グローバルな市場で競争力を維持するためには、商品をスピーディーかつ確実に消費者の元へ届けることは不可欠です。
しかし、自社商品を初めて海外に発送する場合、手続きや梱包をどうするか、コストはどれくらいかかるのか、もし返品になった場合はどうするか…など、多くの懸念が浮かんでくることでしょう。
本記事では、ECサイトを運営する個人や企業の担当者に向け、海外発送の方法と注意点について詳しく解説します。
また、近年は多くのECビジネスが発送代行サービスを活用しています。
アウトソースするメリットや業者選びのポイントをご紹介しますので、「商品を海外に送る最適な方法を知りたい」「海外展開をしたいが発送業務の手間が心配」という方はぜひ参考にしてください。
海外発送する方法は3つ
海外発送する方法は、ビジネスのフェーズごとに大きく3つに分けられます。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
1.自社から直接発送
最初に考えられるのは、受注のたびに自社から発送する方法です。
初期費用がかからず手軽に始められますが、配送会社選びから梱包、複雑な通関手続きまで全て自社で対応するため、受注が増加すると対応しきれない可能性があります。
2.国内の提携業者から発送
ある程度注文が増えてきたら、海外発送を行う提携業者を利用する方法もあります。
受注したら商品を提携業者の倉庫に送ると、そこから購入者の元へ届けてくれます。手続きや梱包をまかせられる利点がありますが、その分リードタイムは長くなります。
3.現地の提携業者から発送
最も効率的な方法は、現地に物流拠点を置いてそこから発送することです。
税関手続きが不要でリードタイムが大幅に短縮されますが、初期費用と維持費用がかかり、物量が少ない段階や小規模のビジネスでは採用しづらいでしょう。
海外発送の注意点とは?
海外発送と日本国内向け発送はどのように違うのでしょうか?注意すべき点について具体的に解説します。
国やエリアで発送日数が異なる
当たり前ですが、距離が遠いほど配送日数がかかり、現地の情勢などによってさらにかかる場合があります。
購入者にとって、商品が手元に届くまでの日数は購入の大きな決め手となります。逆に言えば、スピーディーな発送ができれば他社との差別化ができるでしょう。
発送できない商品がある
関税法で輸出できないもの、海外発送できないもの、航空便で送れないものなど、国境を越えて発送できない物品が存在します。
例えば、関税法で輸出できないものは次の4分野です。
- 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤(覚醒剤原料を含む。)
- 児童ポルノ
- 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権又は育成者権を侵害する物品
- 不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号まで、第10号、第17号又は第18号に掲げる行為(これらの号に掲げる不正競争の区分に応じて同法第19条第1項第1号から第5号まで、第7号又は第9号に定める行為を除く。)を組成する物品
引用:2501 輸出してはならない貨物(カスタムスアンサー)
また、国際郵便では以下の物品は全世界共通で送ることができません。
- スプレー缶
- 香水
- 花火・クラッカー
- 日焼け止め(アルコール濃度24%を超えるもの)
- マニキュア
- ヘアトニック(アルコール濃度24%を超えるもの)
- アルコール飲料(アルコール濃度24%を超えるもの)
- 電子タバコ
- モバイルバッテリー
その他、あて先の国によっては酒、たばこ、食品が送れないこともあります。牛肉が禁制品の場合にはカップ麺、カレー、コンソメなども発送できない物品に含まれます。
その他にも、航空便を利用する場合は船便よりも厳しい規定があります。
このように、国や地域ごとにルールが異なるため、トラブルを避けるためにも慎重な対応が必要です。
通関手続きが複雑
自社から直接発送する場合、通関手続きが複雑で時間がかかります。
例えば、海外発送には「インボイス(荷物の明細書)」が必要です。
配送会社のサイトなどに載っている記入例通りに作成すれば問題ありませんが、もし不備があると照会などでさらに時間がかかる可能性があります。
また、通関では購入者に関税が請求される場合もあります。海外発送ではどんなことが起こりうるのか事前に知っておくとよいでしょう。
