近年、大きく成長し続けている越境EC。国内市場の停滞にともない、EC事業においても海外市場に目を向ける企業は多くなっています。

とくに近年の新型コロナウイルス感染症拡大によるEC利用者の増加、円安の影響などによって、海外からの日本製品に対するニーズは高いと期待できます。

しかし、ECとはいえビジネスを海外展開するとなると、海外の消費者をターゲットにスムーズに進められるのか、具体的に何を準備すればよいのか、海外への出荷・配送がしっかりできるのか……など不安も多いのではないでしょうか。

本記事では、越境ECのメリットとともに、海外に向けたEC事業を始めるにあたって必要な準備や出店方法、注意点などを解説します。

新たな市場に向けたアプローチで海外ユーザーを獲得するため、越境EC事業にかかわる重要なポイントを押さえておきましょう。

中国への越境ECについては以下の記事を参考にしてください。

越境ECとは

越境ECとは、国際的な電子商取引(EC)、つまり海外の消費者に向けたオンライン販売取引のことです。日本においても越境EC市場は年々拡大しており、近年では海外向けECの利用率も増加傾向にあります。

以前から日本製の商品は高品質で海外からの需要が高くなっていましたが、昨今は、とくに新型コロナウイルス感染症拡大や円安の影響もあり海外向けECは活性化しています。

越境ECの利用状況
出所:日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部「2021年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」

2021年度に日本貿易振興機構(ジェトロ)がおこなった調査によると、ECを利用・検討している企業のうちの約7割が海外向け販売を活用(または検討)しており、その具体的手段として越境ECを挙げる割合が半数近くと高い値になっていました。

近年の国内市場縮小にともない、規模の大きな海外市場を見据えたEC導入を検討している企業が増えていることがうかがえます。

日本の商品は、家電、衣料品、化粧品から、紙おむつや粉ミルクといったものまで海外での人気が高いため、コロナ禍という側面もあって越境ECが急成長しているんですね。

越境ECの市場規模

越境ECの市場規模
出所:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書」

2022年度の経済産業省調査によると、世界の越境EC市場規模は、2019年時点で7,800億USドルと推計され、年平均30%の成長率で2026年には4兆8,200億USドルにまで拡大すると予測されています。

日本・米国・中国の3ヵ国間のみでみると、2021年の消費国としての越境EC市場規模は日本が3,727億円、アメリカが2兆409億円(うち日本からの購入額は1兆2,224億円)、中国が4兆7,165億円(うち日本からの購入額は2兆1,382億円)となっており、各国とも前年と比べて市場規模は伸びていることがわかりました。

つまり、日本の越境EC市場は、対中国・米国だけでも約3.3兆円という大規模市場となっているのです。中国や米国以外の国においても日本製の商品は需要が高いことから、市場規模の拡大はさらに増加すると考えられます。

今後も年平均成長率30%が見込めると予測すると、日本の中国・米国向け越境EC市場は、5年後には12兆円以上になる可能性があるということですね!

参考:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書

越境ECのメリット

越境ECのメリット

このように世界的に拡大し、今後も成長が見込まれる越境EC市場ですが、そのメリットを具体的に挙げてみましょう。

商圏を拡大できる

人口減少や、長く続く不景気によって日本国内の市場は縮小しています。一方で、スマートフォンの普及拡大により、誰もがインターネットで簡単に世界全体にアクセスできるようになり、越境ECに参入しやすい環境も整ってきています。

視野を日本国内から海外に広げることで新たなターゲット層に向けてアプローチでき、海外ユーザーを獲得することで商圏や売上の拡大が期待できます。

海外出店よりも低コスト

海外で出店するには莫大な費用や多くの人材が必要になり、コストもリスクも高くなります。しかし、実店舗を持たずに海外の市場にリーチできる越境ECであれば、現地で店舗を運営するより、はるかに低コスト・低リスクで始められます。

日本での販売件数や売上が伸び悩んでいても、海外にはまだまだ自社商品のニーズがあるかもしれません。越境ECなら、いろんな国に拠点を置かなくても、ターゲット層を世界に広げることができるんですね!

