リピート商材として人気があり、近年は定期購入需要も拡大している健康食品

しかし、健康食品を扱う以上、EC事業者には以下のような課題も生まれます。

・商品の特性上、倉庫での品質管理が難しい
・細かい作業が多かったり、業務がマニュアル化されず物流コストが高い

自社だけでは管理~配送に対応しきれないという悩みを抱えたEC事業者向けに、倉庫での温度管理から物流品質の高め方を解説します。

健康食品の物流コストが上昇しがちな理由

健康食品の物流コストが上昇しがちな理由

健康食品で物流コストが上昇しがちな代表的な理由は以下の通りです。

さらに、近年の健康志向の高まりやEC市場の拡大により、取り扱う商品の種類や数が増加しています。これに伴い、在庫管理や出荷業務が複雑化し、物流コストの増大につながっています。また、法規制の強化や消費者の安全意識の高まりにより、品質保証に関するコストも上昇しています。

品質管理が難しい | 常時空調かつロット管理が必須

健康食品は、高温保管が不可の場合が多く、常時空調や直射日光が当たらないことが必須。また、商品の特性上賞味期限・消費期限・数量・ロット管理なども不可欠で、倉庫での細かな在庫管理が必要です。

例えば、購入者の手元に商品が届いた際、賞味期限・消費期限が近いとクレームに繋がるだけでなく、健康問題に発展しかねません。

賞味期限・消費期限から3ヵ月をきった在庫は出荷しないよう徹底的に管理をしましょう。

さらに、健康食品販売は「表示ガイドライン」の規定により、ロット管理をすることが義務付けられています。

ロット管理は万が一、異物混入などが原因で商品回収が必要になった際、該当のロットNOの商品を速やかに回収できるためのルール。しかし、その管理が現場の人間の負担に繋がることもあります。

近年では、IoTデバイスや温湿度センサーを活用したリアルタイムの品質監視システムが普及しつつあります。これにより、温度や湿度の変化を即座に検知し、品質劣化を未然に防ぐことが可能です。また、バーコードやQRコードを用いたデジタルロット管理システムを導入する企業も増えており、人的ミスの削減と業務効率化が進んでいます。

「温度別」に倉庫を分ける必要もある

健康食品の倉庫では温度管理を徹底する必要があります。

「温度別」に倉庫を分ける必要もある

健康食品の場合、品質が変化しにくい「低温(定温)」倉庫が必須。さらに商品に適した倉庫に保管することで、商品状態を良好に保つことが可能です。

しかし、商品によって倉庫を分ける必要が出てくると、物流拠点の集約が難しく「保管費用」「配送費用」などコストがかさみやすくなります。

近年は、マルチテナント型の温度帯別倉庫が登場しており、複数の企業が同一施設内で異なる温度帯の保管を可能にしています。これにより、コストの分散と効率的なスペース利用が実現できます。また、温度管理が可能な自動倉庫システムの導入も進んでおり、温度帯ごとの商品の保管・取り出しが自動化されています。

衛生管理の徹底

健康食品は直接口に入れるもののため、衛生管理が不可欠です。

近年では、SNSを通じて健康食品に虫が混入していたことが報告され、販売会社が炎上するという騒動もありました。

アランくん

健康被害が出る可能性があるため、事前に異物混入を防ぐとともに、出荷前にもチェックをするなど徹底管理しましょう。

ピッキングミスが増えやすい

商品の特性上、見た目が類似した商品が多くピッキングミスが起きやすいのも特徴です。

例えば、

同じ商品でも、数量違いのものが豊富

ビタミンなどのサプリメントでは「A,B,C,E・・・」など見た目だけでは判別できない商品が多い

など、作業が煩雑になりがちです。

倉庫管理システム(WMS)などを導入し、入出庫、在庫管理をデジタル化すればある程度正確性を担保できますが、音声ピッキングシステムや画像認識技術の導入も検討すると良いでしょう。また、AR(拡張現実)を活用したピッキング支援システムも登場しており、作業者の負担軽減とミスの削減に効果的です。

健康食品の物流コストの抑え方

健康食品の物流コストの抑え方

健康食品の物流コストの抑え方のコツは以下の通りです。

物流コストの抑え方のコツ
  1. 物流拠点の集約化
  2. サプライヤーへの価格交渉
  3. 物流業務の自動化・効率化
  4. 共同配送やシェアリングサービスの活用

物流コストを削減するためには、これらの施策を組み合わせて取り組むことが効果的です。

物流拠点の集約化

複数拠点を持つことで「管理費、維持費が高くつく」「輸送費の割合が高い」などの課題が出てきます。

まずは、各倉庫の荷物量を見直し、余裕があるか確認しましょう。余裕があれば、荷物を集約でき倉庫コストを削減できます。

また、商品の集約化でトラックの積載率も上がるため、輸送費削減にも繋がります。

さらに物流コストを抑えたい場合には、物流コストに対し利益が大きくない商品から撤退するという方法もあります。SKU(在庫管理単位)の見直しを行い、収益性の低い商品の取り扱いを減らすことで、在庫管理や保管スペースの最適化が図れます。

