近年は企業が従業員に対して、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを支給するケースが増えています。業務で利用するデバイスは、情報漏洩(ろうえい)のリスクを減らすための情報対策や、紛失対策などの管理をする必要があります。
この管理や機能を指すモバイルデバイス管理の詳細や実施の際のポイント、また外注する際のおすすめの業者などを解説します。
本記事を読むことで、モバイルデバイス管理の重要性や進め方を理解できるでしょう。
モバイルデバイス管理(MDM)とは
まずは、モバイルデバイス管理とはどんなものなのかを確認しましょう。
モバイルデバイス管理(MDM)の重要性
モバイルデバイス管理(Mobile Device Management=MDM)とは、以下の内容を指します。
モバイルデバイス管理とは、主に企業においてスマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスを管理・監視すること、または、そのため機能やサービスなどのことである。(後略)
引用:「IT用語辞典バイナリ」
近年は、従業員が業務で使用するためのスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを企業が支給するケースも多いでしょう。これは外出先で情報や資料を確認できる、社員間のコミュニケーションがスムーズになるなどのメリットをもたらします。
しかし、同時にリスクもあります。企業のモバイルデバイスを利用すれば、社外秘のデータに簡単にアクセスできます。そのため、社員がデバイスを紛失したり、盗難にあったりすると情報漏洩のリスクにさらされてしまいます。
また、業務用として支給されたデバイスに、社員が私的なアプリケーションをインストールするなど私的利用される可能性もあります。このような不正利用も、情報漏洩のリスクをもたらします。
これらのリスクを防ぐべく、企業はモバイルデバイス管理を行うことが重要なのです。
「便利なデバイスを安全に使うためには、セキュリティ対策が欠かせません。」
モバイルデバイス管理(MDM)が普及した背景
それでは、モバイルデバイス管理が普及した背景を押さえておきましょう。
モバイルデバイスの普及
先ほども述べましたが、多くの企業では情報共有の効率化などを目的として、スマホやタブレット端末などのモバイルデバイスが導入されるようになりました。そのことは、統計にも現れています。
働き方改革と各種デバイスの相関性について調査した総務省の統計によると、直近の業績が「好調である」「標準的である」と答えた企業ほど、スマートフォンやタブレットの導入率が高いことが分かりました。
また、業績にかかわらず、全体の5割以上が企業内でモバイルデバイスを利用していることも判明しています。 出典:総務省「平成30年度 デジタル化による生活・働き方への影響に関する調査研究成果報告書
テレワークの普及
モバイルデバイスが普及するにつれて、テレワークも普及しています。総務省の統計によると、テレワークを実施している企業は実際にこの5年間で増え続けています。
特に、2020年は新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、前年に比べて2倍以上の企業がテレワークを実施しました。
このように、モバイルデバイスの普及、テレワークの普及とともに外部への情報漏洩のリスクも高まったため、モバイルデバイス管理も普及するようになりました。
モバイルデバイス管理(MDM)の機能
それでは、ここからはモバイルデバイス管理の機能を見ていきましょう。
初期設定
初期設定では、業務アプリのインストールなどデバイスのさまざまな設定を行う必要があります。手間のかかる作業ですが、モバイルデバイス管理を利用すれば全てのデバイスへ一括で適応できます。
セキュリティ対策
モバイルデバイス管理には、企業に合わせたさまざまなセキュリティ対策があります。これを実行することにより、情報漏洩を防げます。また、紛失や盗難時にはデバイスのリモートロック・アラーム発生、データ消去のワイプなども実施できます。
利用状況のチェック
モバイルデバイス管理を利用すると、デバイスごとの利用状況を確認できます。アプリのインストール状況、インベントリ情報(端末データ)、位置情報などを把握できます。
これにより、デバイスを利用しているユーザーが、セキュリティポリシーに反する行為をしていないかどうかをチェックできます。
端末の所在把握
モバイルデバイス管理によって、IDを利用して端末とユーザーをひも付けることができます。
これにより、社員のデバイスが部署やチームごとに機能・アクセス範囲制限をかけられていたとしても、遠隔操作により設定を更新できます。
またこの機能により、企業の管理者側は端末の所在の把握が可能。社員がデバイスを紛失したときなどに役立ちます。
企業規模が大きいほどデバイスの台数が増え、管理が難しくなるため、モバイルデバイス管理を利用すると効率的です。
モバイルデバイス管理を実施すれば、さまざまな便利な機能を利用できることが分かります。
モバイルデバイス管理(MDM)の選び方
モバイルデバイス管理のサービスを提供している企業はたくさんあります。それでは、どんな基準でサービスを選べばよいのでしょうか。
提供形態で選ぶ
