カスタマーサクセスは顧客の成功体験を支援し、自社の利益を増やしていく概念です。
サブスクリプション型サービスの浸透にともない、自社サービスを継続してもらう手法として取り入れる企業が増加しています。しかし、カスタマーサクセスに興味はあっても以下のような疑問をお持ちの人もいるでしょう。
- カスタマーサポートと何が違うのか?
- カスタマーサクセスを最大化するにはどうしたらいいのか?
この記事ではEC事業を運営している人、今から立ち上げようとしている人向けに「カスタマーサクセス」の概略や成功ポイント、よくある質問などを紹介します。
カスタマーサクセスにおける悩みや疑問を解決し、顧客信頼度や売上増加に繋げていきましょう。
カスタマーサクセスとは何か
カスタマーサクセスとは、自社サービスや製品によって「顧客の成功体験を実現する」ことです。
具体的には、自社サービスによってクライアント企業の利益を上げたり、顧客に大きな満足感を与えてリピートに繋げたりすることを指します。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは似た言葉ですが、意味や目的が異なります。
以下にその違いをまとめました。
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
目的 | 顧客の成功 | 課題・問題の収束 |
態度 | 常に能動的 | 受動的 |
KPI | 売上増加・解約率減 | 対応(処理)件数・満足度 |
ゴール | 顧客の成功体験 | 課題・問題の収束 |
どちらもカスタマーに対する支援ですが、カスタマーサクセスの目的は「顧客の成功」であり、より能動的な支援を行う点が特徴です。一方、カスタマーサポートは「課題・問題の収束」が目的であり、顧客から問い合わせがあった後に対応します。
カスタマーサクセスは顧客のニーズに耳を傾け、先回りして支援することで顧客を成功へ導きます!
カスタマーサクセスが普及した背景
カスタマーサクセスが普及した背景には、ビジネスモデルの買い切り型からサブスクリプション型への変化があります。
三菱UFJリサーチが行ったサブスクリプションの調査によると、サブスクリプションサービスを認知している人のうち、全体の5割以上が利用経験ありと回答しています。また、若い世代ほど利用率が高く、今後もサブスクリプションサービスは増えていくでしょう。
サブスクリプション型のビジネスは、契約し続けてもらうためにサービス提供側(企業)から積極的に働きかけていく必要があります。カスタマーサポートのように受動的な態度では解約が増えてしまいサービスが拡大しないため、カスタマーサクセスが普及したのです。
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「サブスクリプション・サービスの動向整理」
カスタマーサクセスの役割
カスタマーサクセスの役割は、「顧客を成功に導き、自社の売上を拡大すること」です。その役割をより俯瞰的に理解するために、まずは「The Model」について解説します。
サブスクリプションサービスの大半は、SaaS(Software as a Service)として提供され、そのビジネスモデルは「The Model」が基本といわれています。
※Saas:Software as a Serviceの略称で、企業が提供するソフトウェアサービス(サーバー)のこと。
The Modelは営業業務を細分化し、各部門で連携するフレームワークであり、下図のプロセスに分かれています。
カスタマーサクセスはマーケティング、インサイドセールス、営業を経た最後のプロセスにあたり、「顧客を成功に導き、自社サービスを継続利用してもらう=自社の売上を拡大する」という役割を担っているのです。
カスタマーサクセスの目的
カスタマーサクセスの目的は、LTVの最大化です。
LTVとは、Life Time Valueの略称で「顧客生涯価値」を意味します。一人もしくは一社の顧客が、自社サービスを利用し始めてから終了・解約するまでにどれだけの利益をもたらしたかを算出する指標です。このLTVの指標は、企業がマーケティングを行ううえで重要な経営判断材料にもなります。
買い切り型は購入したときがLTVのタイミングですが、サブスクリプション型はユーザーが継続し続けることでLTVが増加します。よって、カスタマーサクセスで解約率をなるべく低くし、利益を最大化させていくのです。
以下で、LTVを最大化させるためにどんな取り組みを行うのか紐解いていきましょう。
取り組み1:継続率を維持
先述しましたが、LTVを最大化するために継続率の維持は必須です。顧客のニーズに沿わない製品やサービスを提供し続けると、継続率が悪化し売上減に繋がりかねません。
