荷物量の増加と人手不足の影響を受け、物流業界では効率化とコスト削減の必要性が高まっています。そして、これらに対処する手段の一つに、物流倉庫の自動化があります。
- 物流倉庫の自動化には、どんな方法があるのか?
- 物流倉庫を自動化するメリットは?
- 物流倉庫の自動化の成功ポイントが知りたい
ECサイト運営事業者や物流倉庫を持つ事業者の方は、このような疑問をお持ちかもしれません。そこで、本記事ではこれらの疑問を解消すべく、物流倉庫を自動化する重要性や導入のメリットを詳しく解説します。
自動倉庫システムやデジタルピッキングシステムなど、最新技術を駆使した物流倉庫・自動化の手法と、それによって実現する効率化やコスト削減の具体例を紹介。実践的なヒントとなる内容をお届けします。
物流倉庫の自動化とは
物流倉庫の自動化とは、商品の入庫から出庫に至るまでの一連のプロセスを効率化することです。自動化のプロセスには、検品や在庫管理、ピッキング、梱包といった多岐にわたる作業が含まれています。
一口に「物流倉庫の自動化」といっても、作業の段階に応じて自動化の内容は異なります。在庫管理はデータの正確性と迅速な情報更新が求められるため、リアルタイムで在庫状況を把握できるシステムが必要です。一方、ピッキングや梱包では、物理的な作業スピードが向上するシステムが求められます。
現在、AIやロボティクスのようなデジタル技術の発展によって、これまで人の手で行っていた多くの作業を自動化できるようになっています。
物流倉庫の自動化が重要な理由
ここからは、物流倉庫の自動化が重要である三つの理由を解説していきます。
荷物量の増加
一つ目は荷物量の増加です。
国土交通省が発表したデータによると、令和3年度の宅配便の取扱個数は49億5,323万個であり、前年度と比べ約2.4%増加しています。また、メール便も取扱冊数・前年比率ともに増加しており、それぞれ42億8,714万冊、約1.1%増加という結果です。
増え続ける荷物量に手作業で対応するのは限界があり、ミスのリスクも高まります。ゆえに、物流倉庫の自動化による効率的な在庫管理、迅速なピッキングと梱包、正確な出荷が必要なのです。
参考:国土交通省「報道発表資料:令和3年度 宅配便取扱実績について」
人手不足
次に、人手不足も物流倉庫の自動化が重要な理由です。
調査会社が行った「人手不足に対する企業の動向調査」では、2023年4月時点で「運輸・倉庫」業界内の人手不足率(正社員)は63.1%となっており、過去2年間と比べ増加傾向にあります。
また、別の調査では「人手不足」と回答した運輸業者のうち、9.3%が「人手不足を理由とした廃業など、今後の事業継続に不安がある」と回答しています。
このように、人手不足は現在の物流業界において大変深刻な問題です。人材が足りず、廃業を考える企業もあるほどなのです。この問題を解決するためにも人に依存する作業を減らし、生産性を向上していかなければなりません。
参考:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」
参考:東京商工会議所「『人手不足の状況および多様な人材の 活躍等に関する調査』調査結果」
物流自動化の市場が拡大
三つ目の理由は、物流自動化の市場が拡大していることです。
マーケティング会社の市場調査によると、次世代の物流システム・サービス市場における、日本市場および日系メーカーの海外売上は2030年に1兆1,831億円になる見込みです。
このことから、物量の増加と人手不足の解消に向けて、今後もロボティクスやAIなど先端技術を活用した機器・システムの導入が進むと予測されます。
今後、競合他社が自動化を進めると、物流倉庫を自動化していない企業は市場から淘汰されてしまう可能性もあります。早急に対策を講じる必要があるでしょう。
参考:富士経済グループ「次世代物流システム・サービス市場を調査 」
物流倉庫の自動化・具体的な手法
では、物流倉庫の自動化にはどんな手法があるのでしょうか。6つの手法を紹介していきます。
自動倉庫システム
自動倉庫システムは、入庫から出荷までの一連のプロセスを一元管理するシステムです。具体的には、商品・製品をパレットやコンテナによって自動で運搬・保管します。
これにより倉庫内の作業効率が大幅に向上し、人に頼る作業の負担を軽減できます。在庫管理の精度が高まり、迅速かつ正確な商品の出荷ができるので、顧客満足度も向上するでしょう。
倉庫管理システム(WMS)
次に紹介する物流倉庫・自動化の手法は、倉庫管理システム(WMS)です。倉庫管理システムは、在庫状況や商品の位置、出荷状況の一元管理など、倉庫運営に必要な業務をサポートします。