モバイルデバイス管理のサービスは、クラウド型とオンプレミス型に分かれます。それでは、この2つの違いやメリット・デメリットはどんなものでしょうか。
クラウド型とは、ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアをインターネット経由して利用できる方法です。
この方法でサービスを提供するのが、いわゆるSaaS(Software as a Service)と呼ばれています。
クラウド型のメリットは、自社でサーバーの調達や環境構築をすることなく、ライセンス費用のみで手軽に利用できるため導入コストが抑えられること、またバージョンアップ作業を自社で行う必要がないことです。
デメリットは、ソフトウェアのカスタマイズには制約があり、ベンダー側が提供している以上のサービスを利用することができません。
オンプレミス型とは自社でサーバーを用意・管理する方法で、パッケージ型のソフトを購入して利用するタイプもオンプレミス型と呼びます。
メリットは自社でサーバーを用意するため、自社の都合に応じてバージョンアップできることです。そのため、使い勝手のよいモバイルデバイス管理ができます。
一方、デメリットはサーバーを構築、保守・管理するためのコストがかかることです。
クラウド型とオンプレミス型、それぞれのメリット・デメリットを比較して、自社に適しているほうを選びましょう。
コスト
モバイルデバイス管理サービスを導入する際は、コストが気になるかもしれません。少しでも安価なサービスに、と考える気持ちは分かります。
しかし、大事なのは機能がコストに見合っているかどうかという点です。例え安くても、モバイルデバイス管理機能が不足していては意味がありません。
このような事態を防ぎ、必要な機能を得るためにはどうしたらよいでしょうか。そのためにはサービスを導入した場合の費用と抑えられるコストを算出し、費用対効果の観点からチェックするという方法も有効です。
また、このチェックを行う際に気を付けるべき点があります。それは、自社が管理しているデバイスの台数は、将来的に増える可能性があることです。そのため、デバイスの導入端末数の増加も予想したうえで費用を算出することをおすすめします。
セキュリティ機能
セキュリティ対策のためにモバイルデバイス管理を導入する企業は多く見られますが、一口にセキュリティといってもさまざまな対策機能があります。そのため、自社のセキュリティポリシーに対応した機能を持つサービスを選ぶことが大切です。
サポート体制
モバイルデバイス管理を利用すると、その導入から運用までに複数の課題が出てくる可能性もあります。そのため、サポート体制が整っているサービスを選ぶのもよいアイデアです。
例えば、以下の点に注目するとサポート体制の充実度を判断できます。
- 専任スタッフがいるか
- 海外サービスの場合、国内版(日本語)のサポートがあるか
- デバイスのOSアップデート時の対応はあるか
- 不具合の修正が行われているか
特に、「OSアップデート時や不具合の修正に対応している」という情報がHPに頻繁に上がっていれば、サポートが手厚い可能性が高いでしょう。
モバイルデバイス管理(MDM)の進め方
それでは、実際にモバイルデバイス管理をどのように進めるのかを解説します
1. 導入の目的・利用条件の明確化
まずは、モバイルデバイス管理を導入する目的を明らかにします。そのうえで、管理対象の範囲などの利用条件を決めます。
2.セキュリティポリシーを策定
モバイルデバイス管理を依頼する前に、自社のセキュリティポリシーを決めます。
具体的には、利用画面ごとに企業内の部門やチーム別にセキュリティポリシーをパターン化しておくと、モバイルデバイス管理を設定する際にスムーズに行えます。
3. デバイスの種類・数量を確認
モバイルデバイス管理サービスによって、対応しているOSは異なります。そのため、利用したいモバイルデバイス管理サービスが、自社が使用しているモバイルデバイスに対応しているかを確認します。
また、管理台数の制限や、台数によって料金が異なるサービスがあるため、事前に自社のデバイス台数も確認しましょう。
4. モバイルデバイス管理の選定
前章で解説した「モバイルデバイス管理の選び方」を参考にして、選定を行います。
5. 設定内容を決める
初期設定の内容やプロファイル、運用のルールなどを決定します。
6. 導入とモニタリング
実際に、設定内容を端末へ設定します。その後モニタリングを行い、不具合が起きた場合は原因を解明します。
7. 運用開始
モバイルデバイス管理と、デバイス利用の運用を開始します。管理する項目の変更や運用のルールを定期的に見直し、適宜改善を行います。
「実施までに多くのステップがありますが、一つひとつ漏れのないように進めましょう。」
モバイルデバイス管理(MDM)のまとめ
今回はモバイルデバイス管理とは何か、またその内容を解説しました。
モバイルデバイス管理は自社で行うケースが多いようですが、委託すると情報システム部門の負担が減ります。その分のリソースを付加価値の高い業務に対して使えるようになり、生産性を向上させることができるでしょう。
モバイルデバイス管理の委託をお考えの際は、ぜひオーダー!の「事務業務代行」をご利用下さい。
キッティング作業については以下の記事を参考にしてください。
リソース不足やコストの削減でお悩みの場合は、事務業務代行の記事も参考にしてみてください。