近年、物販系分野のEC化が進んでいます。
ただし、基礎化粧品やメイクアップアイテムといった化粧品は「実際に試してから買いたい」と考える人が多いためか、実店舗での購入率が他の物販より多い傾向にあります。
この記事では、化粧品ECを扱う事業者様やこれから化粧品ECサイトの立ち上げを検討している方に向け、化粧品ECにおける課題や押さえておきたいポイント、実際の成功事例などをご紹介します。
化粧品ECの市場規模
2019年からの感染症拡大にともなう巣ごもり消費の影響で、ECサイトの活用は大幅に増えています。経済産業省の調査結果においても化粧品を含む物販系分野の市場規模は年々拡大し、2021年のEC化率は「書籍、映像・音楽ソフト」が約46%、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」が約38%とかなり大きな割合を占めています。
しかし、化粧品・医薬品のEC化率は約7.5%と比較的低い傾向にあります。
同じようにEC化率が低い食品は、配送に時間がかかることや産地・鮮度への懸念が理由と考えられます。化粧品はそうした理由が少ないにもかかわらず、なぜEC化率が低いのでしょうか。以降で課題を検証していきます。
化粧品ECの課題
まずは、化粧品ECの普及において考えられる課題を挙げてみましょう。
実店舗の需要が高い
化粧品は肌や髪に直接使用するものです。
たとえ人気商品であっても、人によって合うか合わないかは使用しないと分かりません。このため、実際に購入する前にサンプルやテスターで試してみたいと考えるユーザーが大半です。
またメイクアップ商品の場合、失敗しないために店頭で試してから購入するユーザーが多いようです。
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社による「化粧品購入行動に関する調査結果」においても、全体の3割が実店舗に行き、置いてあるテスターを使用していると回答しています。
参考:NTTコム リサーチ「化粧品購入行動に関する調査結果」
マーケティングが難しい
化粧品業界には、日本メーカーなら資生堂や花王、コーセー、海外メーカーも入れるとロレアル、ランコムなど多くの競争相手が存在します。そんな中、大手以外のブランドが認知度を上げるには、広告費の割合を高くするなどの対策が必要です。
しかし、マーケティングに力を入れても競争相手が多いと埋もれやすいため、広く一般に自社商品の魅力を伝えるのが難しいという課題があります。
価格設定が難しい
昨今、デパコスなどの高額商品より、プチプラコスメを利用するユーザーが多い傾向にあります。しかし、ECサイトで購入する場合は商品とは別に送料が必要です。送料を含むと消費者が支払う額が高額になるため、購入のメリットが減ってしまうことも課題です。
ECサイトで販売するなら梱包・配送にかかる費用も含めて価格設定し、どの価格帯を狙うのか、戦略が必要でしょう。ここまで化粧品ECの課題について述べてきましたが、もちろん成功している化粧品ECは存在します。以降では、化粧品ECを運営するうえでのポイントや成功例を解説していきます。
化粧品をECサイトで購入してもらうにはサービスやマーケティング、価格設定などさまざまなハードルがあるんですね
化粧品ECのポイント:フロントエンド業務編
化粧品EC運営において、商品計画やマーケティングといった「フロントエンド業務」のポイントを挙げてみましょう。
無料モニター
実店舗のニーズが高い化粧品業界においてECサイトの売上をアップするには、まず、消費者がお試しできる機会を作ることが重要です。無料モニターを募ったり、初回割引などを提供したりすると手に取ってもらいやすくなります。
これらの施策はUGCの創出も期待できます。UGC(User Generated Contents)とは、企業発信ではなく、一般ユーザーから発信されたコンテンツのことです。SNSに投稿される写真や動画をはじめ、ECサイトのレビューなども含みます。UGCの効果は「実際に使用した人の感想・生の声」として他のユーザーの信頼度を高めてくれる点です。
EC運営において、ユーザーがお試し感覚で気軽に利用できる施策は必須といっても過言ではないでしょう。
SNS活用
競合に負けないためには、SNSを活用しない手はありません。
ユーザーのニーズやトレンドに沿ったコンテンツを作成すると、ブランドを知らなくてもアルゴリズムで多くの人に認知され、情報が届く可能性があります。また、企業理念や商品開発のストーリーの発信はコアなファンが付きやすいので、ぜひ取り入れるといいでしょう。
さらにライブコマースなど、ユーザーとリアルタイムでコミュニケーションを取る手段によって購買意欲を促すことも可能です。
ライブコマースについて詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい。
定期購入
基礎化粧品などは消耗品であるため、ユーザーに気に入られればリピート購入してもらえます。定期的に購入してもらうと安定した利益が得られるので、定期購入システムを設定しておくとよいでしょう。
まず手に取ってもらうために、無料モニターやサンプルの利用がおすすめです。次に、継続的に購入してもらうためにマーケティングやお得な定期購入システムを設定するなど、段階的な工夫が必要ですね!
