キャッシュレス決済やデジタルマネーの利用が増えるなか、地域通貨も注目を浴びています。

地域通貨とは特定の地域内でのみ使えるお金で、導入例の一つには、飛騨高山の「さるぼぼコイン」があります。

地域通貨を導入することで、地域活性化への効果が期待できる一方、運用にあたってクリアしなければならない課題もあります。

そこで本記事では、地域通貨の仕組みやメリット・デメリット、導入の方法から地域通貨を成功させるポイントまで、詳しく解説します。

  • 地産地消ができる新たな取り組みを行いたい
  • 商店、住民の双方にメリットがある仕組みを作りたい

このように考えている地方自治体は必見です。

本記事を読めば地域通貨への理解が深まり、導入成功へのヒントが得られるでしょう。

地域通貨とは

地域通貨とは

地域通貨とは、限られた地域内で使用できる通貨のことを指します。

地元の活性化や地域創生で話題にあがることが多く、目にする機会も増えたのではないでしょうか?

アランくん

地域通貨は、30年ほど前に一度拡大したものの、残念ながら成功には繋がらなかったんですよ

そんな地域通貨が、なぜ今再び注目を浴びているのでしょうか?

地域通貨が注目されている理由や地域通貨の特徴について、詳しく解説します。

地域通貨と「お金」の違い

地域通貨とは、地域の自治体や企業、NPO、商店街などが独自に発行する通貨を指します。

良く知られている地域通貨には以下があります。

  • 岐阜県飛騨地域の「さるぼぼコイン」
  • 東京都世田谷区の「せたがやPay」
  • 国分寺地域通貨「ぶんじ」 など

地域通貨は国が発行し価値が保証されている法定通貨とは異なるため、厳密には通貨ではありません。

また、国内で広く利用できる「お金」とは異なり、特定の地域内の指定された店舗や企業でのみ使用が可能です。

通貨の価値は発行元の自治体や企業などによってのみ保証されています。

地域通貨の仕組み

地域通貨は、金融機関が発行するのではなく、自治体、企業、商工会議所などが独自に発行します。

主な仕組みは以下の通りです。

  • 地域限定で紙やデジタルで発行され、支払いができる
  • ボランティアやエコ活動、その地域のためになる活動に参加すると得られる
  • 地域通貨を使って購入すると、割引サービスや特典を受けられることも

ただ支払いをするだけなら地域通貨を使う必要はないため、流通スピードを高め地域内で経済が循環するよう、次のような特徴があります。

地域通貨の特徴

このように、地域通貨のルールを定め、地域住民が利用したくなる付加価値をつけることで、地域を活性化させる効果が期待できるのです。

地域通貨の種類

地域通貨の種類は主に以下が挙げられます。

地域通貨の種類特徴
紙幣型現金のように使えるため、匿名性が高い一方で、偽造リスクの懸念もある
通帳型商品購入やサービスを受けるとマイナス、反対に、商品販売やサービスを提供すると、プラスが記帳される
小切手型利用者が裏側にサインをして履歴を残す 過去に利用した内容がわかる一方、プライバシーへの配慮も課題となる
デジタル型現金やクレジットカードなどでアプリにチャージ、二次元バーコードで支払いを行う若年層には便利だが、高齢者には使いづらい場合も

このように、種類によってメリットとデメリットが存在するため、地域ごとの需要に合わせてどの地域通貨にするのかしっかり精査する必要があります。

幅広い年齢層が使用することを想定し、紙幣型とデジタル型を併用するケースもあります。

地域通貨が注目される理由

元々地域通貨は1990年代後半に導入が拡大しました。

しかし、運営コストの負担などで失敗に終わるケースも多々あり、成功させるのは容易ではありませんでした。

過去に発行された地域振興券や商品券やクーポンは一度限りしか使用できませんでしたが、地域通貨は繰り返し使うことができます。

また、近年キャッシュレス決済の普及にくわえ、電子マネー技術も格段に向上しました。そこで、より利便性の高いデジタル地域通貨が注目されているのです。

地域通貨のメリット

地域通貨のメリット

地域通貨のメリットには、地域経済やコミュニティーの活性化をはじめ、地域内の流通経路が見える化できるなど、さまざまなメリットがあります。

地域経済の活性化

地域通貨に使用期限を設けている場合、「早く使わなければ」というインセンティブが働きます。そのため、流通スピードが上がり、地域経済が循環していきます。

また、旅行者が地域内で利用してくれると地元が潤い、地産地消、地元の産業の振興にもつながります。

アランくん

旅行者をターゲットにした地域通貨の一例には、全国の温泉地や観光地で使える、ルーラコインなどがありますよ

地域コミュニティーの活性化

地域の活動に参加した人は通貨を得ることができる仕組みを取り入れる地域通貨も多く、地域コミュニティーの活性化も期待できます。

具体的には、住民参加型のボランティア活動やイベント、交流会などです。
地域内の住民が積極的に関わりあうことで新たなコミュニケーションが生まれ、相互補助の働きが生まれるメリットもあります。

