近年、海外市場におけるサブスクリプションサービスは、食品を扱う企業に新たなビジネスチャンスを生み出しています。
ただし、海外への進出はブランドの認知や販売機会の拡大が期待できる一方、国内とは異なる物流やコストの問題への対処も必要です。
本記事では、海外向け食品サブスクの基本情報や立ち上げステップ、課題とポイントを詳しく解説。海外市場の展望や立ち上げ時に何に注意すべきかなどが分かります。ぜひ参考にしてください。
海外向けの食品サブスクとは
海外向けの食品サブスク(サブスクリプション)とは、日本国内の食品を選りすぐり、世界各国のユーザーへ定期的に届けるサービスのことです。
海外の消費者は毎月新しい味や日本文化を体験でき、日本の事業者は海外市場でのブランド認知と販売機会を拡大できるメリットがあります。
海外市場での食品サブスクの展望
まず、海外市場における食品サブスクの展望を確認していきましょう。
出典:Recharge Payments「State of Subscription Commerce Report 2022」のデータを基に作成
出典:Insiderintelligence.com「US Subscription Ecommerce Sales, 2019-2024」のデータを基に作成
Recharge社、Insider Intelligence社の調査によると、世界のサブスクリプション加入者の26.7%が食品・飲料に関するサービスを利用しています。中でも米国はサブスクリプションEC市場の規模が年々拡大しており、2024年には430億ドルを突破すると予測されています。
さらに、農林水産省のデータによると、日本の農林水産物・食品の輸出額は2022年に過去最高の1兆4,140億円を記録。サブスクに向いている加工食品の輸出額は約5,051億円で、前年と比べ9.9%増加しています。
これらのデータから、日本食品のサブスクは海外で需要があり、市場の拡大も期待できることが分かります。
出典:日本政策金融公庫「各国における越境ECの状況」
農林水産省「2022年1ー12月 農林水産物・食品の輸出額」
海外向け食品サブスク事例
引用:https://ichigo.com/
次に、すでに成功している海外向け食品サブスク事例をご紹介します。
ICHIGOは、日本のお菓子や雑貨を世界各国に届けるサブスクリプションサービスを展開しています。来日した外国人がお菓子をたくさん購入していることに着目し、2015年にお菓子の詰め合わせ商品のサブスクを開始しました。
その結果、2020年に前年の売上を3倍に伸ばす急成長を遂げ、2021年には年商40億円を達成。現在は世界180ヵ国でサービスを展開し、会員数は200万人を超えています。
ICHIGOのサブスクサービスの特徴
ICHIGOの主力商品は、日本の主要なお菓子を詰め合わせた「TOKYO TREAT(トーキョートリート)」と和菓子の詰め合わせボックス「Sakuraco(サクラコ)」です。
TOKYO TREATは、日本のスーパーやコンビニで販売している人気のお菓子やドリンクを取り扱っています。同商品の特徴は季節限定ボックスを展開している点、そしてインパクトのあるお菓子を入れている点です。これらの特徴により、20代から30代の若年層の人気を集めています。
一方、Sakuracoは和菓子と日本茶を詰め合わせた商品で、購入者層はTOKYO TREATよりも年齢層が高い30代から60代。月ごとにテーマを決め、それに沿った老舗メーカーの和菓子を提供しています。
Sakuracoは発売後3ヵ月で売上が170%増加。地方自治体と連携し、特産品を使用した和菓子を詰め合わせた自治体公式ボックスも販売しています。
ICHIGOの商品が海外ユーザーから支持されている理由は、以下の2つです。
- 日本人が日本の商品を選んでいる
海外の同様のサービスは偽物が入っている場合が多いが、ICHIGOの商品は本物の日本のお菓子を取り扱っている。 - マーケティングは外国人が担当している
ターゲットでもある外国人がマーケティングすることで集客効果が高くなる。
海外向け食品サブスクを立ち上げるステップ
この章では、海外向けの食品サブスクを立ち上げる6ステップを解説していきます。
1.ターゲット・商品選定
最初に行うのはターゲットおよび商品選定です。
まず、サービスを展開予定の国や地域のユーザーの需要と、市場に受け入れられる販売価格を調査します。調査の際は国ごとの文化や習慣、購入行動を分析しましょう。年齢層、家庭環境、収入水準、使用言語などの要素を定め、商品の選定に反映させます。
商品は日持ちするものを選ぶことがポイントです。海外への発送は日本国内よりも到着が遅く、場合によっては3週間ほどかかってしまうこともあるためです。
2.法規制の確認
次に法規制の確認をします。選定した地域によっては輸出入が禁止されている場合もあるので注意が必要です。取り扱う商品がその地域の規制品に該当していないかを事前に確認しておきましょう。