継続率を維持するためには、ユーザーがサービスや製品を十分に利用できている、もしくはユーザーがサービスや製品に満足感を抱いている必要があります。そのためにキャンペーンやプロモーションといったさまざまな施策を実施します。
取り組み2:アップセル・クロスセル
次の取り組みは、アップセル・クロスセルです。まずはそれぞれの単語の意味を確認しましょう。
アップセル:既存顧客に対し、現在使用しているサービス・製品より上位のものを提案し、購入してもらうこと。
クロスセル:顧客がすでに購入しているサービス・製品に加え、それに関連した自社製品を追加購入してもらうこと。
アップセル・クロスセルを増やすと顧客単価が上がり、LTVのさらなる向上に繋がります。アップセル・クロスセルを実現するには、顧客がサービス・製品に満足している状態を作り出し、最適なタイミングで最適な提案を行うことが大切です。
取り組み3:サービス改善
ユーザーのニーズをくみ取り、改善を心がけることも重要です。
サービス改善はカスタマーサクセスにおいて、顧客満足度や新規獲得率を高めることに直結します。例えば、ユーザーが日ごろから改善してほしいと思っているサービスがあるとしましょう。そのサービスを改善しないまま放っておくと、顧客満足度が下がり、より使い勝手の良い他社に乗り換えられてしまいかねません。
LTV最大化のため、サービスを定期的に見直し改善することが大切です。
カスタマーサクセスの流れ
ここからは、カスタマーサクセスの流れを見ていきましょう。カスタマーサクセスは主に4つの段階に分かれています。
オンボーディング(利用促進)
オンボーディングは顧客がサービス・製品をスムーズに利用開始し、使いこなせるように導く段階です。顧客がサービスや製品を使いこなせないと継続率が下がるため、利用開始時のサポートが大切です。
アダプション(サービス・商品の定着)
アダプションは、サービスや製品の導入後、利用を定着させていくフローです。顧客が定常的に使用し続けるようになれば、継続率の維持が可能になります。
価値の実感
アダプションで顧客がサービス・製品に感じた価値をさらに実感してもらう段階です。この段階で、アップセル・クロスセルの施策を行います。
リニューアル
リニューアルは契約更新のことです。この段階までに顧客の成功体験を積み重ね、サービス・製品を再購入してもらいます。
カスタマーサクセスの業務内容例
この章では、カスタマーサクセスの業務内容について詳しく説明します。
顧客との面談やヒアリング
最初の業務内容は顧客との面談やヒアリングです。面談を通じてサービス・製品の導入を促し、活用方法を支援します。
例えばオンボーディングの段階で、顧客が商品やサービスをうまく使えないと不満が溜まり、サービスの解約に繋がってしまいます。
しかし定期的に面談を実施すれば、サービスの解約を防ぐことが可能。面談で顧客の不満を察知し、導入サポートができます。顧客がサービスや製品を使いこなせるようになれば、顧客満足度が上昇し、継続率が上がるでしょう。
また、面談では顧客のニーズやサービスの気に入っている点を聞き出すことも可能です。ヒアリングによって、サービス改善のヒントも得られるのです。
顧客支援としてのユーザーコミュニティ運営
顧客支援の延長として、ユーザーコミュニティの運営業務も発生します。
ユーザーコミュニティの主な役割は、「製品の活用法」と「成功事例の学び」です。ユーザー同士の継続的なコミュニケーションから、ニーズや新サービスのアイデアを得ることができます。
さらに、コミュニティ内でユーザーが成功事例や課題を共有したり、感想を伝え合ったりすることで仲間意識も生まれます。結果、顧客ロイヤリティが高まり、継続率を維持しやすくなるのです。
また、コミュニティで既存ユーザーがサービスの良さを他のユーザーに伝えてくれるほうが、企業側が伝えるより響きやすいという利点もあります。
とはいえ、ユーザーコミュニティの運営には労力がかかります。最初は顧客同士の勉強会や情報交換会などから始めてみるのも良いでしょう。
サービス継続率を測るヘルススコアチェック
ヘルススコアとは、顧客のサービス継続率を測る指標のことです。
まずは顧客の利用状況を把握するために、以下の内容をチェックします。
・サービスのログイン回数
・ログインの人数
・ログイン時間
・アンケート回答内容 など
これらのデータを分析し、顧客のヘルススコアの高さによって対策を講じます。
以上、3つの業務内容例を紹介しました!カスタマーサクセス業務は多岐にわたり、他にもさまざまなものがあります。
カスタマーサクセスの成功ポイント