物流倉庫の選び方については以下の記事で詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。

サプライヤーへの価格交渉

必要に応じて、サプライヤー(倉庫貸し業者)にも価格交渉をしましょう。

サプライヤーと交渉することで、倉庫の保管料そのものを安くしてもらえる可能性があります。これにより、年間の保管コストを大きく抑えられます。

価格交渉をする際は、価格を抑えてもらえることで契約年数を増やせるなど、サプライヤー側にメリットがあることを伝えると交渉が通りやすいです。

また、価格交渉に短期施策や長期施策を提示するのも良いでしょう。

【短期】
・競争入札など価格の見直し
・在庫調整
・管理体制の見直し

【長期】
・作業効率化によってもたらされた利益を自社とサプライヤーで分配する
・共同プロジェクトの立ち上げによる相乗効果の創出

さらに、物流量の増加や長期的な取引関係の構築を提案することで、サプライヤーにとっても安定した収益が見込めるため、価格交渉が有利に進む可能性があります。

健康食品の物流品質の高め方

健康食品の物流品質の高め方

特に入出荷、在庫管理、棚卸管理などをデジタル化し管理してくれる倉庫管理システム(WMS)や在庫管理システムの導入は、物流の効率化にも大きく貢献します

物流業務を一元管理してくれるため、そこに割いていた人的コストを削減できるうえ、作業効率化により倉庫の回転率も上げられます。

たとえば、システムで商品をバーコード管理することで簡単に在庫管理ができ、在庫欠品、過多に陥ることがなく販売ロスを減らせます

また、近年ではAIや機械学習を活用した需要予測システムも登場しており、適正在庫の維持に役立っています。これにより、在庫回転率の向上や資金繰りの改善が期待できます。

アランくん

システム導入でリソースの適正化、配送コスト削減、配送時間の短縮が可能になり売上増加に繋がります。

倉庫管理システム(WMS)については以下の記事で詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。

3PL(4PL)など外部への委託も検討する

3PL(4PL)など外部への委託も検討する

3PLや4PLに委託するのも手です。

3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)とは、自社で物流業務を担わず、第三者(サードパーティ)がロジスティクス業務を請け負う形態です。

4PL(フォース・パーティ・ロジスティクス)は、上記の3PLの機能に加え、戦略やマーケティング関連など、コンサルティング要素も加えた包括的な物流サービスを提供しています。

自社で物流業務を全て担うと、物量に関わらず固定で人件費や倉庫費がかかります。

しかし、3PLや4PLを導入することで、物量に合わせて人員をの調整が可能になり、コスト削減が可能になりますさらに、物流の専門家に委託することで、サービス品質の向上や最新の物流ソリューションの活用が期待できます。これにより、競争力の強化や顧客満足度の向上にもつながります。

3PLについては以下の記事で詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。

健康食品の物流代行業者の選び方

健康食品の物流代行業者の選び方

健康食品の物流代行業者を選ぶ際の判断基準について説明をします。適切な業者を選ぶことで、物流コストの削減やサービス品質の向上が期待できます。

自社の希望する業務に対応できるかどうか

健康食品の物流事業を手掛けている代行業者は複数ありますが、業者によって対応できる業務が異なります。

事前に、自社が委託したい業務に対応しているか確認しておくことが大切です。

特に、返金対応海外からの輸入製品の出荷判定や各種手配業務などは対応不可であるか、対応できたとしても別料金であるケースが多いため、必ずチェックします。また、温度管理や衛生管理のレベル、特殊な梱包やギフト対応など、商品の特性に応じたサービスが提供可能かも重要なポイントです。

マルチチャネルに対応できるかどうか

健康食品ではさまざまなチャネルに商品を卸し、販売するのが特徴です。そのため、物流代行業者を選ぶ際には以下の項目を確認しましょう。

・BtoB、BtoCに対応できるか。一般消費者向け、商品センター向け、リアル店舗向け、百貨店向けなど、複数の納品先に対応できるか

・ECプラットフォームごとに適した在庫管理やルールの遵守が可能か

・海外展開を考えている場合、越境EC(海外に向けた商品の発送・販売)にも対応可能か

また、事務的な機能が運用できるかも重要です。顧客からの注文や問い合わせに対し、メールやコールセンターで対応できるか、顧客対応用に別途システムの導入が必要かも確認しておきましょう。さらに、オムニチャネル戦略を展開している場合、一元的な在庫管理や注文管理が可能かどうかも検討材料となります。

システム・データ連携は柔軟かどうか

先でも触れましたが、物流代行企業は、倉庫管理システム(WMS)を使用しているケースが多く見られます。

このシステムと自社で使用しているシステム、販売チャネルごとのシステムとの連携が柔軟にできるか必ず確認しましょう。具体的には、API連携の可否や、主要なECプラットフォームとの互換性、データフォーマットの統一性などが挙げられます。これにより、受注から出荷までのプロセスを自動化し、業務効率化とミスの削減が可能となります。

万が一、誤出荷や不良品が発生してしまった時、転売などのトラブルが起きた際、トレース機能によるデータ提供ができるかも重要なポイントです。迅速な問題解決と信頼性の高いサービス提供のために、システム面でのサポート体制を確認しておきましょう。

まとめ

今回は、健康食品の倉庫での保管方法、コストの抑え方について紹介しました。

直接口に入れたり、皮膚に触れる商品のため商品品質の徹底管理が重要な商材です。

さらに、それぞれの商品がバラエティに富んでいるため、在庫管理や保管方法も複雑になり自社で全てまかなうのは大変です。

人手が足りない、コスト削減をしたいという経営者様、担当者様はアウトソースを検討してはいかがでしょうか?近年の物流業界では、最新の技術やサービスを活用した効率化が進んでいます。専門業者と提携することで、自社では難しい高度な物流サービスを利用することが可能になります。

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