経済活動のデータ利用が可能

地域通貨を導入すると、地域内の経済活動のデータ利用が可能です。

特にデジタル地域通貨の場合は、利用者情報や流通経路のデータが入手できるため、店舗ごとの利用状況の把握がしやすい利点があります。
経済活動を「見える化」できることで、ターゲットや時期を絞ったキャンペーンなど、マーケティング施策が打ちやすいのです。

決済手数料を抑えられる

クレジットカード会社や電子マネーを利用する場合、決済手数料はカード会社や運営機関に入ります。
地域通貨の事務局が商工会や商店街の自治会の場合、地元の運営母体に決済手数料が入るので、一般的には決済手数料を安くすることができます。

地域通貨のデメリット

地域通貨のデメリット

地域通貨のデメリットには、運用や管理にかかるコストや、法律や税制面のハードルが高いことなどが挙げられます。しかしながら、専門的な知識を持つ業者に代行するなどの対策を行うことで、課題をクリアできることもあるため、上手く活用するのもおすすめです。

運用や管理のコスト

地域通貨のデメリットには、運用や管理にコストがかかる点が挙げられます。

紙の地域通貨の場合、印刷、保管、利用者や協力店への発送、集計など、多大なコストがかかります。

デジタル地域通貨の場合も、システム構築から継続的な運用までを行える人材の確保などの課題があります。

人材の確保が難しい場合、専門知識を持つ業者にアウトソーシングすることも検討しましょう。比較的負担を抑えながら導入できるSaaS型プラットフォームサービス※を利用する手もあります。

※SaaS型プラットフォームサービスとは、必要なアプリやツールをクラウド上で提供し、効率的な業務運営を可能にするサービス。

法律や税制面のハードル

法定通貨とは異なり、地域通貨には根拠となる法律が存在しません。

金銭を地域通貨に変える場合、前払式支払手段発行業者の届け出が必要になるケースもあります。

参照:一般社団法人日本資金決済業協会
そのため、法律や税の専門家に相談してハードルをクリアする必要があります。

地域通貨を導入するには

地域通貨を導入するには

地域通貨を導入するための業務について、以下で詳しく解説します。

運営コミュニティを組織する

地域通貨の成功には自治体、住民、地元企業や団体、金融機関などの協力が必要不可欠です。

地域通貨にはどのような特徴があるのか、メリット・デメリットも含めてしっかりと理解してもらう必要もあるでしょう。

そのためには、運営コミュニティを組織して導入に向けた議論や意見交換を重ねることが大切です。

地域通貨の目的とルールを定める

地域通貨を導入する目的には、経済活性化、コミュニティの活性化、観光振興、地産地消などがあります。

地域でどのような目的で地域通貨を導入するのか決めておくと、その後のルールも定めやすくなります。

また、地域通貨で決めるべき項目には以下が挙げられます。

  • 通貨の単位
  • 交換レート
  • 使用期限
  • 交換方法
  • 種類(紙かデジタルか)
  • 利用対象者(地域住民限定かそうでないか)
  • 利用促進策(割引や特典)など

