序文
物流コストの増加に悩む企業は年々増えています。燃料価格や人件費の上昇といった外部要因だけでなく、EC市場の拡大による小口配送の増加や、物流現場の人手不足も影響しています。
一方で、物流費が高くなる原因は外部環境だけとは限りません。配送方法や在庫管理、物流体制など、自社の運用を見直すことで改善できるケースも少なくありません。
「物流費は仕方がない経費」と考えてしまうと、利益を圧迫する要因を見逃してしまいます。まずは物流コストが高くなる理由を整理し、どこに改善余地があるのかを把握することが重要です。
本記事では、物流コストが高い原因を体系的に整理したうえで、今すぐ見直したい7つのポイントを詳しく解説します。日用品メーカーや食品EC、雑貨EC、サブスク通販の経営企画担当者、EC責任者、物流担当者が、自社の改善余地を判断できる内容となっています。
1. 売上高物流比率|まずは物流費が高い状態かを把握する

物流費改善では、最初に現状を数値で把握する必要があります。その際に活用される代表的な指標が「売上高物流比率」です。
計算式:売上高物流比率=物流費÷売上高×100
例えば、売上が1億円で物流費が700万円の場合、物流比率は7%となります。
物流費だけを見ても高いかどうかは判断できません。売上とのバランスを確認することで、自社の物流費が適正かどうかを判断しやすくなります。
以上の傾向は、輸送・保管・包装費などを含む物流費の範囲や企業規模により多少異なりますが、おおむね物流費は売上高の5%前後という点は日本国内共通のベンチマークとなっています。
業界によって物流費率には違いがあります。ECやサブスク通販は配送回数が多く、小口配送になりやすいため、物流費率が上昇しやすい傾向があります。
| カテゴリ | 最新比率(年度) |
|---|---|
| 全産業平均 | 5.32% |
| 製造業 | 5.26% |
| 卸売業 | 5.57% |
| 小売業 | 5.40% |
| サービス業(その他) | 5.14% |
| 一般EC | 未公表(調査例:多くが21~30%) |
※JILS「2025年度物流コスト調査」、EC事業者向け調査等をもとに作成。物流費率は商材・販売形態・物流費の集計範囲により異なります。
まずは毎月の物流費率を継続的に確認し、前年や予算との比較を行うことが重要です。
- 売上高物流比率を毎月算出している
- 商品カテゴリー別に物流費を把握している
- 前年比を確認している
- 物流費の増減理由を分析している

物流費率が見えていない状態では、改善の優先順位を決めることが難しくなります。
2. 輸送・配送コスト|契約運賃や梱包サイズが適正か

輸送コストは、物流費全体の中でも大きな割合を占める項目です。そのため、自社の配送方法や運用状況を見直すことで、物流コストを改善できる可能性があります。
ただし、見直すべきポイントは事業形態によって異なります。
EC事業では、商品を配送会社へ引き渡すケースが多く、配送条件や契約内容が輸送コストに大きく影響します。一方、自社配送を行っている企業では、配送ルートや積載率などの運用方法がコストを左右します。
自社の物流体制に合わせて、次のポイントを確認してみましょう。
- 宅配会社との契約運賃が適正か
- 配送サイズや梱包サイズを最適化できているか
- 配送会社を配送先や商品に応じて使い分けているか
- 送料無料ラインが利益を圧迫していないか
- まとめ発送によって配送回数を削減できるか
- 冷蔵・冷凍・大型商品などの配送条件を見直せる余地がないか
- 物流会社を利用している場合、運賃条件を定期的に見直しているか
- 配送ルートが最適化されているか
- 積載率が低くなっていないか
- 同一エリアへの配送回数が多くなっていないか
- 配送頻度が適切か
- チャーター便を頻繁に利用していないか
- 配送エリアが広がり過ぎていないか
輸送コストは、配送件数や出荷量が増えるほど影響が大きくなります。まずは自社の物流体制に応じた見直しポイントを整理し、改善できる項目から取り組むことが物流コストの適正化につながります。
3. 保管コスト|過剰在庫や滞留在庫が利益を圧迫していないか

保管コストは目立ちにくいものの、利益に大きく影響します。
売れない在庫を保管し続けると、倉庫スペースだけでなく、棚卸しや管理にかかる人件費も増えていきます。
特に季節商品や賞味期限がある商品では、過剰在庫が廃棄ロスにつながる可能性もあります。
改善のポイントは次のとおりです。
- 在庫回転率を定期的に確認する
- 長期滞留在庫を一覧化する
- 発注量を需要予測に基づいて調整する
- ABC分析で重点管理商品を明確にする
在庫は多過ぎても少な過ぎても機会損失につながります。適正在庫を維持することが物流コストの最適化につながります。
4. 作業コスト|ピッキング・梱包・人員配置に無駄がないか

物流現場では、日々の作業効率が物流コストを大きく左右します。特にピッキングや梱包は毎日発生する業務のため、わずかな時間のロスが積み重なると、大きな人件費につながります。
例えば、商品配置が適切でない倉庫では、作業者の移動距離が長くなります。また、担当者ごとに作業手順が異なる場合は、教育コストが増えたり、作業品質にばらつきが生じたりする可能性があります。
このような状態では、人員を増やしても根本的な改善にはつながりにくくなります。
作業コストを見直す際は、次のポイントを確認すると改善点を見つけやすくなります。
- ピッキング動線が最適化されている
- 商品配置が出荷頻度を考慮したレイアウトになっている
- 作業手順が標準化されている
- 作業時間や生産性を数値で管理している
- 繁忙期と通常期で人員配置を調整している

物流現場では「勘」や「経験」に頼った運用が残っているケースも少なくありません。作業実績をデータで管理し、改善を継続することが重要です。
5. 返品・再配送コスト|見落とされやすい隠れ物流費が発生していないか