倉庫管理システムを使用すると、帳票やラベルの発行など細かな作業も簡単な操作で完了するため、作業時間の短縮と人件費の削減に効果的です。
自動搬送ロボット
自動搬送ロボット(AGV)は、物流倉庫内で人の代わりに商品を運搬するロボットです。プログラムされたルートに沿って自動的に動き、商品を指定の場所へスピーディかつ正確に運びます。
床に設置された磁気テープやレーザーを利用して走行し、重い荷物も簡単に運搬可能。最新のモデルではAI技術を活用して障害物の回避や、最適なルートの計算もできます。
デジタルピッキングシステム
デジタルピッキングシステムは、デジタル表示器を使用した、ピッキング作業を効率化するサポートシステムです。倉庫内の棚に取り付けたデジタル表示器が商品の正確な位置を示すことで、作業者は迅速に正確な商品を見つけ出し、取り出せます。
さらに、スマートグラスを使用するデジタルピッキングシステムもあります。作業者の付けたスマートグラスに最適なピッキングルートが表示され、そのルートを辿っていくだけでピッキングできるシステムです。
ピッキングロボット
ピッキングロボットは、人間の代わりにピッキング作業を行います。
AI技術を活用して商品の形状やサイズを識別し、ピッキング作業を自動化。人に頼ることなく、迅速かつ正確な商品の取り扱いが可能です。
ピッキングロボットによって商品を選別し、先述した自動搬送ロボットで商品を運搬することで、さらなる倉庫内の人手不足を解消できます。
IoTセンサー
IoTセンサーの使用も物流倉庫を自動化する手法の一つです。loTセンサーは、倉庫内の温度や湿度をリアルタイムで監視するものであり、特に食品や医薬品など温度や湿度に敏感な商品を扱う際に役立ちます。
また、loTセンサーの中には自動で商品の重量を計測し、配送伝票を作成するものもあります。管理画面からリアルタイムで在庫数をチェックできるため、倉庫内を歩き回る必要がなくなります。
物流倉庫の自動化・メリット
この章では物流倉庫を自動化する、三つのメリットを解説していきます。
人手不足の解消
まずは、人手不足の解消です。自動化技術を倉庫に導入することで、少ない人員で生産性を上げられるようになります。
ロボットやAIシステムが荷物の運搬や分類などの作業を行うため、従業員の負荷が減少し、作業時間の短縮や人件費の削減が見込めるでしょう。
また、ロボットが荷物を運んでいる間に、従業員は他の業務に集中するといった効率的な業務分担も実現します。
効率と品質の向上
次に、効率と品質の向上も物流倉庫の自動化がもたらすメリットです。自動化システムの導入によってヒューマンエラーが減少し、品質の安定性を高められます。
また、自動化システムは24時間無休で稼働できるので、全体的な業務のスピードアップが見込めます。
人件費の削減
三つ目のメリットは、人件費の削減です。物流倉庫の自動化には導入コストがかかりますが、従業員の給与や研修にかかる費用を大幅に削減できます。
特に繁忙期の臨時スタッフの雇用や新人教育・研修に伴うコストは、自動化によって必要最小限に抑えられるでしょう。
長期的に考えると、物流倉庫を自動化するほうが人材を確保するよりもコストパフォーマンスがよい可能性があります!
物流倉庫の自動化・ポイント
物流倉庫の自動化には、押さえておくべきポイントがあります。これから紹介する三つのポイントを考慮し、自動化をスムーズに進めていきましょう。
目的と問題を明確にする
まず、「目的と問題を明確にする」ことが重要です。
物流倉庫を自動化する際、高額なコストがかかることは避けられません。「必要以上にコストをかけてしまった」と後悔しないよう注意が必要です。
自動化を計画するにあたり、現在抱えている問題点と達成すべき目標(目的)を明確にすることで、無駄な出費を抑えられます。
- 人手不足を解消し、手作業を減らす
- 在庫の正確な管理と追跡を行い、過剰在庫や品切れを防ぐ
- ヒューマンエラーを減らし、作業の品質を向上させる など
自動化を導入する目的・目標と現在の問題点を洗い出すことで、必要な機能やシステムの絞り込みが可能です。
物流のプロの手を借りる
次のポイントは、物流のプロの手を借りることです。専門家は最新の技術や市場の動向を理解しており、それらを活用して最適な自動化ソリューションを提案します。そのため、自社のみで導入するよりも、円滑に物流倉庫の自動化を進められるでしょう。
さらに自社倉庫の自動化にこだわらず、すでに自動化された物流のプロの倉庫に業務を委託するのも選択肢の一つです。自動化設備の初期投資が不要になり、自社システムの管理やメンテナンスにかかる時間を別の業務に注力できます。
ITのプロの手を借りる
物流倉庫の自動化において、ITのプロのサポートも必要です。自動搬送車(AGV)などは専用のソフトウェアを必要とし、これらを自社の倉庫システムとつなぎ込む必要があるからです。