化粧品ECのポイント:バックエンド業務編
化粧品に限らず、受発注から在庫管理、配送といった「バックエンド業務」はECサイト運営において重要です。そのポイントについても挙げていきます。
在庫管理
化粧品は肌に直接付けるものであり、適切な品質を保つためには、生産ロット単位での在庫管理が必要です。
化粧品のなかには、保管期間が長時間に及ぶと酸化などで成分が変わる商品も存在します。よって、保管する期間をできるだけ短期間に抑えられる先入れ先出しが必須。
品質やブランドイメージを維持するためにも、確かな在庫管理によりトレーサビリティシステムを構築することが重要です。
発送パターンの充実
定期購入システムを取り入れるなら、定期便の使用回数でノベルティやサンプルを変更するといった対応や、スキップや停止への迅速な対応が欠かせません。
また、容器や中身が破損しやすい化粧品も多数存在するため、それぞれの専用資材を臨機応変に利用することも大切です。さらに贈りものとしても購入してもらえるよう、ラッピング対応することも必要でしょう。このようなサービスを行うことで、ブランドイメージを上げていけるのです。
化粧品ECにおいては、ブランドや商品の魅力だけでなく品質を維持する管理方法や、顧客の要望に応えたフレキシブルな発送など、さまざまな課題があるのですね
化粧品の発送についてくわしく知りたい方はこちらをご覧下さい。
化粧品ECのサポートはオーダー!におまかせ
オーダー!は、EC事業者様向けのサイト構築や運用・保守・アップデート、商品管理や発送を含む物流まで幅広い業務に対応しています。
物流代行においては在庫管理・発送だけでなく、検品や海外への発送にも対応可能。さらに、複数種類のパターンでアイテムを組み合わせて詰め込むといった、お客様の要望に応じたカスタマイズ発送も承っています。
以下より、オーダー!の化粧品ECサポート実績をご紹介します。
化粧品ECのサポート実績1.物流からサイト制作までトータルサポート
一つ目は、日本国内で韓国コスメサイトを扱われている事業者様の事例です。この案件では、ECサイトの制作・運用から物流業務まで幅広く代行させていただいています。
百貨店などを対象としたBtoBからBtoCまで、顧客データとリアル店舗を結び付ける取り組みをはじめ、WMS導入など物流面でもご要望に沿って対応。オンライン・オフラインの双方からサポートし、幅広い業務を一箇所で対応できている点をとくにご評価いただいています。
化粧品ECのサポート実績2.複雑な封入パターンもスムーズに対応
続いて、全国の利用者数万人という規模の化粧品サブスクリプションサービスを手掛ける事業者様のケースを紹介します。こちらは物流面で、多品種かつ複雑な封入業務をサポートしています。
利用者数が多いことから、化粧品の発送パターンは合計数百種にも及びますが、特に問題もなく毎月スムーズに対応しています。
このようにオーダー!の化粧品倉庫では、BtoB、BtoC、それぞれのチャネルに合わせた柔軟な対応が可能です。まずはお気軽にご相談下さい!