越境ECの始め方

次に、実際に越境ECを始めるための具体的な準備や流れについてご紹介します。

商品の準備

商品の準備

まずは海外向けに販売したい商品を選定することが必要です。日本製の商品は品質や衛生面において海外でも人気が高いですが、全ての商品に需要があるとは限りません。

対象となる国のニーズに沿った商品をピックアップして、ある程度商品数を絞っておくことも大切です。取扱商品を選定したうえで、在庫を確保しておきましょう。

現地リサーチ

現地リサーチ

日本と海外では法律や規制、文化や商習慣などが異なるため、十分なリサーチが必要です。関税や輸出入、国際輸送の可否について、その他、現地で規制がないかといったことも確認しておきます。

また、場合によっては現地に合わせたローカライズなどが必要になる可能性もあります。もし自社で扱う商品がターゲット国ですでに売れ筋となっている場合、現地商品との差別化を図る必要があります。

出店方法を決める

越境ECの事業モデルとしては、主に以下の2パターンが考えられます。

①   自社サイトを構える
②   越境ECモールに出店する

それぞれの特徴やメリット・デメリットを踏まえつつ、自社の予算や目的に合った出店方法を選ぶことが重要です。

①自社サイトを構える

自社サイトを構える場合、自由度が高く、売上手数料や年間維持費がかからないというメリットはある反面、知名度がない企業の場合は自社で集客をおこなう必要があります。

また、多言語化や海外通貨での決済、カスタマーサービス、発送手続きなど、すべてにおいて自社での対応が必要となるため、難易度はかなり高くなります。

そのほかのデメリットとして、初期費用や導入コストがかかること、自社でアップデート対応の必要があることなども挙げられます。

②越境ECモールに出店する

ECモールに出店する場合、基本的に出店時の初期費用や売上に応じた手数料などが必要となります。

自社サイトより集客に優れ、自社でECサイトを構築する手間がかからない一方で、出品数に上限があったり、独自性のあるページ設計ができなかったりと、自由度が低く、出店料や販売手数料などがかかるというのがデメリットといえるでしょう。

代表的な越境ECモールの特徴は以下のとおりです。

Amazon

アメリカ・シアトルに拠点を置く、世界一有名なECサイト。手数料が割高といったデメリットもある一方、集客力に優れ、売上レポートや売上予測などの分析も可能。

Tmall Global天猫国際

中国EC最大手・天猫が運営。出店基準を高くすることで偽物や非正規品を排除する本物志向。中国国内での法人アカウントの取得、保証金や年会費、販売金額に応じた手数料が必要。

JD.com(京東商城)

中国EC2番手の直販型越境ECモール。日本製品専門サイトが設けられていることや、ヤマトホールディングス傘下企業との提携により、日本企業にとって出店がしやすい。

ebay

アメリカを拠点に世界約190ヵ国で運営される世界最大のオークションサイト。法人は、通常サポート以外にも販売枠の拡張や各種設定、トラブル時の日本語対応などのサポートが受けられる。

Lazada

シンガポールを拠点とした東南アジアのAmazonと呼ばれるECサイト。Amazonのように、自社倉庫を活用した幅広い品揃えが特徴。

Shopee

東南アジア・台湾最大級の小口商品を中心としたECサイト。必要なのは販売手数料・決済手数料のみで初期費用・維持費用などは不要。日本語でのサポートが整っている。

自社サイトでも、ECモールサイトへの出店でも、それぞれにメリット・デメリットがあるので、慎重に考える必要があるのですね。

越境ECの注意点

ここからは、実際に越境ECを検討するにあたっての注意点や、押さえておきたいポイントをご紹介します。

配送料・手数料が高額

基本的に国内向けの配送と比べて配送料は高いのが前提です。越境ECサイトに出店する場合は各種手数料などもかかりますまた為替の変動なども影響するため、これらを念頭に置いて価格設定をする必要があります。