他にもITのプロの手を借りると、次のようなメリットがあります。
- 企業のニーズに合わせてシステムをカスタマイズし、将来の拡張に対応できるように設計する
- 技術的な問題やアップデートに対応できる など
物流倉庫の自動化では、物流・ITについて包括的にプロへ相談できることが大切です。
物流倉庫の自動化・コンサルはオーダー!におまかせ
オーダー!は、ITと物流の専門知識を活かし、システムの構築・管理、商品の管理・配送、顧客対応など、お客様のビジネスを多角的にサポートするコンシェルジュです。
オーダー!では、物流倉庫の自動化コンサルティングサービスを提供しています。中国の自動倉庫システム・AGV製造会社とパートナーシップを構築しており、日本の倉庫システムとの連携テストを実施。さらに、物流倉庫の自動化に必要である高性能な制御システムの運用サポートを展開しています。
お客様の業務フローを確認し、どのように活用していけばいいのか、物流面・ITシステム面それぞれのニーズに合わせた最適な自動化ソリューションを提案可能です。
オーダー!の物流業務メニュー
- 物流業務プロセス見直しコンサルティング…物流倉庫を保有されているお客様向け。現地調査および、現状の問題の洗い出しや課題のとりまとめを実施
- ECサイトの商品 在庫管理・発送…商品の入庫、出荷、在庫管理の物流に関する全ての業務をサポート
- 個人事業主向け 在庫管理・発送…一般的な宅配の費用で管理や発送が可能
- 海外向け発送…越境ECを展開されている企業様向け。国際郵便(EMS)を利用した海外への商品の発送を代行
- 検品代行…全数検査やサンプル検査など、ご要望に応じて対応
- 物流システム導入…オーダー!にて独自開発した物流システムの導入支援
- 内職代行…封入、ラベル貼り、小物の検品検針作業など
- カスタマイズサービス…化粧箱を組み立て、複数種類のパターンでアイテムを組み合わせて詰め込み、梱包・発送するなど
お気軽にお問い合わせ下さい!
物流倉庫の自動化・成功事例
最後に、物流倉庫の自動化を行い、成功している企業の事例をご紹介します。
アスクル
オフィス向け事務用品をネット販売するアスクルは、データとAI、そしてロボット活用で省人化を進めています。具体的には自動搬送車、デパレタイズロボット(※)、ピッキングロボットを導入。これらの技術により、物流現場の労働環境を改善し、作業の生産性を向上させています。
※デパレタイズロボット…倉庫内の荷下ろしを自動化するロボット
参考:ASKUL Transformation with Digital「アスクルの物流動画をリニューアル公開しました!」
京葉ガス
千葉県で都市ガスを提供している京葉ガスは、物流倉庫管理システムを導入し、物流倉庫の効率化と自動化を実現しています。
導入前は在庫管理や発注業務、入出庫作業をベテランオペレーターの記憶や知識を頼りに行っていたため、業務が属人化していました。さらに、人による棚卸作業の労力や欠品発生なども問題となっていました。
これらのリスクを解消するために、倉庫管理システム(WMS)を使用したところ、出荷前のピッキング作業の効率が大きく向上。どの作業員でもスピーディに作業できるようになり、業務の属人化を解消できました。
参考:NECソリューションイノベータ「京葉ガス株式会社様 導入事例 」
公文教育研究会
教育関連事業を展開する公文教育研究会は、自社倉庫にピッキングシステムを導入しています。
以前はFAXの注文票を目で追いながら手作業でピッキングしていたため、作業が長時間におよび、熟練作業者に依存してしまう原因となっていました。
そこで、ピッキングシステムを導入した結果、作業精度99.96%を達成。誤出荷を大幅に減少させています。
さらに、誰でも簡単にピッキングできるようになったことで作業者の負担が減り、よりスピーディに作業できるようになりました。
参考:株式会社アイオイ・システム「公文教育研究会様」
物流倉庫の自動化・まとめ
本記事では、物流倉庫の自動化に関する具体的な手法や成功事例を紹介しました。ECサイト運営事業者や物流倉庫を持つ事業者にとって、物流倉庫の自動化は以下のメリットをもたらします。
- 人手不足の解消
- 業務の効率化と品質の向上
- コスト削減
これらのメリットにより、安定的な倉庫運営が叶い、さらにビジネスを成長させていけるでしょう。
自社倉庫の自動化を円滑に進めたい、無駄なコストをかけたくない場合は、ぜひオーダー!にご連絡下さい。IT・物流の専門家として最適なソリューションを提供いたします。
物流業務全般の代行・アウトソーシングについては以下の記事にまとめていますので、参考にしてください。