梱包ノウハウが必要
商品の扱いが雑なことが多い国際輸送では、特別な梱包ノウハウが必要です。と言っても、ただ頑丈に梱包すればよいということではありません。
実際に起こった事例がこちらです。
- 丁寧に梱包したのはいいが、わずかの重量の差で送料が変わってしまった
- (コンテナに複数の荷主の貨物を混載する場合)梱包が不十分と判断され、荷受けをしてくれなかった
このようなトラブルを防ぐには、事前に知識を得ることが欠かせません。資材や梱包作業にも細心の注意が求められます。
物流コストがかさむ
海外発送のコストは発送料、関税、通関手数料などで構成されます。
また見落としがちなのが、国内向け発送よりも梱包による重量が増えがちという点です。
価格や発送料を設定する段階から、梱包後のサイズと重さを考慮しておかなければいけませんね
海外発送に対応する主な発送業者
海外発送には国際郵便と国際宅配便があります。違いを押さえておきましょう。
- 公的配送 例:日本郵便、USPS(米国郵便公社)
- 公益性が高く、国や地域を問わず固定料金に近い料金で発送できる
- 信書(手紙、納品書、証明書など)の発送が可能
- 民間配送 例:ヤマト運輸、佐川急便、UPS
- 独自のネットワークで早く荷物を届けられる傾向がある
次に主要な発送業者の特徴をご紹介します。
日本郵便
日本郵便は、世界中に発送先を持ちながらも、手頃な価格で商品を発送できるという強みがあります。
近所の郵便局から発送できるという手軽さも魅力です。
一般的に小〜中規模の商品の取り扱いが得意なため、小さな商品で発送件数が少ない企業や個人にもおすすめです。
日本郵便の中で最速で発送できる国際郵便のEMS(国際スピード郵便)、航空便、SAL便、法人向けの国際宅配便サービスUGX(ゆうグローバルエクスプレス)などがあります。
ヤマト運輸
ヤマト運輸は、世界200を超える国と地域に対応し、確かで安全な配送を提供しています。荷物の追跡が充実しており、大型商品や急な配送にも対応可能なのが特徴です。
60サイズ〜160サイズまでの料金体系に加え、書類を送る際にオトクな「書類パック」もあります。
発送者・受取側のいずれかが個人の場合、取り扱い不可の地域(中国、フィリピンなど)もあるので注意しましょう。
佐川急便
佐川急便は、世界220以上の国と地域に対応し、BtoB向けの高品質なサービスも幅広く提供しています。小荷物/書類別の重量0.5kg刻みという細かな料金体系です。
一部地域では個人向け荷物が取り扱い不可となっています。
FedEx
FedExは、国際輸送に強みを持つアメリカの企業で、迅速で確実なデリバリーサービスが特徴です。世界中にネットワークを持ち、国際的なビジネス展開に適しています。
最短翌日着というスピーディーな配送ができる分、コストは高めですが、慎重な管理が必要な医薬品や化粧品などヘルスケア輸送にも対応しています。
UPS
同じくアメリカを拠点とするUPSは、世界中の企業との豊富な取引実績を持つ企業です。
時間指定や日時指定配達サービスのほか、返品サービスも充実しており、返品のプロセスを簡素化してくれるのも特徴です。
海外発送では返品対応に手間と時間がかかる場合も多いため、気になる方はチェックしてみてください。
DHL
DHLはドイツを拠点とする国際宅配便のパイオニアで、世界中に広がるネットワークを活かし、特に急ぎの発送やリモートエリアへの発送に強みがあります。
時間指定や日時指定配達サービスもあり、世界中の企業から国際的な展開に欠かせないパートナーとして選ばれています。
Fedex、UPS、DHLは比較的コストが高めですが、自社で航空機を所有しているため、安価な混載便を利用するより紛失などのリスクは低いといえます
海外発送を代行依頼するべき3つの理由
このように、主要な配送業者だけを見ても提供するサービスは多種多様で、強みも異なります。
比較検討するだけでも難しいとお悩みの方には、発送業務自体をアウトソースしてしまうのもおすすめです。
代行依頼のメリットを大きく3つお伝えします。
1.業務効率化につながる
海外発送業務を代行することで、より売上に直結する業務に注力できます。
消費者の嗜好は国や地域によって異なるため、海外向けの商品では特に市場調査や企画・開発に時間をかける必要があるでしょう。
他にも、仕入れ、製造、マーケティング、広告宣伝など、優先順位の高い業務に注力し、発送業務はプロの手に任せることで業務効率化につながります。