地域通貨の目的とルールを定めて、利便性の高い地域通貨を目指しましょう。

経営計画を立てる

地域通貨を持続可能なビジネスにするための経営計画を立てるのも、地域通貨を成功に導く重要なポイントです。

導入にかかるコストはどのくらいか、得られる収益はいくらなのかなど、シュミレーションを行い事前に計画を立てることが大切です。

収益:補助金、加盟店の登録費用、決済手数料など
費用:広告宣伝費、システム費用、ポイント付与の費用、事務局メンバーの人件費 など

地域通貨を発行する

地域通貨を発行する際には、いくつかの作業が必要です。まずは、地域通貨のデザイン決めを行います。

デザイン決定後、地域通貨に紙を用いる場合には印刷をし、デジタル地域通貨の場合は、アプリの設計が必要となります。

アランくん

人気のキャラクターを用いたものや、地域に合わせたイラストなど、ユーザーが楽しく使えるようなデザインが多くあります

PR活動を行う

PR活動には、ポスターの掲示や、Webサイトでの宣伝、イベントやプロモーション活動などがあります。

地域の人々や地元の企業に向けて地域通貨を導入するメリットや使い方のほか、どのような恩恵があるのか説明します。

地域通貨を使えば、地域で暮らす人々や企業のためになり、相互介助にもつながるなど、ユーザーの感情に訴えかける策も有効です。

運用や管理を行う

地域通貨を発行したら、運用や管理を行います。

地域通貨の価値が下がらないよう発行量の管理を行うほか、システムやWebサイトのメンテナンスや不具合への対処など、スムーズに利用してもらえるような環境作りも大切です。

また、地域通貨の利用状況を集めたデータをもとに、更なる普及につながるような施策を打つ必要もあります。

地域通貨成功のポイント

地域通貨成功のポイント

地域通貨で成功におさめるには、明確な目標や利用したくなる仕掛けづくり、持続的な運営体制を整えるなどの対策が必要不可欠です。

目的を明確にする

明確な目的を定めることは、地域通貨を成功に導く重要なポイントです。

目的によって取れる施策も変わってくるため、誰を対象とし、どのようなゴールを目指すのかしっかりと定めましょう。

〇例えば地元経済の活性化が目的で地元住民に利用を限定する場合

  • 利用に応じてポイントやクーポンを発行
  • イベントや活動に参加して地域通貨をもらえる など

〇観光振興を目的にする場合

  • お土産店や公共交通機関での利用を可能にする
  • その地域でしかできない体験を提供する
  • ふるさと納税の返礼品にして地域への訪問を促す など

地域通貨を利用したくなる仕掛け

「他の支払い手段ではなく地域通貨を使いたい」「その地域に貢献したい」と思わせるような、損得以上の感情に訴求する仕掛け作りも必要です。

また、地域通貨やポイントが使えるECサイトを用意することも一つの方法です。

地域通貨の利活用向上に向けて、ECプラットフォームの整備は非常に有効なため、ECサイトの立ち上げ・運営、商品の物流フローの整備についてしっかり考える必要があるでしょう。

アランくん

キャッシュレス決済の種類が多様化し、デジタルマネー競争が激化する中、お金では買えないサービスや体験を提供することで、他の決済手段との差別化を図ることができるのです

持続的に運用できる体制づくり

地域通貨は発行したら終わりではありません。持続的に運用できる体制づくりが大切です。

地域通貨が失敗に終わる主な理由は、運用コストが大きいことや利用者が増えないことです。

運用面では、問い合わせ対応、IT事務作業、アプリやハードに関する相談など多岐にわたるノウハウが必要となります。

それぞれに精通した人材を揃え、さらにバックアップ体制まで考えると、全て自前でまかなうには人的コストや必要なリソースが膨大な量になるでしょう。

そこで、自治体で行えない専門知識を必要とする作業や、人材リソースが必要なる仕事を外注に依頼すると、コストパフォーマンスの良い運営が行えます。

地域通貨の事務局代行はオーダー!にお任せ

オーダー!

オーダー!ではさまざまな地域通貨の事務業務代行サービスを提供しています。

「自治体による地域通貨」の事務局代行も行っており、企画からサイト作成、問い合わせ代行、発送代行などの対応が可能です。

オーダー!で対応可能な事務局代行サービス
  • ECサイトの構築・運用
  • 地域通貨のデザイン制作
  • PR用チラシの作成から印刷、発送まで
  • 代行業務のレポート作成
  • 問い合わせ代行(外部・内部)
  • 内職代行(封入・ラベル貼り・検品など)

個々の業務を依頼する形式から、業務をまるっとお任せできる定額運用メニューもご用意しています。

上記以外の業務についてもご要望を伺いますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

本記事では、地域通貨について解説しました。

地域通貨はさるぼぼコインでの成功例が有名ですが、現在さまざまな地域で活用されています。

地域通貨を導入すると、地域の活性化が期待できるだけではなく、地域の経済成長や流通速度を高めることにもつながります。

地域住民と地方自治体が協力して、双方にメリットのある目的を定めることが、地域通貨成功のカギといえるでしょう。

地域通貨の成功例については以下の記事にまとめていますので、合わせて参考にしてください。