配送料を考慮して価格で勝負できない分、商品の機能やブランディングで競合との差別化を図るなどの戦略も不可欠となってきます。

法律や関税による規制

ターゲット国によっては、輸出入に規制がかかる商品や国際間輸送できない商品などがあるため、各国の関税HPなどで自社商品についての取り扱いを確認する必要があります。

中でも食品、医薬品、化粧品、電子機器などはその傾向が高く、とくに化粧品は輸入禁止の成分などがあったり、アルコール配合割合が高かったりすることで航空輸送できないことも多いため、必ず事前確認を徹底しましょう。

梱包・配送にノウハウが必要

越境ECの配送方法としては、EMS(国際郵便)などの消費者への直接配送が一般的ですが、日本国内に比べて海外は荷扱いがかなり乱雑になることもあります。

過去には、中国に到着・配達する際に長方形の段ボールが潰れて半分になっていたことや、角がなくなり丸くなっているといった事例も報告されています。

そのため、梱包資材に固めの段ボールを使用したり緩衝材を詰めたりするなど、商品が破損しない工夫が必要ですが、一方で、梱包資材を頑丈にしすぎて資材費が高くなったり、重量が大きくなることで配送コストが上がったりするという課題もあります。

このほか、以下のようなトラブルも実際に発生しています。

  • 梱包材や梱包方法によっては関税で止められたり、商品が届けられなかったりする恐れがある
  • EMSは100g単位で送料が変わるため、強度を保ちつつ軽量化することが必要

こうしたトラブルを防ぐためにも、梱包・配送や緩衝材・資材にかかるコストの最適解をノウハウとして持っている、経験豊富な業者をパートナーに選ぶことが重要です。

納期への対応

国内への配送は数日で可能ですが、海外への配送の場合、距離はもちろん関税手続きが発生するため届くまでに数週間など、かなりの時間がかかります。

とくに、中国の「独身の日」のようなイベント日には出荷が通常の数十倍になることも考えられるため、納期に余裕をもって対応する必要があります。

また、梱包や各種書類の貼り付けも配送先が国内か海外かによって、かかる手間がまったく違います。たとえば国内配送なら1,000件を4時間程度で完了できるところ、海外配送となると1日で終わらないこともあります。

そのため、梱包・配送の処理を円滑に進めるノウハウは、納期への対応においても重要な鍵となるのです。

越境ECはパートナー選びが重要

このように、国内向けの販売と違って、越境ECには多くの課題やトラブルが懸念されます。

国ごとの規制への対応や物流面のノウハウなどさまざまな知識やスキルが必要となるため、ハードルが高いと感じるかもしれません。

そこで、こうしたノウハウをすでに持っているサービス業者の活用、つまり越境ECにかかわる業務を外注するのも一つの方法です。

円滑に越境ECを始めるために、それらに精通した実績のあるパートナーを選ぶことは、海外へのビジネス展開において大きな強みになります。

越境ECを始めるには、必要な準備や懸念事項がたくさんあるということですね。自社だけで対応するのが不安なときは、一緒に伴走してくれるパートナーがいると安心です!

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越境ECのまとめ

今後も年平均成長率30%の勢いで発展が見込まれる越境EC市場。日本製の商品価値は海外でも高く評価されており、海外ユーザーの獲得は企業成長においても重要な戦略となります。

自社で海外向けECサイトを構築するにしても、越境ECモールへ出店するにしても、それぞれにメリット・デメリットがあります。とくに自社サイトの場合は、多言語化や決済、梱包・配送など、あらゆる面で自社での対応が必要となります。

自社だけでの対応が難しいと感じた場合は、ぜひ外注も視野に入れてみてください。
ITや物流面でのノウハウなど、越境ECに必要な知識とスキルを備えたスペシャリストたちのサポートを受けることで、円滑に海外向け販売をスタートできます。

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