近年、防災・災害支援として自治体に導入されるケースが増えてきているGIS(地理情報システム)。
地図情報とさまざまなデータを一体化させて可視化できることから、企業もデータ分析や業務効率化の面で導入を進めています。しかし、
- GISの基本的なことを理解したい
- 地図情報をデジタル管理したいけど、どうすればいいか分からない
- GISがどのようにマーケティングに活用できるか知りたい
といった悩みを抱えている人もいるでしょう。
そこで今回は、GISの特徴と活用するメリット、分野別の活用例を詳しく解説していきます。この記事を読めば、GISを導入した場合に得られるメリットや課題をイメージできるはずです。
実際にオーダー!がサポートした自治体と企業の事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
GISとは
GISとはGeographic Infomation Systemの略で、日本語に訳すと「地理情報システム」です。地図情報に人口分布や天候などの位置に関するデータを重ね合わせることで、地理空間の情報を可視化できます。
GISは地理情報を総合的に分析・管理できる技術です。
身近なものでいえばカーナビやGooleマップで活用されているGIS。
政府や自治体が本格的にGISを活用するきっかけになったのは1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災です。国土交通省 国土地理院は、このときの被災状況を調査したデータをもとに被害状況などを作成し、空間データの基盤を整備しました。
その後、正式に地理空間情報を活用・推進する施策が国会で制定され、現在では多くの自治体がハザードマップや防災面でGISを活用するようになりました。
現在は、ビジネスシーンにおいてもサービス向上を目的に幅広い分野でGISが活用されており、マーケティングに欠かせないシステムになっています。
GISの特徴
では、GISでどのようなことができるのでしょうか?その機能を3つに分けて詳しく解説します。
データを見える化
地図情報や交通情報、人口分布、天候情報などを重ね合わせて、ひとつの空間情報としてデータを見える化できるのがGISの特徴です。
エリアを拡大・縮小して確認したり、3Dやアニメーションなどの技術を用いて、立体的に表示することもできます。
GISを活用し、地図情報以外も可視化されているGoogleマップをイメージすると分かりやすいでしょう。
情報の関連性を発見
データを重ね合わせることで、各情報の関連性も見えてきます。個別のデータだと掴みにくかった傾向も、地理的情報や他の情報と組み合わせることで情報量が増え、定量的な情報を把握しやすくなるのです。
例えば、
- 地図と各店舗の売上高を組み合わせ、地域の特色を発見する
- 公共サービスの利用率と組み合わせ、利用率の偏りを見つける
などが可能です。
情報の統合・分析
GISでは関連性を見つけるだけでなく、情報の統合・分析もできます。新しいデータを更新して鮮度を保ったり、分析して課題を洗い出したりすることが可能です。分析方法もさまざまで、「バッファ解析」「ボロノイ分割」「カーネル密度推定」「ネットワーク解析」などがあります。
分析方法の違いや使用目的を簡単に説明すると、以下のようになります。
バッファ解析
公園の面積、道路の線など地図から得られる位置情報をもとに「区域」を作成する手法です。被害の予測範囲を示すハザードマップや施設の誘致圏分析、需要予測などに使用されます。
ボロノイ分割
距離に影響を受ける「勢力圏」の解析や分析に用いられる手法です。隣り合った母点を垂直二等分線で結び、領域を分割します。都市計画や企業の出店計画の際に、競合の勢力分析などで使用されます。
カーネル密度推定
統計学的に確率密度を推定する手法です。例えば、犯罪が起きた場所を地図上に表示させて、犯罪が起きやすいエリアを分布で推定するという用途で用いられています。
ネットワーク解析
最短経路の検索などに使われる手法で、Googleマップやカーナビにも利用されています。
GISを活用するメリット
多面的な情報を集めてひとつの地理空間データとして可視化できるのが最大の特徴のGISですが、ビジネスシーンにおいてもさまざまなメリットがあります。
ここでは、GISを活用する4つのメリットについて解説します。
仕事の効率化
GISではデジタル地図を利用するため、調査や分析の効率が上がります。一括管理や検索性の向上により、工数や人的リソースが少なくてすむのがメリットです。Excelなど数値情報だけでは発見に時間がかかっていたインサイト(潜在ニーズ)も、GISなら見つけやすく、時間効率もアップします。
コミュニケーション・伝達力の向上
データを可視化することによって、情報の共有がしやすくなるためコミュニケーションや伝達力も向上します。情報を正確に伝えられるようになり、データ分析による戦略決定や施策なども進みやすくなるでしょう。
意思決定をサポート
GISでは統計的な分析や数値の把握ができ、可視化された情報をもとにした意思決定が可能です。感覚に頼らず、客観的な目線で最適な決断をサポートします。
幅広く活用が可能
データの種類や使用範囲が広いGISは、観光や防災といった行政分野の他、物流・運輸や小売、医療分野などに幅広く活用できます。活用例については、以下で詳しく解説します。
GISの活用シーン例
実際のビジネスシーンでGISがどのように活用されているのか、5つの分野に分けて事例を紹介します。
観光分野
位置情報から取得したデータをもとに、観光客の年代や性別、移動ルートなどを可視化できます。
地域のどのエリアが混雑しているのかも把握できるため、観光地の店舗運営に反映させたり、観光ルート支援を実施したりすることが可能です。
