。必要な要素の漏れを防いだり、情報の正確性を確保するためにも、複数人で作成するようにしましょう。
マップを埋める際にKPIも定める
KPI(Key Performance Indicator)とは、日本語に訳すと「重要業績評価指標」となり、企業や組織が目標を達するまでに行う具体的な行動指標のことです。カスタマージャーニーマップを埋める際にKPIを定めることによって、マーケティング活動を俯瞰的に整理、検証できます。
プロセスやタッチポイントごとに適切なKPIを設定すれば、設定した目標値に達しなかった段階の問題にも気付けます。
カスタマージャーニーマップ作成時の注意点
カスタマージャーニーマップを作成するうえでの注意点を紹介します。
作り込みすぎない
カスタマージャーニーマップは、詳細な情報を盛り込むことで顧客の心理状態や行動パターンを理解しやすくなりますが、作り込みすぎるとマップが複雑化し、課題を見つけにくくなります。
最初はシンプルに作成し、徐々に細部を加えていくようにしましょう。
企業の希望や憶測は入れない
企業の希望や憶測に基づいて作成されたカスタマージャーニーマップには、顧客の実際の体験や行動が反映されていません。
客観的なデータを元に、客観的な視点からマップを作成するようにしましょう。
作成後も修正が必要
顧客の購買行動は常に変化し多様化しているため、作成したマップと実際の顧客行動にはギャップが生じる可能性があります。
この場合は定期的にマップを見直し、修正を行いましょう。
顧客の新たな行動やニーズに対応し、マップを最新の状況に合わせてアップデートすることが大切です。
カスタマージャーニーマップの事例
ここからは、実際の企業が作成しているカスタマージャーニーマップの事例を紹介し、それぞれの特徴を解説していきます。
JNTO(日本政府観光局)
引用:https://www.jnto.go.jp/projects/regional-support/news/2135.html
ユーザーである訪日外国人旅行者が行動にあわせて、「どのタイミング」で「どんな情報」を「どのメディアを利用」して訴求しているのかをマップにしたものです。行動のプロセスや目的によってユーザーが活用するメディアを一目で把握できるため、それに合わせた施策が行えます。
フォルクスワーゲン
ユーザーである顧客の体験ごとに、行動やタッチポイントをマップにしたものです。フォルクスワーゲンでは顧客の要求とフィードバックを車両とサービスの開発に反映させ、あらゆるタッチポイントで顧客満足度を上げることを目標としています。
OISIX
有機野菜を中心とした食品宅配の「OISIX」では、「献立を考える」「食材を選ぶ」「届く」「調理する」といったOISIXを利用するユーザーの行動パターンを軸にしたカスタマージャーニーマップを作成。これにより「栄養豊富なおいしい食材を時短で調理したい」というユーザーのニーズを導き出し、最適なタイミングで注文できるような施策を行いました。
これにより、注文未変更者を63%削減することに成功し、解約リスクを大幅に減少 させています。
参考:セールスフォース・ジャパン「オイシックス・ラ・大地 事例」
JCB
国際カードブランドの「JCB」では、カード利用者となるユーザーの「入会初期」「継続利用時」「更新時」といったプロセスを軸にカスタマージャーニーマップを作成。これをもとに課題を洗い出し改善策をとったところ、入会初期の稼働率が5%向上し、利用額も約10%上がったという結果を出しています。
参考:セールスフォース・ジャパン「ジェーシービー 事例」
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カスタマージャーニーマップ・まとめ
カスタマージャーニーマップは顧客の行動段階やタッチポイントを可視化し、課題を洗い出すための有用なツールです。重要なのは、カスタマージャーニーマップで明確になった問題を解決し、顧客満足度や顧客体験を上げることです。定期的にマップを見直して修正を行いながら、マーケティングに活用していきましょう。
オーダー!では、カスタマージャーニーマップ作成後の施策サポートを行っています。「カスタマージャーニーマップの活用法がわからない」という場合は、ぜひお気軽にご相談下さい。
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