2.物流コストを最適化できる
代行業者では、物流ネットワークを効率的に構築し、人件費や保管費を調整できます。
セールやイベント時などの繁忙期を基準に人員や保管・作業スペースを確保しても、閑散期に急にそれらをカットするのは容易ではありません。
また、ガソリン価格高騰や人員不足など物流コストは上昇傾向にあり、物流コスト削減のためにもノウハウを知る業者にまかせるのは得策といえます。
代行業者の規模によっては運送費などの割引が得られることもあります。
そもそも業務を外注を検討しようとすると、「現在の物流コストはどのくらいか?」「無駄な工程や作業はないか?」など、業務の見直しをする良い機会になります。
その結果、物流コストを見える化することができ、経営全体を俯瞰するのに役立つのです。
3.顧客満足度アップが期待できる
確実で迅速な発送は、国際輸送において差別化の要因となります。ミスが減り物流品質が向上すれば、顧客満足度アップも期待できるでしょう。
海外からの受注は予期せぬタイミングで増えることもあります。昨今では、SNSでの拡散やライブコマースの利用で、短期間・短時間に注文が集中することもあるのです。
そうなると、発送作業が回らないだけでなく、追加発注や顧客からの問い合わせなどに対応しきれなくなることも。
ビジネス拡大を見越して、早めに対策を考えておくのがおすすめです!
海外発送の代行業者を選ぶポイント
海外発送の代行業者は数多くありますが、自社に合う業者を選ぶためには次のようなポイントに着目しましょう。
海外発送の実績が豊富か
海外発送では資材や緩衝材を使って頑丈に梱包するほどコストが増える一方、十分に梱包されていないと破損や汚れを招き、クレームの原因となります。
そこで、これら梱包や物流の最適解をノウハウとして持っている、海外発送の実績が豊富な業者を選ぶことが重要です。
受注の多い国やエリアがある場合は、現地の情勢に詳しい業者か、行事などによる受注の急増にも対応できるか、という点も確認しましょう。
例えば、中国では11月11日の「独身の日」に大規模なセールが行われ、通常の数十倍にも出荷が増えることで知られています。
自社のニーズと合っているか
商品の種類や物量によって得意な業者が異なるため、自社の商品の細かな要件に対応できるか確認しましょう。
特に温度管理が必要な商品、壊れやすい商品の扱いには注意が必要です。
発送代行は、個人や小規模でも利用可能ですが、物量が少ない場合には受け入れ不可のこともあるため問い合わせ時に確認してください。
個人向けのサービスはこちらをご覧ください。
料金
隠れたコストや追加料金がないかを確認し、透明性のある料金体系を持つ代行業者を選びましょう。
複数業者から見積もりを取り比較することで、全体的なコストを把握することができます。
倉庫のロケーション
代行業者の倉庫のロケーションは発送のスピードに影響を与えます。
空港や港に近い倉庫を持つ代行業者を選ぶことで、効率的な物流が期待できます。
ECサイト運営まで任せられるか
一部の代行業者はECサイトのコンサルティングや運営全般のサポートをしてくれることがあります。
ECサイトを改善することでさらなる売上アップも期待できるため、ビジネス拡大を考えるなら、総合的なサポートが可能な業者を選ぶことが賢明です。
顧客からの問い合わせ対応、返品やクレーム対応なども含めた物流業務全般を任せられる「フルフィルメント」サービスもあります
ECサイト運営代行について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
フルフィルメントについて詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
海外発送の代行はオーダー!におまかせ
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海外発送のまとめ
発送業務を円滑に行うことは、海外の新しい市場を開拓し、ビジネスを拡大するうえで重要な要素といえます。
信頼できる代行業者を選定することで、顧客満足度向上や競争力の向上が期待できるでしょう。
今後まだまだ拡大すると考えられる海外EC市場。ビジネスの成長を見据え、戦略的に海外発送に取り組んでみてはいかがでしょうか。
越境ECに関する内容については以下の記事を参考にしてください。
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