化粧品ECサイトの成功事例一覧
ここからは、実際に日本国内においてECビジネスで成功している企業やブランドの具体的事例をご紹介します。
BOTANIST
出典:https://botanistofficial.com/shop/default.aspx
株式会社I-neが手掛ける、シンプルかつミニマルをコンセプトとしたヘアケア製品ブランド「BOTANIST(ボタニスト)」。2015年、EC発のブランドとして始まり、今ではあらゆる店舗に並ぶ、累計販売数5,000万本の大ヒットシリーズです。
ベンチャー企業が開発した実績のない商品のマーケティングの鍵はSNSと段階的な販路拡大にありました。
【EC運営の特徴】
- 大手オンラインモール(楽天市場)に本格ローンチし、ランキング常連を目指す
- Instagramを中心としたSNSでのプロモーション
- ターゲットはトレンドに敏感な層(イノベーターやアーリーアダプター)
- SNSユーザーの自然投稿(UGC)による認知拡大
- ECサイトを皮切りに小売店での実績を経て大手小売店と商談
SHIRO
独立系化粧品メーカー・株式会社シロによる新興コスメブランド「SHIRO(シロ)」。2019年からの感染症拡大で打撃を受ける化粧品業界において、フレグランス系商品やバスグッズにより前年同期比150%超という驚異的な成長を遂げ、その後も毎月前年同月比を更新しています。
【EC運営の特徴】
- 2019年のリブランディングによる炎上から、情報を丁寧に伝えることを心がける
- 状況に合わせてスピード感を持ってプロダクトを世に届ける
- 消毒用エタノール代替として使えるハンドミストを自社ECのみで3日で22万個売上
- 2020年からは毎週1時間と定期的なインスタライブにより情報を配信
- リニューアル後は毎月前年同月比170%前後で推移
PHOEBE BEAUTY UP
出典:https://phoebebeautyup.com/
ビューティー特化型動画メディア「DINETTE」を運営するDINETTE株式会社が立ち上げたコスメブランド「PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティーアップ)」。まつげ美容液「アイラッシュセラム」を皮切りにスキンケアプロダクトをローンチし、店頭でも売り切れ続出の大ヒット商品となっています。
【EC運営の特徴】
- メディアを成長させてからのD2C展開で集客コストを軽減
- SNS上のユーザーコミュニケーションを重視したマーケティング
- UGC活用ツールを導入しUGCを広告LPに活用
- ツール導入後はページのCVRが1.8倍、売上は3.7倍に
- アフィリエイトも活用したマーケティング
ASHADA
エイジングケアブランド「ASHADA(アスハダ)」をはじめとしたブランド展開で、3年で売上20億円超という急成長を遂げた美容系D2C企業・株式会社RAVIPA。インフルエンサーマーケティングツールとD2C特化型UGC創出ツールの両方を活用してCVR1.5倍、売上2倍を実現しています。
【EC運営の特徴】
- ツールを活用しマイクロインフルエンサーによるUGCを継続的に増やす
- UGC画像をLPや記事広告、バナーなどに2次利用し広告の費用対効果を向上
- D2C特化型UGC創出ツールにより成果の出るUGCを可視化
- UGC活用ツールを追加導入し、商品購入者による自然でリアルな声のUGCを生成
- 今後もレビューのUGCを継続的に増やし、ユーザーの声を活用する
化粧品ECのまとめ
拡大する物販EC市場においても、いまだ実店舗利用率が高く、普及率が比較的低い化粧品EC。とはいえ、そんな中でも成功している事例は多々あります。
化粧品ECサイト運営は、お試し機会を作ることや徹底した在庫管理、柔軟な発送システムなどがポイントであり、成功事例を見るとUGCを活用したマーケティングも有効だと分かります。
オーダー!のECサポートサービスは、ECサイトの構築・運用・維持更新はもちろん、化粧品物流の複雑化する発送の他、幅広い業務に対応しています。ぜひオーダー!のEC物流代行サービスをご検討下さい。
化粧品の物流全般について理解したい方は、以下の記事に詳しくまとめていますので参考にしてみてください。