観光客の人流分析も効率的に行えるので、観光客誘致の施策に役立てられます。
物流・運輸分野
輸送先や輸送リスト、車種、数量などのデータと地図を組み合わせることによって、ルートごとの遅延率や座席の占有率の調査が可能となり、最短ルートの策定に役立ちます。
地理的情報から、営業所や停留所などの決定や拠点分析も可能。さらに、建物内、倉庫内のモノや人の位置管理にも利用でき、作業の効率化をはかれます。
小売分野
小売分野では、出店に最適なエリアの分析や商圏調査などでGISが活用されています。
例えば、マーケットボリュームを調べたい場合は、ターゲットの居住地分布や市場環境を分析。この結果をもとに出店場所を策定したり、地域性にあった商品の企画開発を行います。
他にも過去実績から売上予測を出したり、商品のプロモーション効果をエリア別に検出したり、地域に応じた訴求ポイントの精度を上げることにも役立っています。
防災分野
GISの活用によって、ハザードマップや過去の災害情報も可視化できるようになりました。
これは、市民の防災意識を高めることに一役買っています。また、リアルタイムでの情報発信やオープンデータが避難勧告に使われている他、災害発生時の被害情報をまとめて被害想定マップを作るなど情報の共有にも活用されています。
医療分野
医療分野においては、感染症の状況分析や感染発生と関与する場所・時間の分析にGISが活用されています。
例えば、新型コロナウイルス感染症のパンデミック時には、GISを用いた感染状況を可視化したサイトが公開されるなど、クラスター対策や調査といった空間疫学の面で活かされています。
他にも地域ごとの疾患傾向を分析したり、利用者がサービスを円滑に利用しやすいアクセシビリティを踏まえたうえで診療科を開設する地域の策定などにも一役買っています。
GIS活用のサポートはオーダー!におまかせ
オーダー!は、ITと物流の専門性を活かし、企業のビジネスを幅広くサポートするビジネスコンシェルジュです。
Pデータマップサービスでは、 GISを活用し、企業や自治体向けに地理的空間情報を可視化・解析するためのプラットフォームの構築や仕組みづくりのサポートを行っています。
BIツールと連携し、使い分けてデータの可視化と分析を実施。地図情報とBIのレポーティングを両方兼ね備えている点が画期的な特徴です。
その他、3DデータやCADデータ(図面のデジタル化データ)、点群データなどを順に重ね合わせた表示や可視化による分析を提供。また、各種IoTセンサーなどからのデータ収集・連携によって、BIGデータを活用します。
- マーケティング
- 街づくり情報分析
- 人流・過密状況分析
- 人、モノの行動分析
- 測量・災害・土木・天候情報
- 顧客情報、販売情報、全国支社支店の売上情報管理 など
「GISを活用して新たな課題を発見をしたい」「GISをビジネスに活かしたい」という場合は、ぜひオーダー!にご相談下さい!
以下で、オーダー!が実際にサポートしたGIS活用の事例を紹介します。
GIS活用サポート事例1:自治体
オーダー!ではGISによって、観光周遊促進を目的とした観光客の人流データを分析することが可能です。オーダー!がサポートした沖縄 北部広域市町村圏事業組合様の事例を紹介します。
観光周遊システムとして「やんばる観光周遊システム」を構築し、観光客にWebアプリを提供しました。アプリの地図を見ると、現在ユーザーのいる地点に近いお勧めの観光スポットが表示される仕組みや観光スポットの訪問者にオリジナルの電子スタンプを提供する仕組みを導入。観光スポットを連続して訪れたくなる仕掛けを施しました。
また、アプリや無料Wi-Fiを使用してもらう際に属性データを収集し、いつ・どこに・どのような属性の人が・どのくらいの人数で来ていたかを可視化して、分析できるようにもしています。
スポット訪問のログや訪問前後の動き、訪問時間なども集積できるため最適なマーケティング施策を行い、結果的に滞在型観光へ向けた観光周遊を促進することに成功しています。
なお、GISだけでなくWebページやデジタルサイネージなどとも連携して情報を収集。オーダー!ではコンテンツ開発などを含め、これらを全て一気通貫でサポート可能です。
GIS活用サポート事例2:企業
大手物流企業様の物流オペレーションをサポートした実績もあります。
例えば、輸送先住所や輸送リスト、車種、金額、取扱拠点など、物流会社様が保有されているデータに地図データを重ねられるシステムを導入。個別輸送リストや車種情報、目的別の分析データを可視化し、非効率的なオペレーションを洗い出して効率化を測りました。
オーダー!では、データ分析だけではなく商品管理や倉庫管理などの物流業務代行も受注可能です。
GISのまとめ
今回は、地図情報を活用したマーケティングやデータの活用法について分野別に詳しく紹介しました。GISは多くの自治体や企業で利用されており、実にさまざまなシーンで活用可能です。
地理情報の可視化や情報の統合と分析によって、以下のようなことがが行えるでしょう。
- 仕事の効率化
- コミュニケーション・伝達力の向上
- 意思決定の適切な判断
「メリットや機能、活用方法は理解できたが、具体的に自社のビジネスやマーケティングにどう活かせばいいのか分からない」という場合は、ぜひオーダー!にご相談下さい。
オーダー!では、GISを活用したソリューションを提供。企業や自治体向けに地理的空間情報を可視化・解析するためのプラットフォームの構築や仕組みづくりのサポートも可能です。
お客様のご要望に合わせた最適な活用方法をご提案します。カスタマイズやアプリの開発なども対応可能ですので、まずはお気軽にご連絡下さい。
GISデータやGISの使い化については以下の記事も参考にしてください。