その他、関税がどれくらいかかるかも、この時点で調べておくと安心です。事前に把握しておくことで、利益率をより正確に計算できます。
3.仕入れと物流計画
法規制の確認後は、仕入れと物流計画を行います。
最初に、供給元との契約および必要な商品の仕入れ先を決定します。食品のサブスクリプションの場合、供給の安定性と食品の安全基準を満たしているかどうかが特にポイントとなります。
次に選定するのは、国際配送のパートナーです。配送会社を選ぶ際は以下の点に注目してみてください。
- 配送スピード
食品の鮮度を保つため、速やかに配送できる会社を選ぶ - 配送エリア
配送会社によって得意なエリアが異なるため、自社のターゲットエリアとマッチした会社を選ぶ - 重量や荷量
荷物の重量やサイズに応じた配送コストを考慮する
4.販売プラットフォームの選択
続いて、販売プラットフォームを選択します。海外向けのプラットフォームは以下の3つになります。
- 自社サイト
構築や運営に時間と労力がかかるが、ブランドの独自性を強調できる。すでに日本語のECサイトがある場合は多言語化して対応 - 海外対応ECモール
既存の集客力を利用でき、市場進出がスムーズ。他のプラットフォームよりも難易度が低い - 現地のECモール
海外対応ECモールと同じく既存の集客力を利用できるが、現地の法的な手続きも必要になるため、難易度が高い。
ターゲットとのマッチングや実現の難しさなどを踏まえて検討しましょう。
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5.テスト
販売プラットフォームが決まり、サイトの準備ができたらテスト発送を行います。テストユーザーへ実際に発送し、フィードバックを受け取りましょう。商品が砕けていないか、梱包サイズが適切かなどを確認し、問題がある場合は改善します。
このとき、販売プラットフォームのテストも同時に行い、本格的なオープンの前に不便な部分を調整してください。
6.出品とプロモーション
最後に行うのは、出品とプロモーションです。SNSやデジタル広告、インフルエンサーマーケティングなどを活用しましょう。
このときも重要なのは、国ごとの文化やターゲットに合わせたプロモーションを行うことです。例えば中国は、WeChatやWeiboでのPRが一般的であり、インフルエンサーマーケティングが有効だといわれています。
その他、キャンペーンや割引の企画を立てることも認知度の向上に効果的です。
海外向け食品サブスクの課題
次に、海外向けの食品サブスクリプションで取り組むべき課題について説明していきます。
適切な在庫管理
サブスクリプションサービスは加入者数が常に変動するため、適切な在庫管理が欠かせません。
- 需要予測
- 安全在庫の設定
- 商品供給元との連携など
これらの方法により、過剰在庫や品切れを避けてサービスの質を保ちましょう。
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商品の品質保持
次の課題は、商品の品質保持です。食品は賞味期限・消費期限を厳格に管理しなければなりません。また、チルド品や冷凍品を取り扱う場合は温度管理も必要です。
不適切な管理状況下では食品の鮮度が損なわれ、顧客の信頼も失ってしまいます。食品管理を徹底し、ユーザーの安全とサービスの信頼を守ることが大切です。
梱包ノウハウが必要
海外向けの食品サブスクでは、梱包ノウハウも重要です。
適切な梱包がなされていないと、顧客の元へ届いたときに食べられる状態ではなくなっている可能性があります。海外は商品の扱いが雑なことが多いためです。
そうならないように、梱包には特別な段ボールや資材の使用、適切なラベリング、丁寧な作業が求められます。特にアソート(詰め合わせ)梱包はミスが出やすいので、細心の注意が必要です。
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コスト管理
続いて、コスト管理も取り組むべき課題の一つです。
海外向けのサービスは、為替変動によって価格が変わる場合があります。その点を考慮したうえで、適切な価格を設定しなければなりません。
また、冷凍宅配や遠隔地への配送はコストが高くなります。遠隔地や特殊な配送条件には追加料金を設定するなど、コストと利益のバランスをとりましょう。
人材確保
サブスクリプションサービスの管理には、多岐にわたる業務が伴います。自社のみで対応することが難しい場合は、新たなスタッフの採用やアウトソーシングの利用も検討しましょう。
アウトソースできる業務として、カスタマーサポートや物流があります。新たにスタッフを採用するよりも効率的であり、顧客満足度の向上にもつながります。
特に物流の代行は、先述した梱包や在庫管理の課題を達成できる有効な手段です!