この章では、実際にカスタマーサクセスを成功させるためのポイントを紹介します。
データの蓄積・分析・活用
カスタマーサクセスでは、データの活用が重要です。
(データ活用のメリット例)
・自社ビジネスを客観視し、実態に合ったKPIを設定できる
・数値の分析により、顧客が潜在的に求めているものを把握できる
しかし、顧客数が多くなればなるほどデータ管理は難しくなります。その場合は、顧客データを一元管理できるツールの導入も検討しましょう。
顧客に合わせた対応を行う
カスタマーサクセスには、タッチモデルというLTVを4つに分けたグループが存在します。顧客をハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ・コミュニティタッチに分け、グループに合わせた対応をすることで適切な支援を行えます。
各グループの概要とサポート例は以下の通りです。
ハイタッチ
最も数の少ない層。「大口の発注」「サービス利用期間が長い」など、LTV貢献度が高い顧客や知名度の高い顧客を指します。
個別で対応し、機能のカスタマイズやコンサルティングなど手厚いサポートを実施します。
(サポート例)
・対面による個別支援
・顧客の状況把握とそれに見合った継続的な支援
・機能のカスタマイズやコンサルティング
ロータッチ
ロータッチは、ハイタッチほどではないものの利益貢献が見込める顧客層です。
個別対応はせず、「勉強会」や「セミナー(ウェビナー)」など、ある程度まとまった人数を集団支援します。
(サポート例)
・パッケージ型の集団支援
・定期的な状況把握とサポート
・顧客を集めてのワークショップなど
テックタッチ
最も多い顧客層で低単価のサービスを利用している、もしくは利用期間の短いグループです。
「メール配信」や「Webサイト上に操作動画を用意する」など、テクノロジーを活用した支援がメイン。自社のリソースを多く割かない点が特徴です。
(サポート例)
・操作、機能説明の動画を用意する
・メルマガなどで情報配信する
・チュートリアルを用意し、顧客自身での解決を促す
コミュニティタッチ
顧客のLTVに関係なく、ユーザー間で交流する「コミュニティ」を起点とした支援を実施します。
ユーザー間で問題の解決法やサービス・製品の新たな活用法を見出せるため、リソースを軽減できます。
(サポート例)
・質の良いユーザーコミュニティ運営
・ユーザー交流会などのイベント実施
修正しながら実践する
最後のポイントは、修正しながら実践することです。
カスタマーサクセスには、定型フローがありません。イレギュラーが多く、思った通りに進まないこともあるでしょう。
最初から完璧を目指さず、プロセスを細切れにして短くKPIを立てることが大切です。
データを確認しつつ、少しずつ顧客との関係を築いていきましょう!
カスタマーサクセスのFAQ(よくある質問)
最後に、カスタマーサクセスのFAQ(よくある質問)についてお答えします。
顧客が提案を聞いてくれないときは?
顧客が他の業務にリソースを圧迫されて、動けないケースが大半です。この場合は、顧客の根本的な課題が何なのかを割り出すため、深いヒアリングが必要となります。ヒアリングしたうえで、自社の提案が顧客の課題解決にどう役立つのかを伝えましょう。
他部署との連携がうまくいかないときは?
社内との連携は、カスタマーサクセス側から動くことが大切です。重要な内容は何度も伝えるようにしてください。
他部署とスムーズに連携するために、
・部署ごとの役割を明確にする
・各部署のKPI設定を行う
・親和性の高いマーケティング部門とは、定期的に情報交換する
などを実施しましょう。
施策は考えたが、実行するリソースが足りないときは?
良い施策を考えたとしても、リソースが足りず実践できなければ意味がありません。
そんなときは施策の考案までを自社で行い、実践は外部委託するのも手です。プロに任せることでより効率的な顧客サポートが実現し、自社スタッフはコア業務に集中できます。
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カスタマーサクセスのまとめ
今回は、カスタマーサクセスについて解説しました。
ビジネスモデルがサブスクリプション型へ移行した今、カスタマーサクセスはビジネスの成功になくてはならない存在となりました。しかし、限られたリソースの中、カスタマーサクセス業務の全てを担うことは難しいかもしれません。
そんなときは業務のアウトソーシングも考えてみてはいかがでしょうか?外注により自社の負荷を減らせば、余裕を持ってカスタマーサクセスに取り組めるでしょう。
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