物流費を見直す際は、出荷後に発生するコストも確認する必要があります。
返品や再配送は帳票上では目立ちにくいものの、利益を圧迫しやすい費用です。
例えば、誤出荷が発生した場合には次のようなコストが重なります。
- 回収費用
- 再梱包費用
- 再出荷費用
- 商品確認作業
- 顧客対応にかかる人件費
一件当たりの金額は小さく見えても、件数が増えると物流費全体への影響は大きくなります。
特に食品ECでは賞味期限、雑貨ECでは破損、サブスク通販では住所変更漏れなど、業種ごとに発生しやすい課題が異なります。
改善に向けて確認したい項目を整理します。
- 返品率を毎月集計している
- 誤出荷率を管理している
- 再配送件数を把握している
- 梱包品質を定期的に確認している
- 商品ページや配送情報を見直している

返品そのものを減らすだけでなく、発生原因を分析することが物流コスト改善につながります。
6. 物流体制の選定|事業フェーズに合った運用になっているか

物流コストは、物流体制そのものが事業規模に合っているかどうかでも大きく変わります。
創業当初は自社物流で問題なく対応できていても、受注件数が増えると、倉庫スペースや人員が不足しやすくなります。
一方で、早い段階から物流を全面的に外部委託すると、運用の自由度が低下する場合もあります。
自社物流と物流代行(3PL)の特徴を比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | 自社物流 | 物流代行(3PL) |
|---|---|---|
| 初期投資 | 大きくなりやすい | 抑えやすい |
| 人員確保 | 自社で必要 | 負担を軽減しやすい |
| ノウハウ蓄積 | 社内に残る | 外部に依存しやすい |
| 繁忙期対応 | 調整が難しい場合がある | 柔軟に対応しやすい |
| 拡張性 | 倉庫容量に左右される | 出荷量の増減に対応しやすい |
どちらが優れているとは一概にはいえません。
「現在の物流体制が数年前から変わっていない」という企業では、見直しによって改善できる可能性があります。
次のような状況に当てはまる場合は、物流代行(3PL)の活用を検討するタイミングと考えられます。
- 出荷件数の増加により、現場の人員だけでは対応が難しくなっている
- 繁忙期になると出荷遅延や誤出荷が発生しやすい
- 倉庫スペースが不足し、新たな保管場所の確保を検討している
- 物流担当者の採用や教育に多くの時間やコストがかかっている
- EC事業の拡大に合わせて、物流体制を柔軟に拡張したい
一方で、出荷件数が安定しており、自社物流で品質やコストを十分に管理できている場合は、無理に外部委託へ切り替える必要はありません。
重要なのは、自社物流と物流代行のどちらが優れているかではなく、現在の事業規模や今後の成長計画に適した物流体制を選択することです。
7. システム連携|アナログ管理が物流全体を圧迫していないか

物流業務では、受注管理、在庫管理、出荷管理など複数のシステムを利用することがあります。
しかし、それぞれが連携していない場合は、同じ情報を何度も入力することになり、人的ミスや作業時間の増加につながります。
代表的な物流システムには次のようなものがあります。
| システム | 主な役割 |
|---|---|
| OMS(Order Management System) | 受注情報の管理 |
| WMS(Warehouse Management System) | 倉庫・在庫・出荷管理 |
| TMS(Transport Management System) | 配送・輸送管理 |
これらを適切に連携すると、受注から出荷までの情報を一元管理しやすくなります。
また、Excelによる管理では属人化が進みやすく、担当者が不在になると業務が止まるリスクもあります。
システム導入だけを目的にするのではなく、業務フロー全体を整理したうえで活用することが重要です。
物流コスト改善の優先順位&診断チェックリスト
物流費を一度に改善しようとしても、すべてを同時に進めることは難しい場合があります。
まずは改善効果が大きく、着手しやすい項目から取り組むことがおすすめです。
| 優先度 | 項目 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| ★★★ | 売上高物流比率の把握 | 現状を数値化できる |
| ★★★ | 輸送コスト | 物流費全体への影響が大きい |
| ★★★ | 保管コスト | 在庫圧縮による固定費削減 |
| ★★☆ | 作業コスト | 生産性向上・人件費改善 |
| ★★☆ | システム連携 | 作業効率向上・ミス削減 |
| ★☆☆ | 返品・再配送 | 品質改善・顧客満足度向上 |
自社の物流体制を確認する際は、次のチェックリストを活用してください。
| 項目 | チェック |
|---|---|
| 売上高物流比率を毎月確認している | □ |
| 積載率や配送ルートを見直している | □ |
| 過剰在庫を把握している | □ |
| 作業時間を数値で管理している | □ |
| 返品率を管理している | □ |
| システムを連携している | □ |
| 物流体制を定期的に見直している | □ |

3項目以上当てはまらない場合は、物流コストを見直せる余地がある可能性があります。まずは優先度が高い項目から改善を進めることがおすすめです。
まとめ
物流コストが高くなる背景には、燃料費や人件費の上昇だけでなく、自社の物流体制や業務フローが影響しているケースもあります。
まずは売上高物流比率を確認し、物流費全体を可視化することが改善への第一歩です。そのうえで、輸送コスト、保管コスト、作業コスト、返品対応、物流体制、システム連携を順番に見直すことで、課題の優先順位が明確になります。
物流改善は、単にコストを削減する取り組みではありません。配送品質や在庫精度、業務効率の向上にもつながるため、企業全体の利益改善にも寄与しやすくなります。
一度にすべてを変える必要はありません。まずは本記事で紹介した7つのポイントをチェックし、自社の物流コストを可視化するところから始めてみてはいかがでしょうか。