特に物流の代行は、先述した梱包や在庫管理の課題を達成できる有効な手段です!
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海外向け食品サブスクのポイント
最後に海外向け食品サブスクの成功ポイントをご紹介します。
多様な決済を用意
海外向けのサブスクリプションサービスには、多様な決済方法を用意しましょう。海外ユーザーは日本と異なる支払い方法を好む傾向があるためです。
例えば、Paypalや各国固有のQRコード決済など、様々なオプションを用意しておくと安心です。ターゲットに合わせた決済方法を提供し、利便性を高めることで商品購入へつなげていけます。
サイトの多言語化
次の成功ポイントは、サイトの多言語化です。
現在はブラウザの翻訳機能により、多言語化されていない外国のWebページも読むことができます。とはいえ、ターゲット市場の言語を使用するほうが、ユーザーは安心感を得られるはずです。特によく閲覧される商品説明やFAQ、利用方法ガイドは多言語化することをおすすめします。
また、ユーザーの好みに合わせて、Webサイトのカラーやデザイン、写真なども調整しましょう。顧客に親しみやすい環境を提供することで、ブランドの魅力を高められます。
物流のトラブル対策
海外発送は国内配送に比べてトラブルが起こりやすいため、物流対策もポイントとなります。
- 長距離輸送や積み下ろし時の衝撃に耐えうる梱包資材の使用や、詰め合わせ方法の実践
- 商品の紛失を防ぐための追跡システムの導入 など
さまざまな予防策を施しておけば、トラブルが発生しても素早く原因を特定、対応できます。
さまざまな予防策を施しておけば、トラブルが発生しても素早く原因を特定、対応できます。
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海外向け食品サブスクのサポートはオーダー!におまかせ
オーダー!は、倉庫業務から加工業務まで幅広く対応しています。モノの保管や発送はもちろん、検品作業やシール貼りなど、細かなニーズにも応えることが可能です。
特に海外向け発送に関しては、文化や法律の違いに対応したノウハウを持ち、越境ECを展開する企業様をサポートしています。オーダー!のサービスは海外向け食品サブスクの課題・ポイントである、人材確保と物流のトラブル対策に有効。海外市場への進出をより円滑に進められます。
【オーダー!のメニュー紹介】
- 海外向け発送
越境ECを展開されている企業様向け、国際郵便(EMS)を利用した海外への発送代行 - ECサイトの商品 在庫管理・発送
月1件から何万件までの出庫を幅広く対応 - 個人事業主向け発送
一般的な宅配配送費用で発送可。 - カスタマイズサービス
化粧箱の組立、複数種類のパターンでアイテムを組み合わせて詰め込み、梱包など - 検品代行
抜き打ち検査など要望に応じて対応 - 物流業務プロセス見直しコンサルティング
物流のプロとしてお客様の倉庫の現地調査を行い、現状の問題の洗い出しや課題のとりまとめを実施 - 物流システム導入
独自システムの導入支援 - 内職代行
封入、ラベル貼り、小さなぬいぐるみの検品検針作業など
海外向け食品サブスク・まとめ
本記事では、海外向けの食品サブスクリプションサービスについて解説しました。本文で述べた成功のポイントは次のとおりです。
- 多様な決済
- サイトの多言語化
- 物流のトラブル対策
この他、在庫管理や梱包ノウハウなど取り組むべき課題も複数あります。全ての課題に取り組むことが難しい場合は、アウトソーシングの利用を検討してみてください。
本記事の内容を参考に海外向けの食品サブスクの理解を深め、効率的にビジネスを展開していきましょう。